2024年11月22日( 金 )

空間に新たな価値を付加する家具づくり 時代変化に適応し、新体制の構築へ(中)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

(株)アダル 代表取締役社長 武野 龍 氏

総合工場を新設・移転は2020年5月を予定

早見工業団地内にある総合工場

 ―近々、宇美町の早見工業団地内にある総合工場を、別の場所に新設・移転される計画だとお聞きしました。
 武野 現在の総合工場は1989年8月に稼働を開始しており、すでに30年弱が経っていることもあって、まず建物の老朽化の問題がありました。また、建ぺい率の問題で増床が難しいことや、倉庫が別の場所にあることなどもあり、今回の新設・移転を計画した次第です。現在、2020年5月の竣工予定で建設計画を進めています。

 ―新工場の生産能力は、どのくらいアップされるのでしょうか。
 武野 今回の新工場では倉庫も併設する予定ですので、それだけでも生産能力は10%ぐらい上がる見込みです。また、現在すでにある機械との兼ね合いや、弊社の商品ニーズとの一致にもよりますが、新しい機械も何台か導入していきたいと考えています。ほかには、外部の協力先との連携も含めて、新工場が稼働した暁には、現在の生産能力の150~200%くらいにはしていきたいですね。

 ―この30年の間に、工場においてもさまざまなイノベーションが起こってきたかと思いますが、省人化を進めて生産能力をアップさせていく余地はあったのでしょうか。
 武野 弊社工場の機械は、どうしても人の手による作業が多く、省人化を進めにくいという背景がありました。それでも最近の機械の進化により、うまく活用できれば省人化につながる余地はあると考えています。

 また、昔であれば、自社の内製化をどんどん進めていく傾向にありましたが、そうしてしまうとキャパシティも決まってしまいますし、人員も増やしていかなければなりません。そのため今は、逆に強力な外注先との連携をもっと強めていく方針を取っています。たとえば、弊社では日本各地に拠点を構えており、とくに関東と関西で営業数字の6~7割を占めるに至っています。であれば、もっと各地に“地産地消”でさばけるパートナーとなり得る外注先を育てていくほうが良いと考えています。

 私は常々製造職には、「自分の手を動かしてつくるのではなく、頭でモノをつくれ」と伝えています。自分1人の作業量には自ずと限界がありますが、頭を使って、外注先も活用しながら進めれば、生産能力も上がっていくでしょう。あとは機械を入れて省人化を進めるなかで、また新たな付加価値を生み出していけるようになればいいですね。

 やはり、今後日本でも人口が減っていく以上、生産性は上げていかなければなりません。今のように景気が良いうちはいいのでしょうが、その間に、生産性の追求だけでなく、海外市場も含めた販売網の構築にも着手していきたいと思います。

新たな展開先として海外市場も見据える

 ―今、お話しされましたが、海外市場も販売先として見据えておられるわけですね。
 武野 海外展開については、やはり難しい部分があることは重々承知しています。海外市場をどう位置付けて、そこで「モノを売る」のか、それとも「サービスを売る」のか。理想としてはモノを売っていきたいのですが、そこについてはまだ模索中です。

 ただ、今後どのようなかたちになっていくかはわかりませんが、海外展開の1つとして、イタリア・ミラノで本年は4月9日から14日まで開催される世界最大の家具見本市「ミラノサローネ国際家具見本市(Super Studioエリア)」への出展を予定しています。新作のお披露目発表会という要素も強いですから、ブランドの発表ももちろんありますし、そうした出展を通じて、どのようなかたちで外貨を獲得していくかなど、いろいろと考えていかなければならないことは山積みです。まずは特設会場「Super Studio」に3カ年ほど出して、3~4年後には本会場への出展を目指していきます。

 ―イタリアに行かれるということですので、特注のオーダー品の出品になるのでしょうか。
 武野 いえ、まだそこまでは想定できておりません。結局、ミラノサローネは商業見本市として世界一なので、いろいろな情報がたくさん集まってきます。ですから、まずはその情報を、どのようなかたちで日本にもち帰るかを考えていきたいと考えています。たとえば、弊社は日本の企業であり、中国に工場をもっています。そんな弊社に対して、お客さまが「どこに」「どんな」ニーズを見い出してくれるかを調べてみたいという思いはあります。このように、いろいろな情報を集めていけば、たとえばイタリアのデザイナーが描いたものをイタリアの製作会社が外注しているケースも多いと聞きますし、中国のデザインもどんどん良くなってきていますので、そのような活用法もあるのではないかと思います。現在も取り組んでいますが、さらに中国の内需については対応できるかもしれません。

 ―「モノを売る」のか、それとも「サービスを売る」のかとおっしゃっていましたが、結果的にモノで対価を得られるところに落とし込むことができれば、理想ですね。
 武野 そこにどういったサービスを付加していくのかとか、商品力ではない営業力だったり、企画力だったり、そちらのほうも磨いていかないと、ただ物を並べて「どうですか?」というのは。そのあたりはまだこれから、暗中模索していかないと。まぁ、いろいろと武器としてそろえているものはあるので、それをうまく活用できないかなと思っているところはあります。

(つづく)
【文・構成:坂田 憲治】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:武野 龍
所在地:福岡市博多区金の隈3-13-2
設 立:1968年4月
資本金:1億8,225万円
売上高:(18/3)69億1,264万円

<プロフィール>
武野 龍(たけの・りゅう)

1978年11月生まれ、福岡市博多区出身。甲子園大学卒業後に、住宅メーカーで3年間勤務した後、2003年に(株)アダルに入社。専務取締役・関東ブロック長などを経て、14年4月に代表取締役社長に就任した。

 

(前)
(後)

関連記事