2024年11月14日( 木 )

福岡を活性化させた傑物伝 アパマングループ代表大村浩次氏(14)

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全国の街が元気でいてほしい

 不動産業は、人が住む街をつくり、街を元気にすることに毎日向き合う仕事だ。高度成長期から増え続けていた日本の人口は、2011年から減りはじめて2060年には約8,674万人になるといわれている(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」による)。また、土地は人が住んでこそ、その土地ならではの文化や歴史がいきるもの。大きな都市に人が集まるだけではなく、全国の街にこれからも人が住み続けて、街が元気でいてほしいという思いを大村社長はいつも感じてきた。

住んでいる街で仕事ができる仕組みをつくる

大村 浩次 氏

 ローカルな街は、その土地ならではの良さや大都会にはない住みやすさがあるにも関わらず、なぜ人が減ってしまうのか。1つ目の理由は、ローカルな街には仕事の働き口が少ないことだ。そのため、多くの人が生まれた街を出て、仕事の働き口がたくさんある大きな都市に移り住んでしまう。全国の街に起業家が増えてスタートアップ企業ができることで、新しい分野を切りひらくサービスや技術が生まれて社会が元気になり、街でできる仕事が増えるため、街が変わることができると大村社長は考えている。

 APAMANグループは、自治体と提携して、全国各地で仕事ができるfabbitなどのコワーキングスペースをつくることに取り組みはじめた。生まれ育った街で起業する人や仕事をする人を増やして、コワーキングスペースのコミュニティやサービスを通して新しい企業が成長できるようにサポートすることで、人がはたらく場所が街に生まれる大きな流れをつくりたいと考えている。

 また、今まではどこで仕事をするかということについて、大きな決断が必要だったが、インターネットが普及してからは、場所にこだわらない働き方ができるようになった。これまでのビジネスでは場所が離れていることが仕事をするうえでのハードルになっていたが、インターネットが普及してから、距離のハードルは越えやすいものになったのではないだろうか。

 今では日本全国はもちろん、海外とも時差を感じることなくオンラインで仕事のやり取りができる。たとえば、モノやサービスを売ることもインターネットで始めから終わりまでできるようになり、離れた場所にいる人とも取引をしやすくなった。また、オンラインで仕事に必要な情報を共有することで、どこにいても一緒に仕事ができるようになった。 

 そのため、これまでは仕事のある場所に住むことが必要だったが、オンラインで仕事のやり取りができるようになったことで、通勤や引っ越しをすることなく住んでいる街で仕事ができる仕組みが整ってきた。大村社長はどこにいてもコミュニケーションや情報共有ができるITの力を活用して、生まれ育った街から離れることなく仕事ができるコワーキングスペースをつくることで、全国の街を元気にしたいと考えた。

 また、日本全国の各市町村はそれぞれ、その街ならではの良さがある。全国の街にコワーキングスペースをつくり、今まで住んできた街で仕事ができるようになることは、ほかの土地にはないその街ならではの文化や技術をいかした新しいビジネスが生まれるきっかけになるのではないだろうか。

 一般的に、大都市は人が多いために、地域の人と人のつながりが薄くなりがちだ。そのため、何かをするにしても自分から探して見つける姿勢が必要になる。しかし、大きな都市ではない街ほど人と人のつながりが濃く、地域のコミュニティが活発だ。そして地域の人づきあいも深く、その土地ならではの強いネットワークがある。インターネットで情報を集める時代になっても、人から得る情報は何ものにも代えがたい。地域のネットワークがあると、人と人のつながりから情報交換ができ、仕事でも新しい展開が生まれる。そのため、全国にコワーキングスペースをつくり小さな街で起業できるようにすることで、スタートアップ企業にとっても地域のネットワークを生かせるという大きな強みが生まれる。

少子化対策に取りくむ

 全国の街の人口が減っている2つ目の理由は、日本で生まれてくる子どもの数が減っていることだ。街に生まれてくる子どもの数が減ってしまうことは、街の人口が減ることにつながる。APAMANグループは、日本が直面している少子化問題に取りくむため、行政や自治体などと協力して、出会いのサポートセンターを社会貢献事業として行っている。こどもが減っている理由の1つは未婚化がすすんでいることだといわれており、結婚につながる出会いをサポートすることで多くのこどもが生まれる社会をつくりたいと考えている。少子化問題に取りくむことで、全国の街がこれからも元気でいることはもちろん、日本の国力を上げて世界のなかでも影響力がある国であり続けてほしいという思いがある。

(つづく)
【取材・文・構成/石井 ゆかり】

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