2024年11月30日( 土 )

米禁輸制裁でファーウェイは絶体絶命のピンチ(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 米商務省は、5月16日、中国通信機器大手のファーウェイと68社の関連会社を、米輸出管理規制のリストに入れた。これによって、米国由来のものが25%を超えている製品やサービスは、今後ファーウェイに供給することが禁じられることとなった。

 ファーウェイは通信機器とスマートフォン市場で、それぞれ世界1位と2位にランクされている中国を代表する企業である。とくに次世代の成長産業の5Gの通信機器においては、ライバルの追従を許さないほど、ファーウェイは先頭を走っている。5Gの特許申請数においても1、592件で、他社を圧倒している。

 リサーチ会社のHISによると、ファーウェイの通信機器の世界市場占有率は31%で、世界1位だ。それにスマートフォン市場では1位のサムスン電子を追い上げていて、年内に世界1位を目指しているような状況である。ファーウェイは中国の国内市場での競争力を足場に、ヨーロッパ、中東、アフリカに市場を拡大させてきた。ファーウェイはまず後進国を攻略し、そこで色々と経験を積んだ上で、その技術で先進国に進出するという戦略で急激に伸びてきた。

 ファーウェイの売上高の構成は中国国内が52%、海外が48%で、海外の事業も大きな比重を占めるようになっている。しかし、ファーウェイは今回。米国企業と取引できない制裁対象企業となり、創業以来最大のピンチに陥っている。

 会社の支配構造が不透明なファーウェイは、中国政府のスパイ活動に利用される恐れがあるとされ、ファーウェイ機器の拡散に米政府は予てから懸念を表明していた。

 ファーウェイは年間売上高12兆円のグローバル企業に成長したにもかかわらず、まだ支配構造が明確になっていない。公式的に中国政府はファーウェイの株式を1株も保有していない。 会長の任正非 (Ren Zhengfei)が1%ちょっと持っていて、残りは社員が保有していることになっているが、実際の状況がどうなっているかは誰にもわからない。それに、取締役などもどのように選出されるか明らかになっていない。このようなことを理由に、米国ではファーウェイは中国政府が実質的に支配している企業であると主張している。

 このようにグローバル企業に成長したファーウェイは複雑なグローバル流通網に組み込まれている。通信機器やスマートフォンのコア部品はインテル、クアルコム、ブロードコムなど、米国企業から購買している。ファーウェイは昨年92社のコア部品の購入先を明らかにしているが、そのなかに米国企業は32社も入っていて、一番多かった。しかし、今回の米国政府の禁輸制裁でファーウェイは米国企業から半導体チップなど、最先端部品の購買が難しくなり、今後製品の生産、販売活動に支障をきたすことが予想される。

 それでは、目下どのようなことが起きているのか見てみよう。今回の米国政府の決定を遵守し、Googleはファーウェイとの取引の停止を発表した。ファーウェイのスマートフォンのOSはGoogleから提供してもらっているアンドロイド。Googleの発表によって、今後ファーウェイはOSのアップデートのサービスを受けられなくなる恐れが出てきた。それに、「プレイストア」「Googleマップ」「YouTube」など、世界中の多くのユーザーに使われているサービスが利用できなくなる可能性がでてきた。

(つづく)

(後)

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