2024年11月16日( 土 )

九州全体の連携を図り、持続的な発展を支援(4)

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九州経済産業局 局長 塩田 康一 氏

成長産業戦略で九州全体の連携を推進

 ―九州地区で持続的な成長を続けていくためには、今後、どのようなテコ入れや指導を考えておられますか。

 塩田 九州全体の成長戦略としては、自動車や半導体以外の産業育成を図るため各県の知事や市長、経済界などからなる九州・沖縄地方産業競争力協議会において、2014(平成26)年3月、九州・沖縄地域の成長産業戦略「九州・沖縄Earth(アース)戦略」を策定、5年目に入ります。同戦略は、クリーンで経済的なエネルギーの供給拠点化を目指す「クリーン(Energy & Environment)」、農産物の海外市場への展開促進や国内外の販路開拓、最適生産体制の構築などを進める「農林水産業・食品(Agriculture)」、第2期九州観光戦略の確実な実施を行うための「観光(Tourism)」、健康長寿を目指した予防医療・健康増進サービスの産業創出を図る「医療・ヘルスケア・コスメ(Health)」の4つの重点戦略分野を設け、これを実現するための各プロジェクトを推進し、九州全体で連携しながら持続的な発展を目指そうというものです。

 ―農林水産業の6次産業化への意識も高まってきているようです。

 塩田 熊本や鹿児島、宮崎など南部を中心に非常に良い物をつくっていますが、課題は付加価値をどう高めるかということです。素材だけではなく加工して付加価値を高めるとか、ブランド化を図ることで付加価値を高めるなど、いろいろなやり方があります。

 人口が減少するなか、海外をターゲットに輸出していくという取り組みにも注力しており、九州経済連合会が中心となって農畜水産物や食品を輸出するための総合商社「九州農水産物直販」を設立しました。その会社を通じて香港のスーパーにイチゴや唐芋を輸出しています。昨年6月には、当局も推進してきている環黄海経済・技術交流会議の成果として、山東省などと覚書(MOU)の締結に至り、長島町の養殖ブリの輸出などが始まりました。こういうかたちで食品の輸出とか農商工連携事業を活用した加工品の開発、地域団体商標制度やJAPANブランド育成支援事業を活用したブランド化などを推進していくことが有効だと思います。

 観光については、九州内の世界遺産も増えて観光資源も充実していますが、各県が個別に取り組むのではなく、広域的に九州というブランドを確立していくのもこれからやっていくべきことだと認識しています。

 ヘルスケアの関係では、宮崎の延岡から大分といった東九州でヘルスケア産業の育成に力を入れています。唐津では、「唐津をコスメ産業の一大集積地にしよう」と力を入れています。13(平成25)年にフランス・コスメティックバレー協会と唐津市が協力連携協定を締結し「(一社)ジャパン・コスメティックセンター(JCC)」を設立、地域の素材を生かした新しい商品を開発、フランスの商談会に参加するなど積極的に活動しています。

 オリーブや椿など、地元の農家や地域の人にも波及効果のあるような物で、商品開発をやっていくというような産業集積をブランド化する取り組みが進みつつあります。

農産物の新しい販路として海外に展開

 ―先日、宮崎の霧島酒造(株)を訪れました。同社は、原料となる唐芋を宮崎、鹿児島の生産者から積極的に仕入れています。それも、相場よりも高く買い取ってくれるそうです。ただ単に、会社が利益を出すということだけではなく、地元の材料を優先的に仕入れ扱う企業が出てくれば、地域の活性化につながるでしょうし、国内で稼いでくれるというメーカーが増えれば、地域の農業政策でも変わるのではないかと感じました。しかし、焼酎全体でも需要が減ってきているのが現状です。

 塩田 最近はウイスキー、ハイボール人気ということもあり、また、国内が高齢化して少子化すると全体の消費量は減りますから、やはり、海外も含めて新しい販路の開拓が必要です。

 現在、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなど世界で焼酎の輸出拡大に向けて努力がなされています。このようななかで、海外の市場をいかに捉えていくかということが大事であると考えます。

 ―政策的な指導とそれを受け止める側である企業家、事業家には自立心が求められますね。

 塩田 私どもは、自分で稼ぐ力があるわけではありませんから、あくまでも企業の皆さまを応援していく立場です。

 一昨年7月に「地域未来投資促進法」をつくって、全国で2,148社、九州では319社(第2弾で187社を追加して、合計506社)を選び、これから伸びる力をもって地域経済を引っ張っていく企業として認定しました。このような企業をいろいろなツールを使って集中的に支援することで、地域経済の活性化を実現していきたいと考えています。

(了)

【文・構成:宇野 秀史】

<プロフィール>
塩田 康一(しおた・こういち)

1965年10月生。鹿児島県出身。東京大学法学部卒業後、88年4月通商産業省入省(大臣官房企画室)。2002年6月外務省在イタリア日本国大使館一等書記官、05年6月商務情報政策局環境リサイクル室長、11年7月製造産業局鉄鋼課長、12年6月中国経済産業局総務企画部長、14年7月内閣官房地域活性化統合事務局参事官、16年6月内閣府本府地方創生推進室次長、17年7月大臣官房審議官(産業保安担当)などを経て18年6月九州経済産業局長に就任。

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