2024年11月23日( 土 )

九州地銀(18行)の19年3月期決算を検証する(3)

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 【表1】を見ていただきたい。九州地銀(18行)の19年3月期の貸出金残高順位表である。

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〜この表から見えるもの〜

 九州地銀18行の19年3月期の貸出金残高の合計は、前期比+2兆922億円の38兆5,369億円(前期比5.7%増)。預金残高(譲渡性預金を含む)は前期比+5,601億円の46兆3,901億円(前期比1.2%増)で、預貸率は83.1%となっている。83.1%の平均預貸率を上回っている銀行はオーバーローンの銀行3行を含め6行で、残り12行は下回っている。

 貸出金残高1位は福岡銀行で、前期比+3,858億円の9兆8,978億円(前期比4.1%増)。預金残高は前期比+2,490億円の10兆6,575億円(2.4%増)で、預貸率は92.9%。

・2位は西日本シティ銀行で、前期比+2,960億円の7兆1,322億円(4.3%増)。預金残高は前期比1,643億円の8兆3,097億円(前期比2.0%増)で、預貸率は85.8%。

・3位は肥後銀行で、前期比+2,420億円の3兆4,884億円(7.5%増)。預金残高は前期比▲711億円の4兆6,230億円(前期比▲1.50%)と減少したことから、預貸率は前年の69.2%から75.5%に大きく改善している。

・4位は鹿児島銀行で前期比+1,677億円の3兆4,075億円(5.2%増)。預金残高は前期比616億円の3兆9,582億円(前期比1.6%増)で、預貸率は86.1%。

・5位は宮崎銀行で前期比+662億円の1兆9,963億円(3.4%増)。預金残高は前期比+496億円の2兆5,368億円(2.0%増)だった。預貸率は78.7%。九州地銀18行のなかで貸出金残高5位の座を確保している。

 6位は十八銀行で前期比+2,227億円と2期連続で大幅増加して、1兆8,826億円(前期比13.4%増)。預金残高は前期比+6億円の2兆6,224億円(0.0%)。預貸率は71.8%。【表2】の通り、過去50%台から60%台だったが、初めて70%台に乗った。

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・7位は大分銀行で、前期比+479億円の1兆8,398億円(前期比2.7%増)と小幅な増加だったため、十八銀行に逆転され6位の座を奪われている。預貸率は61.8%で、昨年の61.4%よりやや改善したものの、九州地銀18行のなかで2年続けて最下位となっている。

・8位は佐賀銀行で前期比+2,151億円の1兆7,213億円(前期比14.3%増)と大幅に増加したため、9位から順位を上げている。預貸率は昨年の67.3%から74.9%になり、70%台を確保。

・9位は親和銀行で前期比+1,693億円の1兆7,200億円(前期比10.9%増)と大幅に増加したものの、佐賀銀行とわずか13億円の差で8位の座を譲っている。預貸率は昨年の68.1%から75.4%になり、佐賀銀行と同様に70%台を確保している。

・10位は熊本銀行で前期比+2,198億円の1兆5,344億円(前期比16.7%増)と大幅に増加。増加率は九州地銀18行のなかで一番の伸び率となっている。預金残高は前期比▲263億円の1兆4,195億円(▲1.8%)。預貸率は昨年の90.9%から108.1%のオーバーローンとなっている。

・11位は北九州銀行で前期比+269億円の1兆1,591億円(前期比2.4%増)と小幅な伸びにとどまっている。預金残高は前期比▲296億円の1兆1,367億円(前期比▲2.5%)。昨年の預貸率は97.1%だったが、再び102.0%となり、オーバーローンに逆戻りしている。

 長崎県に本店がある銀行3行のうち、十八銀行(本店/長崎市)とふくおかFG傘下の親和銀行(本店/佐世保市)の貸出金が大きく増加しているのがわかる。一方、西日本FHの子会社である長崎銀行(本店/長崎市)は蚊帳の外になっている。

 長崎県内で互いにライバル関係にあった十八銀行と親和銀行だったが、2016年2月、十八銀行とふくおかFGが経営統合することで合意。しかし公取委は長崎県内の中小企業向け融資のシェアが70~75%と高く、競争圧力も働きにくいことから認めず無期延期となっていた。しかし、2年半を経過した昨年8月24日、両グループが1,000億円弱相当の貸出債権を周辺の金融機関に譲渡し、シェアを65%に引き下げることを条件に排除措置命令を行わないことを表明して審査を終了。事実上、経営統合を承認している。

<まとめ>

 預貸率が18年3月期に60%台の銀行は肥後銀行、十八銀行、大分銀行、佐賀銀行、親和銀行、筑邦銀行の6行だったが、19年3月期は大分銀行と筑邦銀行の2行に減っている。収益を上げるには貸出金を増加させることにあるが、ただ、十八銀行と親和銀行が大きく貸出金を増加させている裏には、中小企業の融資比率を下げるなどの思惑が秘められているのではないだろうか。

(つづく)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

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