2024年11月30日( 土 )

海水淡水化技術は水不足解消の切り札になるのか(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 逆浸透法の短所は高圧を加えないといけない点である。逆浸透法は1960年代から使われたようだ。同分野では日本が世界をリードしており、東レ、東洋紡、日東電工などが有名である。日東電工の製品の脱塩率は99.75%を達成しており、ほかの2社も同じような水準に達しているようだ。日本の3社の逆浸透の世界シェアは60%以上で、競合としてはダウ・ケミカルなどがある。

 世界市場では2000年以降、蒸発法より逆浸透法が採用されている。世界市場の構成比率は63%が逆浸透膜で、蒸発法は31%に過ぎず、逆浸透膜を製造するのに有利な立場にある化学会社、繊維会社などが市場に参入するようになった。このほかに、電気を利用した電気透析法、海水を冷凍させたうえで、氷から淡水を得る冷凍法などがあったが、この2つの方法は、コストなど経済的な理由からあまり利用されなくなっている。

 世界的な水の調査機関であるGWIによると、世界の海水淡水化の市場規模は、2012年が39億ドルだったが、2025年には少なくとも440億ドルに成長すると予測されている。

 最後に最近の技術動向を紹介しよう。最初は蒸発法が、それから2000年以降は逆浸透法がトレンドになっているが最近、既存の技術である蒸発法と逆浸透法の長所だけを活用した新しい概念の膜蒸発法 (Membrane distillation, MD) 技術が韓国で開発されて話題になっている。

 この技術は第3世代の海水淡水化技術として見なされているようだ。膜蒸発法は、逆浸透法のようにろ過膜を使うことになるが、海水を加熱し、その水蒸気だけを通して冷却させ、淡水を得る技術である。
膜蒸発法は既存の蒸発法より低い温度である60~80℃で運転するのが特徴で、逆浸透法より圧力の低い 1~2 barで運転するのが、もう1つの特徴である。

 高濃度の液を処理できることも特徴だ。そのほかに、小型原子炉を活用することによって、エネルギーコストを劇的に削減した方法なども韓国で開発されており、小型原子炉1基で、1日に100万人に水と電気が供給できるという。

 海水淡水化技術にはコスト面の問題があるので、現在は中東などエネルギーコストの安い地域中心に設置が進んでいる。しかし、今後水不足が深刻化することによって、海水淡水化技術はもっと世界各地で求められるようになるだろう。

 水ビジネスにもともと強い国はフランスで、それに米国、逆浸透膜で強みをもっている日本などが続くが、蒸発法において世界での存在感が高かった韓国企業も巻き返しをねらっているし、価格を武器にした中国企業も浮上し、市場の競争は激しさを増していくだろう。ビジネスだけでなく、人間の生存に欠かせない水だけに、今後の推移に目が離せない。

(了)

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