疾病リスク低減表示拡大と公正競争規約はトクホの救世主となるのか?(4)
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ここで大きな疑問が残る。確かに保健機能食品のなかでトクホ、機能性表示食品、そして栄養機能食品という3つの制度が共存しており、今回、トクホと機能性表示食品の棲み分けが大きな課題となっている。
しかし、何も別々に勝手に検討するというわけではなく、あくまでも日本の「食品の機能性を表示できる制度」のなかで、トクホと機能性表示食品のそれぞれの役割を明確にして、それぞれの制度が相加的、相乗的に機能しながら国民の健康維持増進に寄与するように考えていくべきではないだろうか。
ところが、機能性表示食品制度における広告規制の問題は、たびたび規制改革推進会議で議題に上がり、情報は業界で都度把握されていた一方で、日健栄協が公表した「トクホの公正競争規約」に関しては、関係者が耳にしたのは公表日の前日であり、日健栄協で極秘に進められていたことは想像に難くない。
つまり、トクホの公正競争規約に関しては日健栄協がほかの業界団体とは一線を画して単独で行うということを明確に示したということであり、今後の準備委員会を含めて関連企業がどこまで協力していくのかは不透明だ。
とくに、トクホの取得件数の減少と機能性表示食品の受理件数の増加が明確に示すように、業界全体の流れとしては機能性表示食品に傾いていることは紛れもない事実である。資金と時間のかかる当該商品を使った機能性と安全性の臨床試験の負担を考えれば、商理論からも至極当然の流れである。
さらに、たとえば豊洲市場で「魚の目利き」を行うことが消費者にとっては非常に困難であり仲買人のアドバイスを介して購入しているように、保健機能食品の機能性や安全性、エビデンスの内容や強弱の説明など、消費者が商品選択をする際の専門家(医師、薬剤師、管理栄養士、アドバイザリースタッフなど)の活用もこのタイミングで十分検討すべきであろう。とくにサプリメントを消費者に説明する専門家として、厚生労働省の通達によって誕生した「アドバイザリースタッフ」制度は、その後資格を産んだ団体の消極的な動きも相まって、市場ではほとんど活用されないまま、およそ20年の月日が流れている。
また、そもそも食品の科学的根拠としてのエビデンスの質やレベルに関しても、過去の歴史のなかできちんと議論がなされたことはなかった。トクホ制度をはじめとする保健機能食品制度は、エビデンスも医薬品に準じたかたちで検討されてきたが、単一成分の尖った効果を期待する医薬品と含有成分の総合的でマイルドな機能を期待する食品では、その科学的根拠自体が似て非なるものだ。当然、科学的根拠の解釈も違ってしかるべきであると考える。今回のトクホと機能性表示食品をめぐるさまざまな動きは、保健機能食品全体、さらにはいわゆる健康食品も含めた健康食品産業全体の問題点を炙り出す、絶好の機会ではないだろうか。
(了)
【取材・文・構成:継田 治生】関連キーワード
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