北九州市にIR推進協議会が発足 「オール北九州」態勢を組めるかが誘致実現への第一歩(後)
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内藤則雄・北九州市IR推進協議会事務局長
IR事業者は「なんとしても日本でIRをやりたい」
――IR事業者は、いくらまで出すと言っているのですか?
内藤 最初は2,000億円でした。今は「5,000億円まで出しても良い」というIR事業者もいます。
――それはすごいですね。
内藤 世界的なIR事業者は10社ほどありますが、彼らには、「なんとしても日本でIRをやりたい」という思いがあるんです。ただ、現在日本が誘致を予定しているのは3カ所。10社のうち7社は漏れてしまう。彼らも死に物狂いなんです。大阪のIR計画では、あるIR事業者は「2兆円出す」と言っていますよ。「地下鉄も我々がつくるので、ぜひウチにやらせてくれ」と。中国の大金持ちは、1チップ1千万円で遊ぶ方もおり、一晩で数億円使う人もいると聞いています。
IRでのカジノの専有面積は3%程度ですが、収益の大半を稼ぎ出すわけです。カジノの収益のうち、15%が地元自治体に入りますので、少なく見積もっても、年間200〜300億円の増収が見込めます。加えて、地元雇用は大阪が8万8千人、和歌山が2万人と想定していますので、北九州は4万人程度の地元雇用が見込めます。
――なぜそこまでして日本でIRをやりたいのでしょうか?
内藤 一番は北九州の経済の活性化。また、人口減少が問題視されている本市の人口増加、これからの北九州を支えていく若者たちに夢をもってもらうためです。そのためには、なんとしてもIR誘致を成功させ、多くの雇用・多くの観光客を受け入れる必要があると感じています。
――中経協と具体的な投資額の話し合いをしていた?
内藤 中経協と北九州市議会ですね。IR推進協議会ができるまでは、中経協と井上市議を中心とした北九州市議会のメンバーで一緒に動いていたんです。地元の仲間を増やしていく活動なども一緒にやっています。
――どこに誘致するかが気になりますが。
内藤 具体的なことは申し上げられませんが、我々としては非常に有望な場所を候補地として予定しています。IR事業者には、すでに視察してもらっています。
――「IR=カジノ」だとして、反対の声があがることが予想されます。
内藤 その通りです。ただ、それはIRの中身を知らないで反対している場合がほとんどです。我々がどのようなIRにしようとしているかちゃんと説明すれば、ほとんどの方々が支持してくれるようになります。我々の仲間は、分刻みで動きながら、説明のために奔走しています。
確かに、治安の悪化やギャンブル依存症などの弊害が生じることは否定できません。治安や依存症対策については、国、自治体、事業者においてしっかりとした監視体制で行っていくことで、軽減できると考えています。
資源リサイクルに資するIRとは?
――IRのコンセプトがあるのですか?
内藤 北九州市IRの目玉は、資源リサイクルに資する「SDGsIR(仮称)」をコンセプトにしていることです。この点、資源リサイクルを手がける日本環境設計(株)の岩元美智彦会長に協力していただくことになっています。IR内にリサイクルプラントをつくるのか、ミュージアムのようなものをつくるのか未定ですが、今後詳細を詰めていくことになっています。「クリーンアースIR(仮称)」という名称も良いかなと思っていますが。
――IRとSDGsがどう関連するのか、良くわかりません。
内藤 そうでしょう(笑)。だからこそ、やる価値があるんです。我々は国に選んでもらう必要がるんです。国が「えっ」と驚くようなプランを打ち出さないと、選んでもらえません。IRの設置個所は、関東圏と関西圏が有力で、残る1つは北海道か九州と考えています。九州では佐世保市が手を上げていますが、北九州市には、新幹線も24時間空港もあり、50分圏内の広島まで含め、周辺人口を考えると800万人にもなります。北九州市のポテンシャルは、全国を見ても超一流だと思っています。課題は国にどう働きかけるかです。
誘致表明は年内がタイムリミット
――北九州市議会での議論はどうなっているのですか?
内藤 今年の3月議会で、市議からIR誘致に関する質問が出ました。北橋健治市長からの回答は「ニュートラルな気持ちで勉強していく」という消極的なものでした。市の財政状況は良くありません。先日、145億円の基金を取り崩したばかりです。財政収入が減り続ける今の状態が続けば、衰退するだけです。未利用の土地も増えています。こうした市の問題を解決するのがIR誘致だと我々は考えているわけです。我々としては、これからも引き続き市や議会に要望活動などを行っていく予定です。
――北九州市が手を挙げるタイムリミットは?
内藤 9月までには、正式に誘致の表明しておく必要がありますね。参院選の影響でIR基本方針の発表が少し遅れる見通しですが、北九州市が手を挙げるのは、9月がリミットでしょうね。手を挙げるのは北橋市長です。IR誘致の準備は、水面下では急速に進んでいるのですが、北橋市長が明言を避けているので、メディアもあまり取り上げません。これまでのところ、北橋市長の姿勢はニュートラルだからです。市長に手を挙げてもらうためには、外堀を1つ1つ埋めていって、手を挙げやすい環境をつくる必要があります。最終的に「オール北九州」で挑む態勢を整えられるかが重要になりますね。
(了)
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