2024年12月27日( 金 )

『脊振の自然に魅せられて』「見事に咲いたハイノキの花に感動」ハイノキ(灰の木):ハイノキ科 ハイノキ属

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見事に花を付けたハイノキ

 ハイノキの花は毎年咲きますが、感動するほど見事に咲くことは珍しいと言っても過言ではありません。

 ハイノキは灌木で純白の小さな花を付けます。小枝に小さな花を付け、遠くから見ると雪を被っているように見えます。「今年はたくさん咲くかな、来年はどうだろう」と小さな花に心惹かれます。

 ハイノキは下を向いてうつむいているかのような表情を見せますが、春先に咲く白い小さな花は、本当に可愛らしく、通る人々を惹きつけます。

 4月29日(祝)は毎年、脊振山系:金山の山開きの日です。今年は平成最後の年で、新元号・令和を迎える大型連休の3日目でした。「山開き」の開催告知は「市政だより」や「新聞記事」「情報誌」「福岡市ホームページ」、登山アプリ「ヤマップ」「ブログ」などのメディアを利用しました。

 天気予報では4月29日は早くから雨マークがついていました。「何とか山開きを開催したい」との思いで、ギリギリまで開催するか、中止するかの判断に悩みました。大型連休に入る直前の4月26日(金)には、早良区役所の関係者と私とで打ち合わせをしました。

 「脊振の自然を愛する会」副代表でワンゲルの先輩でもあるTは山のスペシャリストです。電話でTに中止か否かの判断を仰ぐと「中止した方がいい」と言われたので、私と早良区役所の関係者は登山者の安全を第一に考え、中止の決定をくだしました。すぐさま早良区役所のホームページや私のブログなどでも中止を伝えました。

 山開きをする予定だった4月29日早朝は小雨模様でした。「いかん、登山者が登ってくるかもしれない」と思い、私は前日に用意していた「山開きは中止します」と書いたプリントをビニール袋に入れ、朝6時に車で自宅を出ました。向かう先は福岡県、佐賀県にある金山の登山口4カ所です。

 車に常備しているビニール製の簡易雨具を被り、本日の「山開き中止」の告知を大型のホッチキス(ガンタッカー)で坊主が滝登山口に貼り付けました。

 次にカランの滝登山口へ向かました。山は霧雨のベールで覆われ、車のタイヤがアスファルト上の水を弾く音が続いていました。

 2つ目のカランの滝登山口で山開き中止の告知をした後のことです。頭上にたくさんの白い花を付けた灌木がありました。満開のハイノキです。これほど花を付けているとは。「見事」としか言いようがありません。

 これまで何度も訪れていた登山口でしたが、ハイノキが登山口にあることさえ気づきませんでした。なぜなら花を付けた姿を見たことが無かったからです。

 ハイノキは雨のなかで、まるで私が来るのを待っていたかのようでした。

 急いで車に戻り、カメラを準備します。雨具の下のチョッキのポケットに90ミリのマクロレンズを1本突っ込み、ハイノキのある場所に戻りました。撮影角度が自由になる1脚にカメラをセット。全身が震えるほど感動していました。

 シャターを数枚切りました。雨の雫を含んだ小さな白い花から丸い水玉がレンズとなって周りの景色を写し込んでいました。自然界のこの不思議な造形に感動を覚えます。

 撮影がひと段落し、周りを見渡すと数m先にもハイノキが白い花をいっぱい付けて渓谷のそばに咲いていました。「こんなにハイノキがあったのか」、20年も撮影を続けてきたにもかかわらず、この登山口で一度も花を付けたハイノキを見たことがなかったのです。まだ脊振を歩ききっていないのかもしれません。

 ハイノキは毎年少しの花を付けます。今まで枝いっぱいに花を付けているのを見たことがありませんでしたが、今年はハイノキの花のあたり年だったようです。ほかの場所でも同じようにたくさんの花を咲かせていました。

 椎原バス停から矢筈峠へ向かう渓谷の上にもハイノキの花が咲き誇っていました。この場所のハイノキは比較的大きいのですが、咲き具合は毎年まばらでした。今年のように見事に花を付けている光景は、すばらしいとしか言いようがありません。

 ある登山者が、この光景に気づかずに通り過ぎようとしていました。私は、その登山者に「花がたくさん咲いていますよ」と声をかけました。すると、その登山者はカメラを取り出して、ハイノキを撮影していました。

 6年に一度しか咲かないと思われる見事なハイノキの花に遭遇した年でした。早朝から登山者を心配して『山開き中止』を知らせにいった私への「ご褒美」のようでした。

 結局、この後、大雨となり、中止の決断は正しかったと安堵しました。

 「ご褒美」はこのほかにもありましたが、それは次号で…。

可憐なハイノキの花

 ※ハイノキの材からつくった灰汁が、染物をする際、染料を繊維に定着させる「媒染剤」に使われたことから名付けられた。材は緻密で将棋の駒や箸、民芸品などをつくるのに使われる。

—ウイキペディアより—

2019年7月3日
脊振の自然を愛する会
代表 池田 友行

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