2024年12月22日( 日 )

【続報】サイバー犯罪取り締まりにエンジニアら危機感~法務省は「個別ケースは裁判所が判断」と放置

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 8日に伝えた「みんなで逮捕されようプロジェクト」は現在も拡散中。有志によるリード文の翻訳も6言語から13言語に増加している。
 いっぽうで、兵庫県警サイバー犯罪対策課が根拠とした法律「刑法第168条の二」の運用・解釈をめぐって、懸念の声が挙がっている。

 問題は2011年7月に施行された同条文にある。ここでは不正指令電磁的記録作成・提供罪(いわゆるコンピュータウィルスに関する罪)が規定されているが、同罪の構成要件は以下の通り。

・ 「正当な理由がないのに」(正当な理由の不存在)
・ 「人の電子計算機における実行の用に供する目的で」(目的)
・ 「(第1号または第2号)に掲げる電磁的記録そのほかの記録を」(客体)
・ 「作成し、または提供した」(行為)

(法務省HP上のpdfファイル「いわゆるコンピューターウィルスに関する罪について」より)

 懸念されているのは、「不正指令電磁的記録」の定義だ。
 2013年に法学者の水野正氏が発表した「刑法168条の2 不正指令電磁的記録に関する罪の一考察」には、プログラムの社会的な信頼を守ることが目的とする法務省の発表に依拠しつつ、「本罪を社会的法益に対する罪と捉えるわけであるから、一般の使用者の意図を基準とし社会的法益を侵害するといえる程度の侵害であることが必要であると思われる」と指摘。
 つまり、簡易的なジョークプログラムが罪に問えない場合があるのだ。

 定義について、法務省は、意図しないバグやソフトウェアの更新などにかかる有益性をもつものは除外するよう指導しているとしたものの、「個別のケースについては裁判所が判断するもの」と回答。

 「みんなで~」の発起人であるhamukazu氏は、取材に対し、同プロジェクトの意図を英語で発表したことと絡めて説明。「日本におけるサイバー犯罪取り締まりの不合理さを世界に対して知ってもらう意図があった」と述べ、日本のIT関係者だけでは国内で少数派になってしまうだけに意見が埋没してしまう危機感を抱いていたという。
 東北大学でプログラミング言語理論を研究する住井英二郎教授は、取り締まりの対象となった無限アラートと呼ばれるプログラムが、「最近のブラウザでは問題にならない」として、不当な対応ではないかという疑問を投げかける。住井教授は、6日に同様の説明を同県警にしていたことを明らかにしている。

【小栁 耕】

▼関連記事
「みんなで逮捕されようプロジェクト」がネット上で拡散中~サイバー犯罪対策課は「自分の子どもにもそんなことが言えるのか」と反発

関連キーワード

関連記事