2024年12月05日( 木 )

サッカーのみならず企業経営でも発揮される軽快かつ統制がとれた組織力

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サッカークラブの運営
アビスパ福岡(株)

主要株主は地場優良企業

 現在、J2リーグに所属するアビスパ福岡は1996年にJリーグに加盟。当初は福岡ブルックスと名乗っていたが、Jリーグ加盟時に現在のアビスパ福岡へと改名している。“Avispa”は、スペイン語で熊ん蜂を意味する。熊ん蜂がもつ集団的行動や俊敏性を象徴としたところからチーム名が生まれた。昨シーズンは16位でリーグ戦を終えたが、もちろんこれがアビスパ福岡の実力でないことは多くのサポーターが認めるところだろう。

 そのアビスパ福岡の運営母体がアビスパ福岡㈱である。福岡市を始め、コカ・コーラ ボトラーズジャパン、九州電力、西日本新聞社、九電工、ふくや、福岡銀行、西日本シティ銀行といった錚々たる企業が主要株主として顔を並べ、その他数多くの企業・団体のスポンサード、後援会法人、ソシオ会員が強力に支援する。2014年には増資を行い、福岡発祥のコンピューター企業であるシステムソフトが筆頭株主になっている。

 そして15年に発足したアビスパ福岡の応援団体AGA(アビスパ・グローバル・アソシエイツ、榎本一彦会長)は今年会員数3万6,000人を超えた。理事には地元の経済界で活躍するリーダーなどが名を連ね、毎月の会合で意見交換を行うほか、会員向けの無料メールマガジン「AGA通信」でクラブ活動の情報発信するなど、アビスパの輪は年々広がりを見せている。

 地域の人々に誇りと活力を

 アビスパ福岡の特色は、地域と深く結びついていることだ。ホームタウンは福岡市だが17年にはホームスタジアムがあるレベルファイブスタジアムの近郊の宇美町、志免町と、さらには19年に篠栗町、粕屋町、須恵町、東峰村、新宮町、古賀町の福岡県内8市町村と「フレンドリータウン協定」を締結しており、締結先は今後も順次増える予定だという。

 自治体とともに地域活性化とスポーツ文化の振興を目指した活動を行うことを協定するもので、同社でもさまざまなプログラムを用意している。地域や学校を訪問して行うサッカー教室、介護予防事業、選手の地域訪問、ホームゲームへの招待、また子ども・大人・シニアの3世代がスポーツを通じて交流することを目的とした「健康づくり地域交流フェスタ」は他クラブでも例がなく、県内の14市町村で開催している人気のプログラムだ。

 その他、県内各地で子どもから大人を対象にしたサッカースクールや、チアリーダースクールなども展開しており、幼稚園・小学校の校庭・園庭の芝生化を推進するアビ芝プロジェクト、学校の体育の授業や中学校の部活動、地域のサッカースクールで巡回指導を行うアビースクール、ブラインドサッカーなど、その活動は多岐にわたる。

 活動は年間1,500回以上開催し、参加人数は延べ3万人を超え、各方面で裾野を広げている。

子どもたちに夢と感動を与える
子どもたちに夢と感動を与える

2020シーズンに向けて

代表取締役社長 川森 敬史 氏
代表取締役社長 川森 敬史 氏

 2020シーズンは昨年までJ2水戸で指揮をとっていた長谷部茂利氏を監督に招聘。5年ぶりのJ1昇格に向け新たなスタートを切ったアビスパ福岡だが、今後クラブが発信する昇格に向けたメッセージに注目したいところだ。クラブが掲げる「感動と勝ちにこだわる」という変わらぬスローガンは、「アビスパ福岡を応援している皆さまが、アビスパ福岡の戦い方や取り組みから、このスローガンを連想していただける時期がきたときに、市民クラブとしてクラブが成長した1つの証になるのではないか」と語る川森敬司氏。そして来シーズンも「人の心を揺さぶるような熱いプレーで、得点をして勝つことにこだわる」という思いを込めていると語る。

 そして、「長いシーズンでは思い通りにならないこともたくさんありますが、サポーターの皆さまに喜んでいただくには、やはり勝つこと。プロは結果がすべてです。そのためにチームとアビスパ福岡の社員が一丸となって戦い、福岡を盛り上げていけたらと思っています」と、力強く語る。まずは公式試合に足を運んでみよう。それがアビスパ福岡の企業としての底力を目の当たりにできるいちばんの機会となる。

 また、現在トップチームからアカデミーの選手たちまでがプレースタイルを共有する取り組みを始めているという。ゆくゆくは次世代の選手がアビスパのメソッドを実践すればトップチームでレギュラーとして活躍できるチャンスが広がる。「この一連の流れをつくり上げることで、サッカーを志す若者のなかに“アビスパが表現するサッカー・スタイルAvispa Styleが好きだ”という人たちが増えていく」と語る川森氏。その眼差しの先にあるのは脈々と受け継がれる「アビスパDNA」の創造である。

若い力が生きる職場の魅力

 アビスパ福岡のプレースタイルは「軽快で統制のとれた多様なグループ攻撃」だが、法人としてのアビスパ福岡の経営スタイルもそれとまったく同じだ。チームの活躍とともに、これからますます地域に根付いた企業として発展していくことは間違いない。

 日本全体で人口減少に歯止めがかからないなか、福岡は右肩上がりで人口が増加するなど注目を集める地方都市だ。街が無限のポテンシャルを秘めるなか、都市の発展に比例して大きな可能性をもつ企業がアビスパ福岡である。まずはJ1に昇格し、さらに大きな存在になることが第一条件だが、選手たちの力だけでそれはできない。サポーターの応援しかり、株主や後援会、AGA、ソシオ会員の支援しかり、そしてもう1つ忘れてはならないのがアビスパ福岡を動かす社員たちの力だ。試合のようにメディアに取り上げられる機会はないが、さまざまな活動を推進する彼らの情熱こそが、チームを動かし、街に活気を漲らせる原動力となる。

 また、19年11月、福岡市IoTコンソーシアムと日本エアロスペース㈱と連携し、生体認証技術を使った次世代スタジアム体験実証実験が、全国初の取り組みとして注目を集めている。この実証実験を皮切りに、今後「コミュニケーション関連テーマ」「スタジアム満足度関連テーマ」の2つのテーマを設定し、企業・個人からアイデアを募る提案型のワーキングショップの立ち上げ、運営にも参画する予定だ。

 職場という視点で捉えたとき、これほど夢のある企業はないだろう。若い力をプロスポーツ、そして地域の発展に注ぎ込むことができるのが、アビスパ福岡の魅力だ。

<COMPANY INFORMATION>

代 表:川森 敬史
所在地:福岡市東区香椎浜ふ頭1-2-17 
設 立:1994年9月
資本金:1億7,611万円
TEL:092-674-3020
URL:https://www.avispa.co.jp

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