米中貿易経済戦争の本質:5Gをめぐる主導権争い~HUAWEI(華為)に対する米国の対応から見える焦り(4)
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東洋学園大学教授 朱建榮 氏
中国の5Gに対する米国の狙撃作戦
米側は各国に対して、「HUAWEIは安全上問題がある」としてその採用を阻止しようとしているが、ヨーロッパで発行部数が最も多いドイツの時事週刊誌『デア・シュピーゲル 』(Der Spiegel) は、ドイツは自分のルールですべてのメーカーの通信設備を管理・監視しているので、そのような心配をしていないとした上で、米側に次のような揶揄を送った。
今日まで、HUAWEIのルーターに一つだけ、(秘密漏えいの)バックドアが見つかっている。スノーデンの暴露でようやく突き止められたが、暗号コードはHeadwaterで、10年前から使用され、米当局USSSが開発し、密かにHUAWEIの設備に植え付けたもので、HUAWEIのデータすべてを監視するためだった。
少し古い記事だが、NYタイムズの2014年3月23日紙面に次のようなスクープ記事が掲載された。スノーデンの暴露によれば、CIAはその年まですでに7年間にわたってHUAWEI本部のプロバイダーに侵入してバックドアを作って監視し、任正非会長以下の役員同士の通信記録も窃取した。暗号コードは「Shotgiant」だった。
もし今日まで、HUAWEIがスパイ活動をしているとか、人民解放軍と組んでいるとかの問題点を見つけていれば、米当局はとっくにそれを暴露してHUAWEIを窮地に追い込んでいたのであろう。中国のもう一社の通信大手ZTEに自分の中核的技術とチップを持たない弱みをもっていると米政府が把握しているので、昨年前半、理由をつけてZTEにチップを供給しないとの制裁措置をとり、ZTE側は折れざるを得ず、巨額の罰金を払った上、今は米側が派遣した監視員の下に置かれている。
逆説的だが、技術面でHUAWEIを追い込む決定打がないことが分かった米当局が今度、同盟国などに対して、具体的な根拠が何も挙げられない「安全上の懸念」を立てて強引に使用禁止を求めたのだろう。言ってみれば、米国の主導で決めたルールによって競技場で決勝戦が行われているが、米国チームが負けそうになったため、いきなり子分を場内に乱入させ、選手であるはずのアメリカ人が急にレフリーに変身し、「これまでの試合ルールは相手に有利だ、変更だ」と叫び出し、観客席からはそれは「勝つために手段選ばず」にしか見えない。
(つづく)
<プロフィール>
朱建榮(しゅ・けんえい)
1957年8月生まれ。中華人民共和国出身。81年華東師範大学卒業後、86年に来日。学習院大学で博士号を取得。東洋女子短期大学助教授などを経て96年から東洋学園大学教授。関連キーワード
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