2024年12月24日( 火 )

九州地銀(18行)の19年3月期決算を検証する(7)

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【表1】を見ていただきたい。九州に本店がある銀行の貸出金の平均約定金利である。各銀行の貸出金利息を貸出金(平残)で割って算出している。誤差はあるものの趨勢は把握できる。

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~この表から見えるもの~

 九州地銀18行のうち、19年3月期の貸出金利が前期比プラスとなったのは佐賀共栄銀行だけで、残り17行はマイナスとなっている。

・貸出金平残は増加しても、主要な収益である貸出金利息が前期比マイナスとなっている銀行が10行もあり、日銀のマイナス金利政策の影響が深刻であることがわかる。

 九州7県のなかで、貸出金利が低利の1位は、熊本県で1.04%(前期比▲0.11%)。肥後銀行と熊本銀行の貸出金競争によるようだ。

・熊本銀行の貸出金平残は前期比+2,487億円の1兆4,491億円。しかし貸出金利が前期比▲0.25%の1.11%となったため、貸出金利息は160億円で▲2億円の減益となっている。

・肥後銀行の貸出金平残は前期比+2,276億円増の3兆3,698億円。貸出金利が前期比▲0.05% の1.01%。熊本銀行と比較して小幅な下げだったため、貸出金利息は339億円で+5億円の増益となっており、明暗を分けている。

・貸出金利の2位は長崎県で、前期比▲0.17%の1.06%。十八銀行は前期比▲0.15%の0.98%。親和銀行は前期比▲0.17%の1.06%。十八銀行がふくおかFGに経営統合を申し込んだ裏には、貸出金利が大きく影響したのではないだろうか。長崎銀行は前期比▲0.13%の1.60%で独自の戦いをしているのがわかる。

 貸出金利が1%を割っているのは十八銀行のほかに、北九州銀行で前期比▲0.01%の0.99%の2行となっている。

・反対に貸出金利が一番高い銀行は、佐賀共栄銀行で前期比+0.02%の2.5%。九州地銀18行のうち、ただ1行だけ前期比プラスとなっている。次が南日本銀行で、前期比▲0.08%の2.22%。この2行が2%を超える貸出金利となっている。企業融資主体ではなく、独自の営業戦略が功を奏しているようだ。

・貸出金利の3位は福岡県で前期比▲0.03%の1.12%。以下、4位は鹿児島県で前期比▲0.08%の1.25%。5位は佐賀県で前期比▲0.11%の1.27%。6位は大分県で▲0.06%の1.33%。

・貸出金利の7位は宮崎県で前期比▲0.04%の1.39%。金利の低い熊本県の1.04%と比べると+0.35%高い。

【表2】を見ていただきたい。

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~この表から見えるもの~

 九州7県の2015年10月1日から3年後の2018年10月1日の推計人口の推移表である。総人口は12,862,100人で前回調査比▲154,229人で、福岡県だけが増加しており、残り6県は減少しているのがわかる。今後人口は加速度的に減少するとともに、地域経済も大きく縮小することが予想されている。

・北部九州(4県)の人口は841万人で、南九州(3県)で444万人となっており、2対1の比率となっている。

 【表3】を見ていただきたい。九州地銀(18行)の経営統合予想図である。

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~この表から見えるもの~

 ふくおかFGに大分銀行と福岡中央銀行の2行。大分銀行は福岡県とのつながりが深く、メリットが多く、預貸率の改善が期待できる。福岡中央銀行は歴代頭取を福岡銀行から迎えており、人的なつながりが深い。

・九州FGに宮崎銀行、佐賀銀行、筑邦銀行の3行。現在の九州FGは、ただ単に肥後銀行と鹿児島銀行が経営統合しただけで、そのメリットが見えにくい状況になっている。新しい銀行を加ええれば、経営の主導権をはっきりさせることができるのではないだろうか。また佐賀銀行および筑邦銀行もふくおかFGと経営統合すると、将来支店統合などにより、銀行そのものが存在しなくなる恐れがある。ともに第一地銀であり、経営統合しやすい環境にあるといえる。

 西日本FHに旧相互銀行系の南日本銀行、宮崎太陽銀行、豊和銀行、佐賀共栄銀行の4行が経営統合するものと見られる。

・北九州銀行は独自の戦いとなる。かつて中世の大内家、毛利家が小倉に進出した時があったが、はたして死守できるのだろうか。

<まとめ>

 大胆な九州地銀の金融再編を予想したが、当たるかどうかは別にして、九州地銀の多くは単独では生きていけない経営状況にあり、経営統合が今後急速に進むことは間違いないようだ。

(了)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

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