【飯塚事件のその後】再審請求10年の飯塚事件~「疑惑の死刑」責任者たちの今(3)
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誰もが出世し、巨額の報酬を得ていた
「死刑事件審査結果(執行相当)」に押印していた5人のうち、小津氏と大野氏も検事総長まで昇り詰めている。この2人も東大法学部出身。小津氏は2012年7月に検事総長に就任し、2014年7月に辞職するまでほぼ丸2年在任した。大野氏は、小津氏の後任として検事総長に就任。2年余り在任し、2016年9月に勇退している。そして2人は辞職後、誰もが社名を知るような超有名企業に天下っていた。
まず、小津氏は現在、弁護士に転身し、トヨタ自動車、三井物産、資生堂の3社で社外監査役を務める。
3社が直近の通期の有価証券報告書で公表している社外監査役(もしくは社外役員)への支給報酬の総額を社外監査役(もしくは社外役員)の人数で割る方法で試算すると、小津氏はトヨタから年に1,350万円、三井物産から年に2,000万円、資生堂から年に1,100万円の報酬を得ていると推定される。
一方、大野氏も現在は弁護士となり、伊藤忠商事と小松製作所(コマツ)で社外監査役、イオンで社外取締役を務める。
大野氏が3社から得ている報酬を小津氏と同様の方法で試算すると、伊藤忠から年に約1,433万円(千円単位以下は四捨五入)、コマツから年に約1,733万円(前同)、イオンから年に1,250万円だと推定される。
さらに大野氏は「四大法律事務所」の1つで、国内外で大規模な業務を手がける森・濱田松本法律事務所に客員弁護士として所属しており、同事務所の仕事でも相当な収入があると推測される。
では、小津氏と大野氏は久間氏の死刑執行に間違いはなかったと今も思っているのか。
2人にも特定記録郵便で取材を申し込んだうえ、回答をもらうために事務所に電話した。しかし小津氏の事務所はいつも留守番電話になっており、入稿締め切りまでに電話は一度もつながらなかった。大野氏のほうは、女性秘書から「9月いっぱいは海外に出張しています」と告げられ、入稿締め切りまでに回答を得られなかった。
一方「死刑事件審査結果(執行相当)」に押印した残りの2人、甲斐氏と中川氏は今も現役の検察官だ。この2人も東大法学部出身で、やはり相当な出世をしている。
まず、甲斐氏は久間氏の死刑執行を決裁後、最高検監察指導部長や東京地検検事正を歴任し、現在は高松高検検事長だ。法務・検察では、最高位の検事総長につぐポストは東京高検検事長で、その次が最高検の次長検事と東京高検以外の7高検(札幌、仙台、名古屋、大阪、広島、高松、福岡)の検事長だから、最高位に迫る位置まで出世したわけだ。
甲斐氏は現在59歳なので、検事総長以外の検察官の定年である63歳までにもう1つ別の高検で検事長を務める公算が大きい。給与月額表によると、東京高検以外の高検の検事長の年収は2,405万3,738円だ。
一方、中川氏は久間氏の死刑執行を決裁後、高知地検検事正や静岡地検検事正、最高検公安部長を歴任し、現在は公安調査庁長官だ。給与月額表には、公安調査庁長官の年収は記載されていないが、中川氏はすでに2つの地検で検事正を務めているので、次長検事と東京高検以外の高検検事長につぐランクである「検事一号」の年収を得ていると推測される。給与月額表によると、その金額は2,357万2,262円だ。
歴代の公安調査庁長官の大半は、次の人事異動で高検の検事長に出世しており、中川氏もそうなる可能性が高い。現在61歳なので、検察官生活の最後のポストが検事長になりそうだ。
甲斐氏と中川氏にも久間氏の死刑執行を決裁したことに関する現在の考えを聞くため、特定記録郵便で取材を申し込んだうえ、電話した。
しかし、甲斐氏は、高松高検企画調査課の男性職員が「『今回の取材は、個別事件に関することなので、お受けできない』ということです」と回答を拒否。中川氏のほうも、公安調査庁渉外広報調整室の女性職員が「個別の案件についてはお答えできかねるので、取材についてもお断りさせていただきたいと思います」と同様の理由で回答を拒んできた。
(つづく)
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