ゆとり教育抜本見直しに命をかけた20年(4)
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進学塾「英進館」館長/国際教育学会理事/福岡商工会議所議員
筒井 勝美 氏 78歳筒井氏がゆとり教育の見直しに正面から取り組むようになったきっかけは、1998年(平成10年)7月29日から3日間、福岡市で開かれた社団法人日本工学教育協会の年次大会だった。
同大会(旧七帝大の持ち回りで、今回は九州大学工学部が当番で、九州工学教育協会主催)では、「科学技術立国を支える工学教育」をテーマに、全国から国公立大学を中心とする工学部関係の教授や、工学系高等専門学校の校長、企業・研究所などの科学技術者が多数参加した。
最終日には「変革期の工学教育」と題してパネルディスカッションが行われた。九州大学工学部教授や安川電機基礎研究所長、熊本電波高専校長らに混じって、筒井氏もパネラーの一人として出席要請を受けたのだ。学習塾の一経営者が招かれるのは極めて異例。筒井氏は「塾には珍しく理科教育の危機を訴え、理科の実験授業を行っていたからでしょう」と、当時を振り返る。
「アカデミックな大会に呼ばれたからにはしっかり準備しなければ」…。94年から3年間行った、英進館塾生(中3生約2500名)の学力テスト結果だけでは不十分だと考えた彼は、昭和30年代以降の理数教科書をはじめ、文部省の学習指導要領の変遷を徹底的に調べることを決めた。加えて国立教育研究所紀要の調査、理数教育カリキュラム作成関係者、教科書執筆者との情報交換、更に欧米の理数教育の実態まで、約3カ月をかけて調べ上げた。
この時に集めた膨大な資料・データを通して、やはり82年(昭和57年)から始まった「ゆとり教育」が、実際に教科書に反映され、学校教育に実施されたことが日本の理数教育が急速に衰退した大きな要因であることを確信した。
(つづく)
【本島 洋】<プロフィール>
筒井 勝美(つつい・かつみ)
1941年福岡市生まれ。63年、九州大学工学部卒業後、九州松下電器(株)に入社。1979年「九州英才学院」を設立。その後「英進館」と改称。英進館取締役会長のほか、現在公職として国際教育学会(ISE)理事、福岡商工会議所議員、公益社団法人全国学習塾協会相談役等。2018年に紺綬褒章受章。ゆとり教育抜本見直しに命をかけた20年の記事一覧
・ゆとり教育抜本見直しに命をかけた20年(3)(2019年08月08日)
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・ゆとり教育抜本見直しに命をかけた20年(1)(2019年07月25日)関連記事
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