南海トラフ巨大地震の被害想定、死者29万8,000人、焼失235万棟
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政府の中央防災会議は3月31日、南海トラフ地震による被害想定を発表した。想定によると、最悪のケースでは、死者数は最大約29万8,000人(冬・深夜)、全壊焼失棟数は最大約235万棟(冬・夕方)に達する可能性がある。経済的な被害も甚大で、資産等の被害は約224兆9,000億円、経済活動への影響は約45兆4,000億円と試算されている。
なお、前回(2014年)策定された南海トラフ地震防災対策推進基本計画における被害想定では、死者数は最大約33万2,000人、全壊棟数は最大約250万4,000棟に上るとされていた。この約10年で防災対策における進展が見られたが、今回の被害想定の試算では、津波の浸水域を広げたほか、住民などの避難が遅れた場合も想定に入れたことから、想定死者数は微減にとどまった。
防災対策に関して、住宅の耐震化率は08年の約79%から23年には約90%に向上。海岸堤防の整備率は14年の約39%から21年には約65%まで進んでいる。企業の事業継続計画(BCP)策定率も向上しており、大企業では約54%(13年)から約76%(23年)へ、中堅企業では約25%(13年)から約46%(23年)と増加している。これらの対策が進んだことで、津波による死者数を対策前に比べて約7割減らすことができるとの試算も示されている。
大地震での強い揺れや津波は広範囲におよび、大都市の中心市街地では高層ビルの長周期地震動やエレベーター被害、沿岸部の工業地帯では工場や港湾の被災によるサプライチェーンの寸断や地域経済の停滞、中山間地域や半島・離島では集落の孤立など、地域ごとの特性に応じた多様な被害が想定される。過去の南海トラフ地震では、時間差をおいてM8クラスの地震が発生した事例(いわゆる半割れケース)も知られており、後発地震への備えも重要となる。
政府は今後、時間差をおいて発生する地震などへの対応の強化、被害の絶対量低減のための強靱化・耐震化、早期復旧の推進、防災DX、応援体制の充実などによる災害対応の効率化・高度化、社会全体における防災意識の醸成、復興事前準備の推進などの対策を重点的に推進していく方針としている。
【茅野雅弘】
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