2024年11月14日( 木 )

全国・業界初となる試みに挑戦 中古キュービクルの買取事業(中)

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業界に激震を起こしたキュービクルの無償提供

 北海道帯広市で創業し、現在東京都中央区に本社を構える(株)総合電商は、キュービクルにかかる初期費用を負担し、無償での提供を行ったパイオニア的企業だ。創業者であり、現代表取締役社長・中保人氏は、以前の勤務先でキュービクルの有料販売を行っていたが、他企業の事業参入により価格競争が激化した事態を受け、会社の業績は低下。これを受けキュービクルを無償提供し、契約金額の差額を売上とする電気小売業を会社に提案するも通らず、独立を決意。同社は05年6月に創業、20年に15周年を迎える。第1期の4,600万円の売上から徐々に業績・エリアを拡大し、現在では帯広支店、福岡支店など全国8つの拠点(営業所を含む)で約50億円を売り上げている。

 創業の発端でもあったキュービクルの無償提供は業界に衝撃を与えた。中氏は「お客さまの利益を前提とした事業」を創業時から最優先して取り組み、本来所有者が負担する保管管理費用も同社が負担した。投資リスクなしでランニングコストの削減が可能となり、数多くの企業が採用した。当然、設置する条件があり、すべての企業にできるわけではない。中氏によれば「電気料金は地域によってさまざまで、利用する企業によってもプランが合う、合わないがある。見積もりの段階でメリットがあまりない場合はお断りする」と徹底した顧客主義の姿勢の経営をしてきた。同社はキュービクルの無償提供のほかにLED照明の販売や高圧受電設備など改修工事などを手がけてきた。そして、同社は新たな事業を開始した。

さまざまなかたちで配置されているキュービクル

総合電商の新たなる挑戦

 経済産業省が発表した18年度末自家用電気工作物設置件数全国計によると対象となるキュービクルの設置台数は85万3,728台。小売自由化と競合他社の新規参入によってキュービクルによる固定費コストの削減は多くの企業が取り入れるようになったが、キュービクルという資産を自社所有することで各企業には3つの課題が生まれる。(1)資産として固定資産税がかかる、(2)定期的な保安管理費がかかる、(3)経年劣化による修理費がかかるの3点だ。とくに保安管理費においては容量や規模によって費用はさまざまで、一般的にコンビニエンスストアなどの規模で月8,000円~1万円、大きな工場やショッピングセンターとなってくると月5~6万円にのぼる。

 キュービクルは【図1】にあるようにそれぞれの機器に更新推奨時期が定められており、おおよそ15年で更新が必要となってくる。キュービクルの更新・修理は相場として約200~250万円の費用が必要で、つまり導入時と同様の金額が必要となってくる。もちろん、新たに導入しても電気料金の差額から負担分を回収することは可能となるが、設備や施設を導入後も10年以上利用するとも限らない。大規模な工場などはよほどのことがない限り使用期間は長期にわたるが、コンビニエンスストアなどの小規模の店舗などは先の見通しが立たない場合もある。

【図1】高圧受電設備の関連機器と耐用年数の目安

 そこで同社は新事業として中古キュービクルの買取事業を開始した。同社が既存のキュービクルを買い取ることで新たな投資をせずにキュービクル活用による電気料金カットの恩恵を受けることができるシステムだ。同社がキュービクルを買い取ることによって、企業は(1)通常、利益を生むことのない資産から売却益を生み出せる、(2)修理費用がなくなる、(3)保守管理費用がなくなる、(4)電気料金の見直しが可能となる。このビジネスモデルは【図2】のスキームによって行われる。

【図2】ビジネスモデルスキーム
※クリックで拡大

(つづく)

【麓 由哉】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:中 保人
所在地:東京都中央区日本橋茅場町1-3-9
設 立:2005年6月
資本金:2,500万円
売上高:(19/5)49億3,334万円

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