2024年11月14日( 木 )

福岡を活性化させた傑物伝 アパマングループ代表大村浩次氏(13)

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株価はいつも長い目でみる

 日々、変わり続ける上場企業の価値。大村社長は、毎日の株価の動きに一喜一憂することなく、悠然とかまえて事業に取りくんでいる。その理由は、10年単位の長い目でみて業績を高めることでAPAMANグループの価値が上がることを大切にしているからだ。

 ITや新規事業の取り組みは、大きな先行投資が必要な場合もある。これらの投資は、必要なタイミングに必要な規模で行うことが極めて重要になることはいうまでもない。あくまでも長期視線で投資を考え、企業全体の価値が高まっていくことが重要と考えているようだ。

仕事への思い

大村 浩次 氏

 大村社長は、とても仕事熱心だ。働いているときが一番リラックスした気持ちになるというほど、心から仕事が好きで、いつも仕事をしていたいと感じているという。大村社長にとって仕事とは、人が息をするのと同じように自然なことではないだろうか。がんばるという力が入った姿勢ではなく、肩の力をぬいて心に余裕をもって仕事をしている印象だ。創業してからナスダック・ジャパンに上場して、今の規模に会社を成長させるまで、多くのことがあっても確信をもって道をすすみ、自分らしく人柄をいかして事業をしてきたことが今につながっていると感じる。

 昔は、一生懸命頑張る姿に感銘し、社員も努力するといった企業も多かったが、最近では社長といえども、頑張ることや長時間働くことが企業のイメージ悪化につながってしまうということを意識しているようだ。とにかく社員の皆さんが残業することなく早く帰ってほしい、と毎日会社を見回って歩くのが日課だという。

お客さまのことが一番

 現状のサービスを良くするときや、新しい事業をたちあげるときなど、経営は毎日が判断の連続だ。何かを決めるときや何かに新しく取りくむときに、大村社長が大切にしている基準は、お客さまによろこんでもらうということだ。お客さまがほしいと思っているもの、社会で必要とされているものは何かを見て、いつもお客さまを一番に考えている。

 大村社長は、お客さまアンケートやお客さまから届くハガキ、店舗で対応したクレームなど、お客さまからの声に、毎日目を通している。会社が大きくなった今も、それらすべてに目を通すことをかかさないという。お客さまからの声を知ることで、どのようなサービスがお客さまによろこんでもらえ、どこを改善したら良いかがわかり、今後のサービスや事業につながるヒントがみつかる。こういうものがほしい、こういうものがあったら便利だというお客さまの声を生かして新しいサービスをつくっている。

 たとえば、アパマンショップの店舗では、お客さまに待ってもらう間、便利にすごしてもらえるようにと無料WiFiのサービスをしている。しかし、WiFiの電波が弱くてインターネットが使いにくいため強くした方がいいという提案がお客さまから届いたため、WiFiの電波がよくなるようにすぐに設備を見直す。お客さまにいつも気持ちよく過ごしてもらえて、きめ細やかなサービスができるように、お客さまの声を現場とも情報共有して対応するなど、何ごとも現状に甘えることなく、いつも進歩する姿勢を忘れない。

新しい事業をつくる

 今までの事業の枠をこえて、新しい事業をゼロからつくるときには、何をきっかけに判断して、事業を始めることを決断するのだろうか。それは、日本が国家としていま何が必要なのか、国力を強めるためには何をしたらよいかということを考えることだ。

 日本再興戦略(現未来投資戦略)から生まれる社会の大きな流れを読んで、どのように事業を展開するかを決めてきた。国力を上げるためには、国の経済を強くすることが大切だ。経済を強くするためには、今までになかった商品やサービスをつくり、あたらしい市場をつくって経済の好循環を生み出す企業を増やすことが必要だ。そのため、スタートアップ企業を支援して、新しい市場を生み出すしくみをつくりたいと考えて、これまでの賃貸不動産業やIT化を進めるなかでつちかった経験やノウハウを生かして、スタートアップ企業向けのコーワーキングスペース事業を立ち上げる準備を始めた。また、社会は人がいて始めて成り立つもので、国は人の力でつくられている。生まれてくる子どもが減ってしまうことで人口が減り、国としての競争力をもてなくなってしまうことから、少子化対策として何かできないかと考えるようになったという。

 人は、安心して暮らせる社会があってはじめて、毎日を元気に生きることができるものだ。人々が暮らすいまの社会を良くして、人々が生きやすい世の中をつくっていくために、企業としてどのような貢献できるかをいつも考えているという。人々が暮らしやすい世の中をつくること、それこそが企業のあるべき姿だと大村社長は考えている。

(つづく)
【取材・文・構成/石井 ゆかり】

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