平成の時代、日本ではイノベーションが起きなかった!(後)
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ベンチャーブームの終焉をもたらしたライブドア事件
2005年のライブドア事件は、ベンチャー精神が燃え尽きる寸前の最後の輝きであった。ライブドアが仕掛けたニッポン放送の敵対的TOBは、劇場型M&A(合併・買収)としてお茶の間を賑わした。ライブドア社長・堀江貴文氏は、ホリエモンの愛称で呼ばれ、一躍、スーパースターとなった。
ホリエモンはあまりに派手に立ち回ったため、エスタブリッシュメント層の怒りを買った。堀江氏は2006年1月、証券法違反の容疑で逮捕され、同年4月、ライブドアは上場廃止となった。
当時の東京地検特捜部の大鶴基成部長は、事件を摘発した動機を次のように語っていた。
〈額に汗して働いている人々や働こうにもリストラされて職を失っている人たち、法令を遵守して経済活動を行っている企業などが、出し抜かれ、不公正がまかり通る社会にしてはならないのです〉
このような幼稚な正義感に基づいて「額に汗しないで儲けている」ライブドアの堀江貴文氏や、村上ファンドの村上世彰氏を摘発しようという筋書きが、この事件の背景にあった。
その“正義の士”を気取った大鶴氏が、会社を私物化した日産自動車のカルロス・ゴーン前会長の弁護人として登場し驚かせた。だが、保釈を勝ち取れず辞任に追込まれた。
日本はベンチャー不毛の地だ
ライブドアの摘発は、“見せしめ”以外のなにものでもなかった。目立ちすぎると狙われる。ベンチャー起業家は萎縮してしまった。ベンチャー精神は死滅した。
日本は、誰かをスケープゴートにする不条理な社会であることを見せつけた。生物学者がいう「島の法則」によれば、島国では大小、優劣な差が小さくなり、極端なダメ人間もいないかわりに巨人もいない。「一億総ドングリ」の状態で、出る杭は打たれる、だ。これではベンチャーは育たない。
GEM(グローバル・アントレブレーナーシップ・モニター)の「起業家精神の調査(平成25年)」によると、日本の起業活動率は3.7%で、67カ国中66位。中国は14.0%、米国は12.7%。日本は起業家意識の低さが顕著にあらわれている。
日本は依然として、大企業で働くサラリーマンや官庁の役人が尊敬される社会なのだ。常に若い会社が出てこなければ、日本経済は活力を失っていく。「平成」はベンチャー不毛の時代だった。
「令和」の時代も、ベンチャー起業家が生まれなければ、確実に経済活力は失われていく。米国のシリコンバレーや、中国の深圳のような経済特区をつくり、若い人にやりたいようにやらせるしかない。そのなかから米国のGAFAや中国のBATのようなイノベーターが生まれるかもしれない。
(了)
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