2024年12月28日( 土 )

電撃的なヤフーによるZOZO買収の主役 孫正義が範を垂れた「これがM&Aだ!」(前)

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 電撃的なヤフーによるZOZO買収の主役は、ヤフーの親会社であるソフトバンクグループの孫正義会長兼社長だった。アスクルの買収で不始末を仕出かしたヤフーに「これぞM&Aだ!」と極意を伝授したのである。

孫氏がゲストとして登壇

 ソフトバンクグループ(SBG)の傘下のヤフーは9月12日、衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するZOZOを子会社化すると発表した。ZOZOに対してTOB(株式公開買い付け)を実施し、過半数の株式取得を目指す。

 TOB開始は10月上旬を予定。1株あたり2,620円で、発行済み株式の50.1%を上限に買い付ける。総額は4,007億円になる見込み。

 ZOZOの創業者の前沢友作氏は発行済みの株式の約37%をもつが、約30%を売却し、経営権を手放す。前沢氏は同日付でZOZO社長を退任し、後任に沢田宏太郎取締役が就いた。

 10月に社名を「Zホールディングス」に変更するヤフーの川邊健太郎社長とZOZOの前沢友作ファウンダー、沢田宏太郎新社長兼CEO(最高経営責任者)の共同記者会見に、孫正義SBG会長兼社長がゲストとして登壇。ZOZOのTシャツを着た孫氏と前沢氏の2ショットが翌日の紙面を飾った。主役は孫氏である。

「ヤフーとZOZOと提携してやってみるか」

 孫氏と前沢氏の会見模様は、すぐにネットで取り上げられた。孫氏はこう語っている。

 前沢君に前から親しくて。もう本当に経営者としても、1人の男としても、僕の大好きな前沢君が「孫さん、ちょっと話があるんだ」ということで「相談に乗ってください」と。

 「なに?」って聞いたら、「新しい人生をもう一度過ごしたいんだ」と、こういう話でありました。「えっ、どういうこと?」って聞いたら「月に行くんだ!」と。「えっ?」と。「月に行くのは雑誌で読んで知ってるけど、どういうこと?」って聞いたら、「もうZOZO社長は引退して、そして新しい人生を過ごしたいんだ」ということでありました。

 「え、じゃ会社はどうすんの?」「そこで相談なんです」ということになったんですけれども。いろいろ話を聞いているうちに、「そうか、じゃあヤフーとZOZOでなにか提携してやってみるかね」という話を一緒にしたら、「それがいい」と。「ぜひそういうことで、ヤフーとZOZOと一緒になって力を合わせて、これから第2の飛躍をするようにやっていきたい」

「そう、わかった」と。

 孫氏は前沢氏をヤフーの川邊健太郎社長に紹介したという。

ヤフーの手法に異を唱えた孫氏が模範を見せた

 孫氏の発言は、側にいる川邊氏に聞かせたかったものであろう。

 ヤフーは子会社のアスクルと対立の末、8月にアスクル創業社長・岩田彰一郎氏と岩田社長を支持したという理由で、3人の独立社外取締役の解任に踏み切った。独立社外取締役の最大の責務は、支配的な大株主から少数株主の利益を守ることにある。気に入らないからと、そのクビを大株主自身が切るのはタブー中のタブー。これが、大問題に発展した。

 ことの重大さに、親会社のSBGは孫氏のコメントを発表した。

 「孫個人は投資先との同志的な結合を何よりも重視するため、今回のような手段を講じる事について反対の意見を持っておりますが、このたびの件はヤフーの案件であり、ヤフー執行部が意思決定したものです」

 さらに、決算説明会で、この問題について質問されると、孫氏は「私が裏で引いたとか、忖度させた覚えはない」と怒りを爆発させた。

 ヤフーの大チョンボに、M&A(合併と買収)は、「相手先との友好な関係があってこそうまくいく」と、ZOZOの買収をまとめた孫氏は範を見せたのである。

(つづく)
【森村 和男】

(後)

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