シリーズ・消えた「流通企業」総集編 前篇~合掌連合の名人 イオンと4人の仕掛け人たち
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これまで、多くの「消えた小売業」を紹介してきた。そのいずれもが、その時代を飾った優良企業ばかりでほかにも紹介しきれない小売業がたくさんあるのは読者の皆さまもご存知の通りである。この連載を通して必ず名前が出る企業がある。イオンである。
イオンはいうまでもなく、我が国最大の売上を誇る小売業である。その規模6兆円。国内ばかりでなく、海外への進出も近年では目覚ましく、グローカル(情報は世界から、実践は地方(地元)から)を合言葉に、これまでさまざまな小売業と提携・合併・吸収してきた。
そもそも、イオンそのものが合併でできた企業。以前の社名のジャスコは、「Japan United Stores. Company.」の頭文字を取ったもの。ジャスコの企業モデルはアメリカのフェデレーテッド・デパートメントストアズ社。
メーシー、ブルーミングデールズなどの百貨店を傘下にもつ小売業で、連邦制経営を旨としていた。ジャスコはこれをモデルにしてM&Aを展開した。しかも、株式の過半数を取得する強権的支配権でなく、株式の過半数以下を保有する緩やかな連邦制を敷いた。
中心人物はいうまでもなく岡田卓也氏。日本のチェーンストアを築き上げた重鎮である。そして、合従連衡の名人でもある。そもそも、ジャスコの原型である岡田屋、フタギ、シロの3社合併も岡田氏が仕掛けた大連合だった。
その後も、ジャスコは地方のスーパーや百貨店を次々と買収していくが、時代ごとに岡田代表の薫陶を受けたM&Aの仕掛け人がいた。
第一に、元通産官僚の林信太郎氏。林氏は華麗な経歴と幅広い人脈でジャスコの下支えをしてきた。
多くの地方百貨店経営者は林氏の理論に触れこれからの小売業を示唆した。林氏はジャスコの副会長を務めた後、日本ボランタリーチェーン協会の会長に就任し、後人育成に励んだ。
次に岡田卓也名誉会長だけでなく、副会長・二木英徳氏の信望も篤かった谷口優氏。谷口氏は、新規事業や海外戦略で多くの企業とM&Aを行った。
次に、地方の有力スーパーやチェーンストアとの開発を熱心に説き伏せ、さらに全国のHC企業やドラッグストアを隈なくめぐり、北海道から九州まで一気通貫の連携を創った星名光男氏。
そして、岡田元也氏の元でダイエーやマイカル、カルフールなどの難題M&Aを次々と解決していった、豊島正明氏である。
このM&Aの仕掛け人の活躍がいまのイオンを支えているといっても過言ではない。
(つづく)
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