プラットフォームからビジネスを産み出す
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APAMAN(株) 代表取締役社長 大村 浩次 氏
WASHハウス(株) 代表取締役社長 児玉 康孝 氏福岡から東京に進出し、賃貸住宅仲介業で国内トップとなったAPAMAN(株)、かたや宮崎に本社を構え、コインランドリーチェーンとして日本一となったWASHハウス(株)。2社に共通するのは、経営者の強いリーダーシップとビジネスに対する発想力で、一代でその会社をつくり上げた代表の存在だ。ともに不動産をルーツにもち日本を代表する企業となった2社の今後のビジネス展開について、話を聞いた。
(取材日:2019年5月23日/聞き手:弊社代表・児玉 直)
新しいビジネス分野の開拓
――お2人とも福岡を始め、各地でビジネスの幅を広げていますが、最近の状況はいかがですか。
大村浩次・APAMAN(株)代表取締役社長(以下、大村社長) シェアリングエコノミー事業が成長しています。現在、コワーキング・シェアパーク・民泊・シェアバイクを展開しており、今後、短中期滞在型住宅の提供を検討しています。とくにコワーキング事業に関しては、政府が発する日本再興戦略の趣旨に沿って、スタートアップ企業や、第二創業企業を支援しています。会員数は約2,500名となり毎月増加しております。単なるオフィスの提供だけでなく、エコシステムとして多くのサービスを提供しております。
イベントや勉強会は年に約2,000回実施しており、多くの方々に利用いただいております。今後は日本企業と海外の企業を結ぶサービスを積極的に行いたいと考えており、福岡ではアクロス福岡1階に、fabbit Global Gateway “ACROS Fukuoka”をOPENし、学生を含め多くの方に利用いただいております。
児玉康孝・WASHハウス(株)代表取締役社長(以下、児玉社長) 当社は宮崎県に本社を置き、地元九州を中心にコインランドリー事業を展開し、現在では全国で600店舗ほどに成長しました。私は、会社として次のステップを準備しなければならないということで、先を考えて手を打ってきました。
たとえば、大きなものでは、宮崎で2,000坪の土地を購入して、洗剤工場をつくる準備を進めています。今、弊社では月に30tぐらいの洗剤を使っているので、これを自社で製造できるということが1つビジネスにつながります。自社でつくった洗剤をフランチャイズ(以下、FC)のオーナーさまに購入していただきます。そういう部分ではプライベートブランド(PB)商品を扱うコンビニエンスストア事業に似ています。
また、昨年3月にはWASHHOUSEフィナンシャル(株)という金融会社を立ち上げました。FCオーナーさま向けに、新規出店などを目的とした事業資金融資を行う会社で、売上高連動返済方式とノンリコースローンの仕組みを取り入れました。いずれも既存のコインランドリー事業から付帯収益を生み出すようなビジネスにしていきたいと思っています。
――企業を経営するなかで、自分自身がどのように変わっていくべきだとお考えですか。
大村社長 振り返ると、失敗のほとんどが私の勉強不足による無知からきており、しっかりと先人の経験や知恵を学ぶ時間を増やさなければならなかったと反省しています。今は、勉強する時間や考える時間を増やしたことで会社が少しずつ良くなっていることを実感しています。また、高いコンプライアンス意識をもつことと、それを実行する組織づくりも大切です。この点、ガバナンスや外部アドバイザーを含め積極的に取り組みをいたします。
児玉社長 弊社の場合では、支店と従業員が増えてきましたので、支店内でのコミュニケーションや従業員を育てるということに時間と費用をかける必要があると考えています。それと同時に人に仕事を任せることの難しさを感じています。このようなことから、私は今、直接現場に出て、もう一度営業方法から組織を見直そうとしています。
プラットフォームを確立
――業界内で日本一という確固たるポジションを築いていますが、次のステップはどうなっていますか。
大村社長 弊社はもともとシステムを提供する企業として設立されました。上場したときの売上の90%以上は現在のクラウドテクノロジー事業です。従って、日本一であるとすれば、入居者・オーナー・物件のデータベースであるととらえています。確かにFCを含む店舗数や斡旋件数は日本一と紹介されますが、会社としてはプラットフォーム事業としてのデータ(顧客との日々の取引内容も含め)に価値があると考えています。そのうえで、“次のステップは?”の質問に関して以下3点を回答させていただきます。
(1)データの保有・精度・クレンジングを強化。
(2)データマイニングによって顧客の必要とする情報を提供。
(3)上記(1)(2)ともにX-DIGITAL(AI〈人工知能〉・RPA〈Robotic Process Automation〉など)を可能な限り内製化して精度とスピードを上げる。現在、グループ内に約300人の技術者やクリエーターが働いていますが、将来は地方のIT BPOセンター含め1,000人規模まで拡大し、技術でユーザビリティーや自動化を進めたいと考えています。
――WASHハウスはコインランドリーとして店舗数が日本一になりましたが、良いビジネスを見つけられましたね。
児玉社長 見つけたというよりは、つくっているという感じですよね。コインランドリー業界自体はとても古いのですが、「本当に儲かってるのかな?」という印象の、古くて汚い店舗が同じ場所に長くあるような不思議な業界だったと思うんですよね。弊社はそれを払しょくするような明るく、清潔感がある店舗にしてチェーン化を進めました。
大村社長 平均の売上は1店舗あたりどれくらいでしょうか?
児玉社長 月平均でいうと70万円ぐらいです。店舗設置直後のコインランドリーは当初は売上が低いんですよ。リピーターが増えていくことによって売上につながっていきます。2002年にオープンした店舗では、設置直後の最初の1カ月の1店舗あたりの売上は30万円程でした。店舗が認知されるのには時間が必要で、およそ3年ぐらいで売上が伸びていきます。
今後の目標の話になりますが、弊社は国内2万店舗以上を目標にしています。これだけの店舗数をつくるために弊社はFC事業モデルでコインランドリー事業に参入しました。コインランドリーは設備投資事業ですから、多店舗展開すると減価償却費の問題でキャッシュフロー上は黒字であっても、決算上は赤字という状態になってしまいます。出店し続けるためにはFCというオフバランス化(貸借対照表に計上されない)が必須だったのです。
一方で、従来のFC事業モデルでは、本部とFCオーナーさまが対立するケースがありました。そこで弊社では、FCオーナーさまは「何もしなくて良い」という仕組みにしたのです。600店近くある店舗の業務のすべてを弊社が代行するというかたちですね。機械の修繕費用はFCオーナーさまの負担になりますが、定期点検・メンテナンスは弊社で行います。さらに弊社ではそれにかかわる保険の仕組みもつくりました。このようなまったく新しいFC事業モデルにより、弊社では本部とFCオーナーさまの対立が起こらないようになっています。
また、弊社はこれらの店舗網を生かすため店舗内にタッチパネルを設置しています。駅やコンビニエンスストアなどにあるタッチパネルとは違って、コインランドリー店舗内で空き時間があるので、広告へのヒット率がすごく高いんですよ。昔、試験的に中古車情報とアパート検索をできるようにしていたのですが、お客さま自ら契約まで行ってくれる人が出てくるのです。これは必ず商売に使えると思いました。
将来、デジタルサイネージなどを活用しながら、広告収入でしっかり稼げるモデルをつくれば、たとえば洗濯をタダにすることだってできるかもしれないと考えています。
大村社長 プラットフォームの考え方ですね。また、普通では考えつかない将来のことまで構想がすばらしいです。
【文・構成:吉田 誠】
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