米中貿易戦争の行方 中国に依存するアメリカの軍需産業(2)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
アメリカを脅かす中国の大躍進
そうした背景もあり、トランプ大統領は軍事力の強化に並々ならぬ意欲を見せている。大統領選挙の期間中にも次のような発言を繰り返した。「皆さまに約束したい。軍事力で勝てる国にすると。自分が大統領になれば、あまりにも勝ちすぎるので、皆さまは戦争に勝つことに飽きてしまうかもしれないが…」。当選後、早速、この公約を実行に移しているトランプ大統領である。国防予算を増額し、オバマ前大統領が約束したアフガニスタンからの米軍撤退を反故にした。それどころか、逆に増員を決定したほどである。
にもかかわらず、国防総省の分析ではアメリカ軍の優位性は根底から揺らぎ始めているという。その原因はどこにあるのか。トランプ政権が見出した答えが「中国」なのである。軍事面に限らず、あらゆる分野で中国がアメリカを猛追している。このままでは、早晩、アメリカの世界的地位は中国に脅かされる。今ならまだ間に合う。何としても中国の影響力のこれ以上の拡大を阻止せねばならない。これがトランプ政権による「対中関税強化策」の狙いである。
アメリカ農務省は15年4月の時点で、驚くべき報告をまとめていた。すなわち「アメリカ経済は今後15年間で50%の成長を遂げるだろう。しかし、この間、中国は300%の成長を実現する。30年までに中国はアメリカと肩を並べるか、追い抜くことは確実である」。
中国の挑戦は農業分野にとどまらない。特許申請の分野でも中国の躍進はすさまじい。技術革新の分野での特許申請と獲得の状況を見れば、トランプ政権が目の敵にする「メイド・イン・チャイナ2025(中国製造2025)」の基盤となる中国の特許獲得戦略が一目瞭然である。
08年の時点では、アメリカは日本についで世界第2の地位を維持していた。この年、日本は23万2,000件の特許申請を記録。中国は19万5,000件であった。ところが、その後、中国の猛追が始まり、14年には中国はついに世界一となった。その数は80万1,000件を突破し、全世界の特許申請数のほぼ半分を占めるに至っている。同年、アメリカの申請数は28万5,000件に過ぎなかった。
問題は、中国がこうした特許を実際に新製品の開発に応用していることである。たとえば、スーパーコンピュータの世界を見てみよう。10年、中国のスパコン「天河1A」は世界最速の処理スピードを達成した。アメリカの国防総省の所有するスパコンを中国国防省のスパコンが凌駕したのである。16年の段階で、スパコンの所有数でも中国は167台で世界一となり、第2位のアメリカの165台を追い抜いた。ちなみに日本は29台という現状に甘んじている。その後も中国のスパコン開発は進み、「神威太湖之光」が世界最速の記録を塗り替えた。
(つづく)
<プロフィール>
浜田 和幸 (はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。16年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見~「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。関連キーワード
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