2024年12月26日( 木 )

レオパレス21を追い詰めた「ガイアの夜明け」の告発(前)

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 テレビ東京の経済番組「ガイアの夜明け」は2月5日、賃貸アパート大手、レオパレス21の施工不良問題告発の第3弾を放送した。2月7日、レオパレス21の深山(みやま)英世社長は記者会見で、法令違反の物件が新たに33都府県で1,324棟見つかったと発表。補修のために住民1万4,443人に引っ越しを要請するという。レオパレス21が「白旗を掲げた」かたちだ。

第1弾は、賃料保証を守らずに一方的に減額と告発

 レオパレス21の施工不良問題を追及してきたのが、テレビ東京の経済ドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」だった。第1弾は2017年12月26日放送。「追跡! マネーの“魔力”」のタイトルで、都心を中心とした不動産バブルの最前線と、その裏側を取り上げた。

 最初にインタビューに登場したのが許永中氏。バブル全盛期に政財界や裏社会で暗躍、戦後最大の経済事件といわれたイトマン・住友銀行事件で逮捕された超大物のフィクサーだ。最後は、「バブルの申し子」ジュリアナ東京の仕掛人である元グッドウィル・グループ会長・折口雅博氏。日本を離れた折口氏は米国でファンドをつくり、日本のベンチャーに投資しているという。往年の怪物たちをインタビューに引っ張り出したことが話題になった。

 番組はレオパレス21を特集した。同社は、地主に相続税対策として賃貸アパート建設を提案。「全室を30年間借り上げ、空き室でも家賃を保証し、地主は一定の家賃収入を得られる」と説明し、サブリース契約をすすめた。サブリースとは、オーナーから賃貸アパートを一括して借り上げ、入居者に転貸することをいう。

 番組ではアパートのオーナーが登場して、家賃保証はまったくのウソで、営業マンがオーナーに家賃収入の減額や解約を迫る実態を告発した。悪質な事例のなかには、1キロ四方のエリアにおよそ40棟ものアパートを乱立させたものもある。レオパレスを信じて借金をしてアパートを建てたオーナーのなかには借金の返済の見込みが立たない人がいるという。

 ハイライトは、レオパレス21の深山英生社長への直撃取材。レオパレス21は会社ぐるみで、契約解除も辞さず、アパートオーナーへの家賃の減額交渉を実施。その証拠の社内メールを取材班が入手し、深山社長に提示した。

 メールには、「終了プロジェクト」という戦略名で、契約から10年を越えたアパートは解約、10年未満は家賃収入の大幅減額を求める強気な交渉をするようにとの指示が明記されていた。これに対する、深山社長の答えは「コメントを差し控える」だった。

創業社長は資金の不正流用で引責辞任

 レオパレス21の創業者は深山祐助氏(73)。長崎県壱岐市出身で、拓殖大学商学部貿易学科卒業。1973年に不動産仲介業「ミヤマ」(現・レオパレス21)を設立。1985年に敷金無料の都市型アパート「レオパレス21」事業を開始した。これが当たると、1989年に社名をエム・ディー・アイ(MDI)に変更して株式店頭公開。2000年に社名を賃貸アパートブランドと同じレオパレス21に変更。2004年3月に東証一部上場をはたした。

 ところが2006年 5月、深山祐助社長が48億6,500万円を不正流用していたことが発覚した。不正流用があったのは、鍵の交換や家具の修理などのサービス手数料の収入を基にした「入居者共済金」の資金。深山社長はこの資金から、知人の不動産会社に対し運転資金として29億6,500万円、知人に2億円を貸し付けたほか、17億円を社長個人のマンション投資資金に充てていた。

 深山氏は引責辞任し、後任の社長に、拓殖大学の後輩である副社長・大場富夫氏が就任した。その後、深山祐助氏は、2008年に親族と設立した不動産会社MDI(レオパレス21に社名変更する前の商号と同じ)の代表取締役会長を務めている。

入居率の低下が経営を直撃

 レオパレス21の賃貸アパートの持ち主は地主らだ。広い土地を持つ地主を見つけては、営業マンが訪問する。「30年間家賃を保証します」というセールストークで、賃貸アパートの建設を決意させる。

 オーナーは入居者の有無にかかわらず、レオパレス21から毎月一定の賃料を受け取ることができる。低いリスクで高い利回りが実現できるとして人気が出て、レオパレス21が将来支払うべき「未払いリース料」は2009年3月末で1兆4,000億円超に膨れあがった。だが、2008年秋のリーマン・ショックで事態が一変。2010年3月期の最終損益は790億円の赤字、11年3月期も408億円の赤字と2期連続の巨額赤字に沈んだ。

 そして、創業一族の深山英世氏(61)が再建を担うことになった。創業者の祐助氏の甥で、長崎県壱岐市出身。大学を中退して1977年にミヤマ(現・レオパレス21)に入社。創業以来の大赤字を計上した2010年に社長に就任した。

 大赤字の原因は、工場の派遣社員や期間従業員の入居が多かった地方都市で入居率が急低下し、レオパレス21が受け取る家賃収入が支払う賃料を下回る「逆ざや」に陥ったこと。苦境を脱するため、レオパレス21は保証賃料の減額やサブリース契約の解約交渉に乗り出した。これが「終了プロジェクト」と名付けた大作戦。「ガイアの夜明け」が告発して明るみになったものだ。

(つづく)

【森村 和男】

(後)

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