九州企業の衰退・勃興 平成を振り返る(14)
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百道浜埋立の成功が都市福岡発展の基礎を築いた~その悲喜こもごものドラマを回想(前)
6日の夕方、筆者は福岡ヤフオク!ドームに向かっていた。福岡市商工会議所情報文化サービス部会主催で恒例のスーパーボックスでの観戦のために汗を拭き拭き歩いて向かっていたのである。今年3試合目の観戦だ。
相変わらずたくさんの方々がヤフオク!ドームに押し寄せており、まさしく福岡市民の憂さ晴らしの場所になった。6日の夜も福岡ソフトバンクホークスが勝ち、観客たちは一様にスカッと晴れやかな表情で帰路についていた。
百道浜、地行浜は決して野球だけが売り物ではなく、福岡の高級住宅街を形成している。この地区のマンションのブランド力は高く、値崩れしないことで有名。いまだ値上がり中と聞く。また福岡一の観光拠点という役割の一翼も担っている。IT関連のビルも林立しており、医療の最先端ゾーンも置かれているのである。この百道浜埋立の成功があったからこそ、平成時代の都市福岡の発展がなされたといえる。ヤフオク!ドームに近づきながら、さまざまな想いに耽った。百道浜埋立に携わった人々の悲喜交々のドラマを綴ってみることにしよう。
中内功氏の決断
桑原福岡市長の決断はやはり適格であった。「アジアの玄関口・福岡」を掲げて百道浜の埋立を断行したのである。
『よかトピア』を開催して埋立用地を固めた。都市高速道路も百道浜まで延伸させた。序盤戦では不動産の売れ行きは、さっぱりであった。だが平成が近づくに従って土地バブルが到来。予想を超えた値で売却できたことで福岡市は高収益を得た(その後の埋立用地売却には悪戦苦闘したが――)。
ダイエーのオーナー・中内功氏は南海ホークスを福岡に誘致。そして福岡ドームの建設を決断・実行してくれた。ここからが百道浜発展のスタートである。中内氏はその功労者であるが、野球観戦者の大半はこの偉業を知らない。
この日の昼、赤坂のビルを訪問した。この場所は昔(平成初頭)、ダイエー事務所があったところだ。地元の7社会は中内氏の貢献に対して嫉妬と妨害という暴挙に終始していた。この赤坂にあったダイエーの事務所は地元財界折衝の拠点であった。ダイエー福岡代表の肩書をもったAは腰の低い人格者であった。
「マークイズ福岡ももち」を通り抜けながら記憶が鮮明に蘇ってきた。福岡ドーム建設に携わったダイエーの責任あるポジションにいた副部長が不正をはたらきクビになった。最高責任者だったBは潔く退任した。ダイエー内では栄光の時代を送った方であった。Bは失意の人生から這い上がり、自力ですばらしい事業基盤を形成された。筆者が尊敬する人物の1人である。
「マークイズ福岡ももち」からヤフオクドームまで直線で抜けられる通路ができている。昔と比較すると便利になったものだ。三菱地所が売り出す高層マンションの建設が随分進行している風景を見上げながら「Cさんよ!!マンション分譲で資金回収を考えつかなかったのか!!」と1人囁いた。
Cはダイエーの百道浜3点セット事業の資金プロジェクト責任者であった。「当初のツインタワー構想では2,800億円の資金がいる。それではダイエーが潰れるからワンタワー(ホテルシーホーク)にした」と説明するCの悔しそうな顔が浮かんできた。福岡市からも約束違反と抗議を受けた。
最終的には投資資金を1,800億円以内に抑えて福岡ドーム・ホテルシーホーク・ホークスタウンの3事業に絞ったのである。このホークスタウンのモール形式の商業施設はお粗末なものであった。投資額は100億円足らずで、野球などのイベントがない時はお客さんがガラガラで赤字事業であった。要は三菱地所からみればホークスタウンがお粗末だったがゆえにお買い得だったということである。
新デビューした「マークイズ福岡ももち」周辺は、まずは(1)住宅街区が整備されて地元顧客がいる、(2)昔と比較して外国人観光客が立ち寄るスポットになった、(3)そして、野球を含めた福岡ドームでのイベントにともなうお客さんの動員、という3要素で繁盛が期待できるという市場調査の結論を読みとることができる。言葉を換えれば地域が成熟したということであろう。
加えて、百道浜地区は福岡では大濠と並ぶマンションブランドゾーンとなった。三菱地所は「高級マンションは即完売」できると判断したのであろう。だから2棟の大型マンション供給に踏み出したのである。聞くところによると、マンションの売行きは好調のようだ。資金回収も短期間で可能なようである。福岡における三菱地所の事業といえば「天神イムズ」事業ぐらいしか目立つものがない(築30年のイムズを建て替えるというニュースには驚いた。さすが三菱地所はやることが違う)。「マークイズ福岡ももち」は必ず同社の福岡事業の目玉になる。
ダイエー中内功氏の百道浜3点セット事業の「業の利」を得た企業が3社ある。(1)ハゲタカファンドのコロニーとこれにぶら下がったブローカーたち(2)ソフトバンク(3)そして今回の三菱地所。
(2)のソフトバンクオーナー・孫氏の頭にはもう球団のことは眼中になかろう。やはり事業が発展していくには新たな血、新たな資金が投入されてこそ拡大・発展していくという法則があるのだ。中内氏も草場の陰で満足されていると思うが――ー。(つづく)
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