2024年11月23日( 土 )

「モノ言う株主」の標的になったJR九州の株主総会~自社株買いの株主提案に34%の賛成票(前)

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 九州旅客鉄道(JR九州)は6月21日、ホテル日航福岡(福岡市博多区)で定時株主総会を開いた。悲願の上場をはたしてから2年半。半官半民企業から完全な民営企業に転換したが、早速「モノ言う株主」(アクティビスト)の洗礼を浴びた。株式市場の初心者プレーヤーであるJR九州に、海外投資家が群がった。お目当ては、JR九州がため込んだ内部留保だ。かろうじて乗り切ったものの、バトルは続く。

株主提案の社外取締役候補に4割を上回る賛成率の衝撃

 JR九州は6月27日、臨時報告書を開示し、株主総会での議決権行使結果を発表した。

 米投資ファンド、ファーツリー・パートナーズは、役員選任案や計720億円を上限とする自社株買い、指名委員会等設置会社への移行など6つを提案した。

 すべては否決されたが、社外取締役3人の選任については、2人に40%台の支持が集まった。自社株買いと指名委等設置会移行の議案でも賛成率は34%台だった。JR九州にとって薄氷を踏むような勝利だった。

【会社提案の議案】

・第2号議案:取締役11名選任の件(監査等委員である取締役を除く)

             氏名                  賛成率(%)
代表取締役会長執行役員 唐池恒二 取締役会議長           86.57
代表取締役社長執行役員 青柳俊彦 最高経営責任者              78.46
取締役副社長執行役員  前田勇人 総合企画本部長              86.75
取締役専務執行役員   田中龍治 事業開発部長                 86.75
取締役専務執行役員   古宮洋二 鉄道事業本部長              86.75
取締役常務執行役員   森亨弘  最高財務責任者              86.92
社外取締役       利島康司 安川電機製作所特別顧問  59.61
社外取締役       貫正義  九州電力相談役              78.86
社外取締役       桑野和泉 玉の湯社長                    80.00
社外取締役       市川俊英 三井ホーム相談役           75.55
社外取締役       浅妻慎司 関西ペイント取締役        75.90

【株主提案の議案】

・第7号議案:自己株式取得の件           34.10
・第8号議案:指名委員会等設置会社への移行の件   34.36
・第10号議案:取締役3名選任の件
社外取締役  トシヤ・ジャスティン・クロダ JTKパートナーズ代表取締役  41.69
社外取締役  黒田恵吾       クロスパス・アドバイザー代表取締役 40.09    
社外取締役  ジェイ・マイケル・オーエン
                           トランズパシフィック・エンタープライズ社長 24.77

「モノ言う株主」が挑戦状を叩きつける

 米投資ファンド、ファーツリー・パートナーズは3月22日、6月に開催予定のJR九州の定時株主総会で株主提案をすると表明した。

 ファーツリー社は1994年に設立された米ニューヨークに本社を置く投資ファンドで、預かり資産は約60億ドル(約6,600億円)。日本でも10年前から投資活動を行ってきた。JR九州には16年の上場当時から投資し、昨年12月、同社株式の5.1%を保有する大株主に躍り出た。さらに、今年3月にはJR九州の持株比率は6.1%に高め、同時にさまざまな株主提案を行った。

 ファーツリー社は、発行済み株式の10%に相当する自社株買い、指名委員会等設置会社への移行、ファーツリー側が推薦する社外3人の選任、株式報酬の導入など計6議案を提案した。JR九州は5月13日付ですべての提案に反対を表明すると同時に、自社で選んだ社外取締役候補や株式報酬制度を総会に諮るとした。

 かくして、JR九州の青柳俊彦社長と、ファーツリー社のアーロン・スターン、マネージング・ディレクター(投資責任者)のバトルが火を吹くことになる。

(つづく)
【森村 和男】

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