殺人マンション裁判の顛末~毀損された強度・資産価値を適正な状態に戻せ!(8)
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久留米の欠陥マンションにおける施工の瑕疵
――久留米市の欠陥マンションの話に戻ります。設計の瑕疵は 先程 説明していただいた内容ですが、施工の瑕疵は どのようなものだったのでしょうか?
仲盛 施工ミスとしては、「鉄筋のかぶり厚さが建築基準法施行令の基準をまったく満たしていない」「鉄筋が露出している箇所もあり錆が発生している」「図面に明記された梁が30カ所も施工されていない」「コンクリートのなかに多くの異物が混入されている」「コンクリートの剥落」などが挙げられます。
このマンションの実際の施工を担当したのは、K建設の下請業者であった地場の建設会社のK工務店でしたが、マンションの工事契約は建築主とK建設との間で締結されているので、施工に関して法的な責任を負うのは元請業者であるK建設であることは間違いありません。
図面に明記された梁が30カ所も施工されていないことについて、K建設は、梁がなくても問題ないと開き直っていますが、この梁は外部階段と建物本体をつなぐ重要な梁なのです。そもそも、図面に明記されている梁を施工しないということは 言語道断です。このマンションの施工に関わった人たちは 幼児並みの理解力しか有していなかったと思わざるを得ません。
建築は、建築確認済証が交付された設計図書に基づいて 施工を進めていきます。建設途中で 変更が必要(たとえば、材料の変更・構造部材のサイズ変更・杭の種類や長さ等の変更など)となった場合、建築確認機関に「変更届」「軽微変更届」などを提出し 承認を得なければなりません。K建設が30カ所もの重要な梁を施工しなかったことは、手続き上も誤っています。私は 建築に携わる技術者の1人として、「設計図書に明記された重要な梁を施工しない」という著しい手抜き工事を行っていながら 「梁を施工していなくても問題ない」と開き直るK建設の行為を許すことができません。考えられないレベルの下請工事業者の施工技術の低さ
――下請業者のK工務店の施工技術というのは それほど低いレベルだったのでしょうか?
下請のK工務店は 昭和35年創業の久留米市内でも屈指の老舗ゼネコンであり、公共工事も含め これまで施工に関わった物件の数は 相当な数に上ります。このマンションのずさんな施工に見られるような、非常にレベルの低い施工技術しか持ち合わせていないのであれば、このマンション以外の工事においても、ずさんな工事が行われてきたことは容易に想像できます。 会社としての歴史が長いだけに、施工の欠陥を抱えた建物が相当な数存在していると考えられ、大地震が発生した場合、これらの建物内部の人や近隣の住民の安全を確保できるのか、甚だ疑問を感じます。
K建設による下請業者の管理が不十分であったことは間違いありませんが、K工務店の施工技術が、ここまで低レベルであるとはK建設も想像もできなかったのではないでしょうか。この点においては、K建設が気の毒な面もあります。久留米市の老舗ゼネコンが素人以下のずさんな工事を行うなどとは想像できるはずもなく、K建設に一義的な責任があるものの、下請として起用したK工務店が、異常なほど低い施工能力しか有していなかったことは、K建設にとって不運だったといえなくもありません。
元請のK建設が 下請のK工務店に損害賠償を請求(後に和解)していたことからも、K工務店の施工が如何に酷かったのかということがわかります。(つづく)
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