2024年12月25日( 水 )

更年期を正しく理解し、健康増進の重要性を理解してもらうことが大切(1)

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NPO法人更年期と加齢のヘルスケア 理事長 小山 嵩夫 氏

いつまでも元気で若々しくありたい―。こんな生活者のニーズに応えるために、NPO法人更年期と加齢のヘルスケアでは、年を重ねても活動的に生きるためのサポートを行うアドバイザー「メノポーズカウンセラー」を育成している。メノポーズとは“更年期”を意味することから、アドバイスは更年期女性が対象となる。これまで更年期に該当する40~60代の女性医療は臓器別医療が中心だった。しかし、更年期は、からだ全体の症状を考えることが必要であり、老年期への対策を立てる適切な時期であることから、学会では更年期に関する正確な知識の普及とヘルスケアの具体策を提案している。小山嵩夫理事長に、更年期医療の現状とヘルスケア対策の取り組みについて聞いた。

 

更年期から老年期女性の生活の質を高めるために

―更年期医療で行われているホルモン補充療法(HRT)について、婦人科医の間でも賛否が分かれていると聞きます。
 小山嵩夫理事長(以下、小山) 我が国における更年期医療は、長い間対症療法が中心でした。年齢的なものでもあり「じっと我慢して通り過ぎるのを待てばよい」といった考え方が主流で、系統だった対応は1990年ごろまで行われなかったといえます。というのも、訴えられる症状として不定愁訴が多く、全体像もつかみづらいので、医療サイドからみると「よくわからない」または「関わりたくない」領域であったといえるでしょう。

 60年代後半には、更年期に卵巣機能が停止し女性ホルモンの分泌がなくなると、更年期症状だけではなく、骨粗鬆症、動脈硬化、物忘れなどの症状がみられ、そしてこれらの症状には女性ホルモンが深く関わっていることがわかってきました。そのことから欧米では、更年期以後の生活全体と老化との関係において理解し、対応していこうという機運が高まってきましたが、我が国では長い間、更年期障害中心の対応がなされていました。ただ、文献的にはHRTと骨粗鬆症、HRTと心臓血管系、HRTと物忘れ、HRTと生活の質(QOL)などの関係を示した論文が非常に多く発表されていましたので、更年期医療に関心をもつ大学関係者の間では、これらの事実は知られていたと思います。

 欧米に遅れること20年余り、90年ごろから一般女性の間でもHRTによる治療法は知られるようになりました。そして、90年代後半にはHRTを処方する医師が飛躍的に増加したのです。

 この流れが続けば、我が国でも更年期障害のみならず、女性ホルモンを介して長期的な更年期以降の健康維持・増進を考える方向性になったかもしれません。しかし、2002年に米国から発表されたHRTに関する大規模臨床試験・WHIの報告が、HRTに関してネガティブな結果を示しました。このことにより、急速にHRTへの関心が低下し、長い停滞期に入りました。

 欧米先進国ではHRTの普及率が20~40%と言われていますが、我が国ではこの間、2%程度に止まっており、「更年期といえば更年期障害、骨粗鬆症」との認識から抜け出せない状況にありました。

(つづく)
【吉村 敏】

▼関連リンク
●NPO法人更年期と加齢のヘルスケア
●(一社)日本サプリメント学会

 

<COMPANY INFORMATION>
理事長:小山 嵩夫
所在地:東京都大田区南千束3-14-16
設 立:2002年4月
TEL:03-3748-2562

<プロフィール>
小山 嵩夫(こやま・たかお)

1944年生まれ。68年、東京医科歯科大学医学部卒業(医学博士)。同大学医学部産婦人科助教授を経て、96年に女性の健康を総合的に管理することを目的として東京・銀座に小山嵩夫クリニックを開設、院長として現在に至る。専門は生殖内分泌学(更年期医学)。ホルモン補充療法の第一人者として知られる。更年期前後から元気に生きるための啓発活動を行っており、NPO法人更年期と加齢のヘルスケア理事長として、メノポーズカウンセラーの育成に従事している。著書として「女と男の更年期」(誠文堂新光社 2008)、「女性ホルモンでしなやか美人」(保健同人社 2009)など。学術専門誌「更年期と加齢のヘルスケア」編集長。

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