【凡学一生のやさしい法律学】憲法改正について(8)
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安倍晋三総理大臣は自衛隊の存在が常に憲法違反だと野党勢力によって非難されていることは、自衛隊職員にとって、いわれなき苦痛であり、自衛隊の存在を憲法違反と非難されないように条文を改正したいという。
まず、野党勢力による非難によって、自衛隊職員がいわれなき苦痛を負担している、という事実認定そのものに重大な疑義があります。
現在の自衛隊職員は、自衛隊の現状を理解して自衛隊員に「応募就職」しており、「徴兵」ではありません。つまり、自主的応募者である以上、自衛隊の存在が憲法違反の存在であるとの非難のなかにある国家機関であるとの認識をもつはずもなく、広く国民から、現状の自衛隊のあり方は受け入れられているとの認識で就職したものと認定するのが相当です。ありもしない自衛隊職員の苦痛を理由に憲法改正を主張するもので、とうてい容認できないものです。
なお、憲法学上の理論で、「憲法の変遷」があります。それは時代の変化とともに、憲法条文の規定の意味を時代の変化に合わせて理解・解釈するものです。民法上にも当初は違法な占拠・占有であっても、一定の時間の経過とともに平穏な外形を是認する「取得時効」があります。現状を合法的に理解することのほうが、最終的に法の存在理由に合致するとする法原理です。
つまり、現状の自衛隊の存在を国民の大多数が憲法違反と認識していない以上、憲法を改正する必要はまったくないからです。安倍晋三総理大臣のまずやるべきことは、現状の自衛隊の存在を多数の国民が、憲法違反と考えているかどうかの確認です。多数の国民が憲法違反ではないと考えていれば、もはや憲法改正は不要です。
安倍晋三は政治家として憲法改正論者を自認していますが、日本の政治家で自分の政治信条を貫き通した例はありません。すべて、最後の最後には自分の利益を守る行動をします。つまり安倍晋三の改憲主張は、一定の国会議員の集団を形成するためのスローガン・旗印・踏絵にすぎません。
いざ憲法改正となると、さまざまな現実の障害が発生しますが、それが自分の利害と大きく関われば当然、そこまで踏み込みません。それは安倍晋三が自分の内閣の最重要課題は「拉致問題」の解決だと、組閣当時から叫び続けて、結局、長い総理大臣就任期間に何1つ成果を上げなかったことからも明白です。自分の現在の地位を脅かすようなリスクは絶対に回避します。「から約束」「から公約」を平気で公言できる政治家だからです。
よく考えれば、安倍晋三の主張どおりに9条を改正しても、当然ながら、安倍晋三個人には何の利益もありません。せいぜい自衛隊職員から絶大な信頼を勝ち得ることくらいです。
しかし、さらに総理大臣を続けたいとの野心がない限り、自衛隊職員の票など不要です。そうであれば、安倍晋三が世間の大きな非難を覚悟して憲法改正に突き進むことはないと見るのが相当です。結局、国民は安倍晋三の政治戦略に振り回されただけということになります。
(つづく)
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