出資を断り続けたヤマダは、なぜ大塚家具を子会社にするのか~ニトリとの全面戦争が勃発か!(前)
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大塚家具は資金破綻が秒読みに入っていた。その土壇場で、家電量販店のヤマダ電機が、救済の手を差し伸べた。ヤマダは43億7,400万円出資し、大塚家具を子会社化する。ヤマダの傘下に入ることで、大塚家具は経営危機を脱した。出資を断り続けてきたヤマダは、なぜ大塚家具の買収に踏み切ったのか。
一時は中国資本に身売り
大塚家具の再建問題は迷走を続けた。事態が動いたのは、今年に入ってから。
大塚家具は2月までに、中国で「イージーホーム」のブランドで家具店を展開する居然之家(北京市)、日中間の越境EC(電子商取引)の運営を手がけるハイラインズ(東京・渋谷)と業務提携を結んだ。米投資ファンドと合わせて合計76億円の資本増強策を実施すると公表した。
3月4日、久美子社長とハイラインズの陳海波社長は日本外国特派員協会(東京)で記者会見を開いた。
久美子社長は「守りから攻めに打って出る体制が整った。日本から一歩、歩み出す」と大見得を切った。陳社長は「(ハイラインズの)役員を大塚家具に派遣する。中国の富裕層の取り込みを目指す」と提携の狙いを語った。
76億円増資後の資本構成は、ハイラインズが組成したファンドが大株主となる。中国資本への身売りである。
3月25日に開かれた株主総会で、”新しいオーナー”となる陳氏の主導で大塚家具の経営再建が図られることになり、人事も刷新された。
だが、新体制は出足からつまずいた。ハイラインズが率いるファンドは中国当局の認可を得られないとの理由で、直前になって資金の払い込みをキャンセルした。実際に調達できたのは26億円にとどまった。中国側がキャンセルしたのには、別の理由がある。
父・勝久氏との「和解」が出資の条件
陳海波氏は朝日新聞(2月23日付朝刊)のインタビューで、「父娘和解」を提案した。それは、支援者というより、新オーナーとしての発言だった。
陳氏は、創業家が対立したままでは大塚家具のブランド価値を毀損するとの考えを示し、「どちらも高級家具が売りで、客層も同じ。家族で客を奪い合っても仕方がない」と指摘。早期に父娘の和解を実現させ、勝久氏の支援を受けながら再建を加速させたい考えを示した。「大塚家具の強みは(勝久氏が築いた)コンサルティング営業にある。そのノウハウを生かして海外に販路を広げるべきだ」とも述べた。
人事にも言及した。
久美子氏の処遇については「赤字が継続すれば続投できなくなる。今年は最低でもトントンにする必要がある」(中略)大塚久美子社長の続投は当面認める方針だが、他の取締役については、「3年間の実績を見れば、アドバイザーとして機能していない」
陳氏が大塚家具の再建に絶対に必要と考えているのが、久美子氏の父、勝久氏の経営力である。それが「父娘和解」の提案になった。勝久氏を大塚家具に戻すために、勝久氏の追放を支持した取締役たちの一掃を求めた。
陳氏は、勝久氏が復帰する地ならしをした後、ファンドが保有する大塚家具の株を居然之家に譲渡。大塚家具を居然之家の子会社にするシナリオだ。
「父娘和解」の提案を受け、久美子氏は4月、自ら発起人となって業界団体「スローファニチャーの会」を設立。勝久氏が会長を務める家具販売の匠大塚の新しい店を訪れ、約4年ぶりに面会して名誉会長への就任を要請した。
勝久氏から「名誉会長就任を見送る」旨の手紙が5月10日に届いた。勝久氏が経営に復帰することが、中国側が出資に応じる条件である。勝久氏が復帰しないのであれば、出資する意味はない。これが出資をキャンセルした理由だ。
陳氏ら中国側が手を引き、大塚家具は破綻寸前に追い込まれた。そんな苦境のなか、救済に乗り出したのがヤマダ電機である。
(つづく)
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