2024年11月24日( 日 )

出資を断り続けたヤマダは、なぜ大塚家具を子会社にするのか~ニトリとの全面戦争が勃発か!(後)

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「社長の任にあらず」と息子を首にする非情の人

 山田昇氏は、家電量販店業界の一匹狼である。評価する人も、そうでない人も、山田氏の性格についての観察は一致している。「彼の辞書には、弱気はない。とにかく強気。すこぶる好戦的。怒り出したら手がつけられず、扱いにくい人物」(業界関係者)。これが定説になっている。

 山田氏は事業がすべて。肉親の情に惑わされることは微塵もない。

 ヤマダは2016年4月、山田昇社長兼CEOが会長に就き、桑野光正氏が社長に昇格した。社長交代の会見は異様なものだった。山田氏には、将来の社長候補と目されている息子の山田傑(まさる)氏が取締役にいた。

 山田氏は会見の席で、「息子は社長の任にあらず」として、息子が社長を継ぐことはないと言及した。父に引導を渡された傑氏は16年6月末、ひっそりと取締役を退任した。

 事業ファーストの山田氏は、息子も切り捨てる「非情の人」である。

ニトリに対抗するため大塚家具を買収した

 それでは、山田昇氏が“死に体”同然の大塚家具を買収したのはなぜか。

 ズバリ、家具最大手ニトリホールディングス(HD)に対抗するためである。

 ヤマダは17年6月30日、群馬県前橋市に新業態店の第1号店「インテリアリフォームYAMADA前橋店」をオープンした。ホームファッションや家具に特化した新業態店は、山田氏が非家電事業の柱に据えることを意図しているものである。

 18年6月に開かれたヤマダの株主総会で、桑野光正氏から三嶋恒夫氏に社長が交代した。事実上の更迭である。三嶋氏は北陸地盤の家電量販店、サンキュー(福井市)の社長などを経て、住宅リフォーム事業の実績を買われて、17年にヤマダ入りし、1年後に社長に大抜擢された。山田氏が三嶋氏を社長に起用したのは、新業態店に勝負を賭けるためである。

 家具雑貨はニトリホールデイングス(HD)の本丸だ。ヤマダの新業態店は、ニトリの牙城である家具雑貨の分野に踏み込むことを意味した。

 一方、似鳥昭雄会長兼CEOが率いるニトリHDは17年6月、東京・渋谷に「ニトリ渋谷公園通り店」をオープンした。同店は地上9階建てのビルを借り、店舗面積は約5000平方mと都心最大だ。掃除機や炊飯器など生活家電も扱う。家電はヤマダの領域だ。

 ニトリは17年5月、中古住宅販売のカチタス(群馬県桐生市)に出資した。カチタスは買い取った戸建の中古住宅をリフォームし、再び販売する中古住宅の再生事業を手がける。

 リフォーム事業で先行しているのがヤマダだ。注文住宅のエス・バイ・エル(現・ヤマダホームズ)や住宅機器のハウステックを買収するなど、住宅分野を拡大している。

ヤマダとニトリは業態が近づいてきた

 家電の王者・ヤマダ電機と家具の帝王・ニトリHDは、業態が近づいてきた。そして、ヤマダは大塚家具を買収し、ニトリの総本山である家具の分野で真っ向勝負を挑む。

 ヤマダの20年3月期の連結決算は、売上高が1兆6,740億円(前期比5%増)、営業利益は426億円(同1.5倍)、純利益は267億円(同1.8倍)の見込み。東京五輪に向けて高価格の4Kテレビが好調だが、それでも売上高が2兆円を超えていたことを考えると、規模の縮小はっきりしいている。

 一方、ニトリHDの2020年2月期は、売上高は6,430億円(前期比6%増)、営業利益は1,040億円(同3%増)、純利益は715億円(同5%増)の見込み。売上高営業利益率16.4%と抜群の収益力を誇る。

 山田昇氏と似鳥昭雄氏。カリスマ創業者が率いる両社による家具の全面戦争は、今後の最大の見どころだ。

(了)
【森村 和男】

(中)

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