『脊振の自然に魅せられて』「山桜に恋して」
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山に春がきたことを知らせてくれる山野草に続き、山の女王として君臨しているのが山桜です。ソメイヨシノが華やかなのに比べ、ひっそりとした存在感があります。
群生している山桜は少なく、山では1本だけが大きく聳え立っています。
山を歩いていると樹皮で山桜だと解りますが、花が咲く4月には散った花びらを目にすることでここに山桜があると知ることになります。
樹木同士の生存競争に打ち勝つため、森林の多い山では高く聳え立っています。ですから散った花びらで山桜があるのを知ることになるのです。散った花びらの上を見上げると花をつけた山桜が空に手を広げています。孤独な樹ですが、ほかの樹木に取り囲まれ必死に生きようとしています。
今年、4月7日(日)早朝に糸島の水無渓谷(水無鍾乳洞付近)に撮影に行きました。撮影が終わり駐車場に戻ると目の前に比較的大きな山桜が1本咲いていました。「おー咲いていたか」方向を変えながら数枚撮影しました。
樹齢50年は経っているでしょうか。蔦や木通の蔓に絡まれて見た目はきれいではありませんが、優しく登山者を迎えてくれます。
昨年、撮影できた時に咲いている山桜にやっと対面できました。気温が低く、しかも雨中の山歩きでした。撮影を終え、駐車場に戻ってくると急に天候が悪くなり雹が降り始めました。
そして山桜は雹のシャワーを浴び寒空に佇んでいました。
一期一会のシャッターチャンス、夢中でカメラのシャッターを数枚切りました。
雹は間もなくやみました。一瞬の出来事でしたので、三脚を広げカメラをセットする時間もありませんでした。雹が流れる様をうまく表現できただろうかと山を後にしました。
自宅に戻ってパソコンに画像を取り込んで映像を確認すると、何とか雹のシャワーが取れていました。
山桜は私のなかでは「樹木の女王」で、時には「お姫様」です。この山桜に恋し。時には「大きく育ってね」と願いを込めて撫でてあげます。
生存競争に負けた山桜は腐れて倒れています。雷山に仲間とニリンソウを鑑賞に行ったとき、谷間に朽ちて倒れていた山桜から数本の若い木(蘖:ひこばえ)が直立して成長していました。この生命力に驚き、我々は「ど根性桜」と名付けました。
一年に一度しか会えませんが、なぜか山桜に心を惹かれます。
2019年4月11日
脊振の自然を愛する会
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