日本の政治の何が問題か(5)
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拓殖大学大学院地方政治行政研究科 特任教授 濱口 和久 氏
民主主義は万能なのか
日本では殺人などの犯罪を起こさない限り警察に逮捕されることはない。政権批判を繰り返しても拘束されることはない言論の自由が認められている民主主義国家である。だからといって、安倍首相の生首のマスクをブルドーザーで踏み潰すようなデモまで許すべきなのだろうか。同じことを独裁体制である中国や北朝鮮で行ったら、間違いなく逮捕・拘束され監獄にぶち込まれることになる。北朝鮮では処刑される場合もあるだろう。
日本では少数意見を大事にすべきだとする世論がたびたび起こるが、少数意見が正論であるとは限らない。多数意見が正論であるとも限らない。このような場合、独裁体制であれば、為政者がトップダウンで決めるが、民主主義国家では、結論が決まっている場合でも、すぐには結論を出さずに時間をかけて審議することになる。民主主義には時間とコストが付き物だ。民主主義を生かすも殺すも、私たち日本人の政治に対する向き合い方次第なのである。
一方で、国会の現場や地方自治体の現場で働いた経験から導き出した私の見解は、国会や地方議会の議員は専門性に乏しく、能力のない議員が多過ぎる。それに加えて、世襲議員が国会も地方議会も多過ぎる。最初から否決されることがわかっているにもかかわらず、国会の会期末になると、野党は否決されることを承知の上で、「内閣不信任案」や「問責決議案」を毎回提出し、徹夜国会や時間稼ぎの長時間の討論を繰り返している。このような行動は国民の政治不信を増幅させるだけだ。小学校の学級会よりもレベルが低い。
最後に、私自身は民主主義を絶対のものとは考えていない。中国や北朝鮮のような独裁体制は論外であるが、ご批判や誤解を恐れずに申し上げれば、賢者による「善政」を行う独裁体制のほうが、民主主義よりもはるかにスムーズな政治を実現できるのではないかと時々考えることがある。
(了)
<プロフィール>
濱口 和久(はまぐち・かずひさ)
1968年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業後、防衛庁陸上自衛隊、元首相秘書、日本政策研究センター研究員、栃木市首席政策監(防災・危機管理担当兼務)、日本防災士機構理事などを歴任。現職は拓殖大学大学院地方政治行政研究科特任教授・同大学防災教育研究センター長、(一財)防災教育推進協会常務理事・事務局長。主な著書に『日本版 民間防衛』(青林堂)共著、『戦国の城と59人の姫たち』(並木書房)、『日本の命運 歴史に学ぶ40の危機管理』(育鵬社)、『探訪 日本の名城(下) 戦国武将と出会う旅』(青林堂)、『探訪 日本の名城(上) 戦国武将と出会う旅』(青林堂)、『だれが日本の領土を守るのか?』(たちばな出版)、『思城居(おもしろい) 男はなぜ城を築くのか』(東京コラボ)などがある。関連記事
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