2024年12月22日( 日 )

日建設計・JSCAの最凶タッグが耐震偽装を事実上認めた!(前)

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豊洲市場 日建設計と業界団体への質問に対し両者とも無回答

 東京都豊洲市場水産仲卸売場棟の設計偽装に関して仲卸業者5社が東京都に使用禁止を求めた訴訟は、審理に入ることなく強引に結審しようとする裁判長の暴挙に対し、原告側は裁判官忌避を申し立てた。その後、原告が申し立てた裁判官忌避は却下されたが、裁判官は以降の審理日程を決めようとせず、裁判が空転した状態が続いている。

 当ニュースサイト「NetIB-NEWS」編集部は、豊洲市場の設計を担当した(株)日建設計の亀井忠夫社長、構造設計の業界団体の会長で豊洲市場問題プロジェクトチーム(以下「市場問題PT」)の委員をつとめた(一社)日本建築構造技術者協会(略称:JSCA)の森高英夫会長に対し、市場の構造上の問題点に関する質問状を送付した。(質問は基本的に「はい」「いいえ」の二択で容易に回答可能な内容)

 令和元年6月10日付けで日建設計から回答の文書がFAXにて送付されてきた。

 回答は以下の通りであった。

 2019年5月31日付けで弊社の代表取締役社長亀井忠夫宛に質問書(取材申し込み)を受領しました。亀井に代わり、広報室よりご連絡いたします。

 豊洲市場の建物の安全性については、市場問題プロジェクトチームにて確認済みですので、個別の質問への回答は控えさせていただきます。

日建設計 広報室

 豊洲市場の設計者として甚だ無責任な回答である。構造技術者の目で見て客観的に不適切と指摘しているのである。身内同士の庇い合いの市場問題プロジェクトチームにおいては構造設計の核心部分に踏み込むことを避けており、「安全」という結論ありきの形式だけの会議に過ぎなかった。

 この設計を容認する発言をした業界団体(JSCA)の会長からは期限までに回答がなかった。編集部は、豊洲市場の設計偽装をめぐり東京都を提訴した経験をもつ構造設計一級建築士 仲盛昭二氏に意見を聞いた。

 ――弊社が日建設計に質問した内容は「保有水平耐力計算における構造特性係数(Ds値)」「Ds値を低減したことによる保有水平耐力の不足」「ピン柱脚の鉄量の不足」「市場問題プロジェクトチーム会議へ提出資料の加工」「層間変形角」です。JSCA会長には日建設計への質問に「JSCA 会長としての責任ある言動」についての質問を追加しました。
 これらの質問は回答しづらい内容なのでしょうか?

 仲盛 日建設計やJSCAが回答できない理由は簡単です。事実を指摘した核心を突いた質問だから回答をすることができないのです。日建設計が適法に設計を行っているのであれば、その旨を堂々と回答すればいいのであり、簡単なことです。日建設計が「回答を控える」のは、設計の偽装を認識しているからこそ「回答することができない」のです。

 後ろめたいことがなければ、理路整然と説明できるはずです。「建物の安全性は市場問題プロジェクトチームにて確認済み」とありますが、市場問題PTこそ「豊洲市場の建物は安全」という結論ありきの儀式に過ぎません。PTの議事録を読むと、委員が日建設計に説明を強く求める場面もなく、建築構造の専門家としてPTの委員を務めたJSCAの森高会長も日建設計を擁護する立場に終始しています。森高会長の日建設計擁護の姿勢には理由があります。それは、PTにおいて設計者側の代表として説明を行った常木康弘氏がJSCAの副会長(PT当時)であり、次期JSCA会長に内定しているという間柄だからです。

 ――豊洲市場の構造計算においては、保有水平耐力計算におけるDsという係数が偽装された設計となっていたわけですが、このDsという係数の偽装は、建物の構造計算にどう影響を与えるのでしょうか?

 仲盛 保有水平耐力というのは、簡単にいえば、大規模な地震の際に内部の人間が安全に避難できる時間を稼げる壊れ方を設計するものです。梁よりも柱が先に壊れてしまえば床が落ちて(落階)中にいる人間が下敷きになってしまいます。

 建物がもっている力=保有水平耐力が地震に耐えるために必要な力=必要保有水平耐力を上回っていれば、避難に必要な時間を稼ぐことができると判断され、この保有水平耐力と必要保有水平耐力の割合を保有水平耐力比といい、一般的に「耐震強度」と理解されています。

 豊洲市場など用途が公設市場の場合には用途係数が1.25と条例で定められていますので、保有水平耐力比が1.25以上であれば最低限の強度が確保されているといえます。

 ――豊洲市場水産仲卸売場棟の耐震強度=保有水平耐力比は1.25以上となっているのでしょうか?

 仲盛 私が見た水産仲卸売場棟の構造計算書では保有水平耐力比(耐震強度)は1.25ギリギリの数値になっていました。市場問題プロジェクトチームに日建設計が提出した資料では数値が修正されていて1.34という保有水平耐力比となっています。これは問題発覚後に構造計算を見直して数値を修正したと日建設計が説明しています。

 ――保有水平耐力比は1.25以上であれば安全というとことですよね?

 仲盛 水産仲卸売場棟の構造計算においてはDsという係数が違法に低減され、保有水平耐力比が偽装されています。この建物は鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)ですが、1階柱脚(柱の根元)が埋め込まれていない形式ですので、1階のDsは鉄筋コンクリート造(RC造)のDsを採用しなければなりません。SRC造の場合鉄骨のしなやかさを考慮してRC造に比べてDsを0.05低減してもよいとされています。しかし、柱脚が非埋め込み形式の場合にはSRC造の低減は適用することができません。水産仲卸売場棟の構造計算で各階ともDsは0.3となっています。これはSRC造として低減されたDsです。1階については低減してはいけないので、0.05の低減を適用せずDsは0.35となります。日建設計が説明している保有水平耐力比1.34はDsをSRC造として低減しているので「0.3/0.35」の比率で計算をすると1.34×(0.3/0.35)=1.14となり、条例で定められた公設市場の用途係数1.25を下回ってしまいます。すなわち、現状のままでは豊洲市場水産仲卸売場棟は公設市場として使用できないということです。

(つづく)

(中)

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