進化する一方の中国のロボット産業:北京では人型ロボットの販売が開始!

 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
 今回は、8月15日付の記事を紹介する。

イメージ    このところ世界の関心はAIやロボットに集中しているようです。ソフトバンクグループの孫正義会長も「これからの世界のビジネスはAI搭載のロボットが牽引するだろう」と述べています。また、世界1の大富豪であるイーロン・マスク氏も人口減少が止まらない日本へのアドバイスということで、「人が減っても大丈夫だ。ロボットが人に代わって仕事を何でもこなしてくれる。心配ご無用」と楽観論を繰り出すばかりです。

 とはいえ、ロボット産業で他を圧倒しているのは中国でしょう。中国ではロボットが主役を演じるスポーツ競技が異常な盛り上がりを見せています。日本同様、中国も異常な猛暑に見舞われていますが、北京ではこの8月半ば、様々なロボット・アスリートによるスポーツイベントが予定されている模様です。人間であれば、暑さのせいで運動は控えるのが当たり前でしょうが、汗をかくことのないロボット・アスリートはここぞとばかり猛烈にパフォーマンスを繰り広げています。

 例えば、4月には北京で世界初となる「人間とロボットが競い合うマラソン大会」が開催されました。1万2,000人の人間のランナーと21台のロボット・ランナーが21キロのハーフ・マラソン・コースで覇を競い合ったものです。ただ、この時には完走したロボット・ランナーは6台だけでした。

 その後、5月には杭州において、これまた世界初となるロボット・ボクサー同士によるキック・ボクシング大会が開催され、世界の注目を集めたものです。参加したロボット・ボクサーはカンフーの動きをマスターしており、人間顔負けの戦いぶりを演じていました。

 また、6月になると、フットボールの決勝大会が北京で開かれ、3台1組のチーム同士で戦ったロボット選手が巧みなボールさばきで観客を驚かせたものです。ちなみに、この大会で優勝したロボットチームは習近平国家主席の母校である清華大学が開発したロボットで、習近平氏も大喜び。そして、8月14日から17日には、北京では何と22種目のスポーツとダンスの競技大会が開催されるとのこと。もちろん、参加するのは全てロボットのアスリートとダンサーで、20か国以上のロボットが競い合います。

 日本でも自動車の製造工場などで、ロボットアームが大活躍し、商品や食事のデリバリーを担うロボットも急増中ですが、ロボット同士が本格的にスポーツの世界で競い合うところまではいっていません。

 14日から開幕した北京の大会ではバドミントン、卓球、バスケットボールに加え、陸上競技では100メートル走、400メートル走、1,500メートル走、リレー走、障害物走、走り幅跳び、高跳びなど、人間と同様のルールの下、ロボット・アスリートが競い合う予定です。しかも、同じく8月には北京で「世界ロボット会議」も開催しました。世界各国からロボット工学の専門家やロボット開発企業の幹部らが一堂に会するとのこと。熱い議論が展開されそうですが、中には議論に参加するロボットも出てきそうです。

 「AIが人間を凌駕するのは時間の問題」と指摘されていますが、われわれ人間が生き残るにはロボット化することが避けられない時代なのかも知れません。そんなロボット産業が花盛りの中国ですが、「世界ロボット会議」に合わせるように、「ロボットモール」が開業しました。中国初のビジネスですが、犬から料理人まで、100種類以上のロボットが店頭販売されています。

 話題となっているのはアインシュタインそっくりさんロボットです。誰が買うのか、関係者の関心を集めています。値段もピンキリですが、2,000元から数百万元まで多種多様です。

 モールの側にはロボット料理人が調理し、給仕もロボットが担当するロボットレストランもオープンしています。日本と同じように人口が減少し始めた中国では、習近平国家主席の肝いりでAIとロボット開発のスタートアップ企業を支援する1兆元のファンドも計画中とのこと。ますます人とロボットの見分けがつかなくなりそうです。


著者:浜田和幸
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