【政界インサイダー】総理大臣の犯罪は見ないふりの東京地検特捜部~巨悪を逃がして忖度捜査でアリバイづくり
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■「小物すぎる」秋元司IR疑惑の違和感
読売新聞は12月17日、「IR参入へ資金移動か 東京地検、秋元議員元秘書から聴収」と銘打った一面記事を出した。データ・マックスがスクープを飛ばした企業主導型保育事業への関与を含め、数々の疑惑のただ中にある秋元司衆院議員(自民党・二階派)がついに塀の内側に落ちるかと、注目を集めている。
しかし、天下の東京地検特捜部が動く割には、いかに秋元氏が副大臣経験者とはいえ小物感が漂うのも確かだ。前川喜平・元事務次官の出会い系バー報道をするなど“安倍政権(官邸)御用新聞”とも揶揄される読売新聞が先んじて報じたことから、「読売が太いパイプを有する官邸筋からのリークではないか」「総理主催『桜を見る会』から“秋元事件”に関心を向けさせる世論誘導(工作)ではないか」とも見られている。
菅義偉官房長官直系の鈴木直道知事がカジノ誘致を表明するのか否かを注目してきた北海道ウォッチャーも、同様の見立てをしている。
「先月末(11月29日)、鈴木直道知事の北海道カジノ誘致断念表明は、『今回の東京地検特捜部の秋元司衆院議員捜査を察知したためではないか』とも囁かれていますが、まったく関係ないでしょう。道の候補地は苫小牧で、秋元氏との関係が取り沙汰される中国企業(500.com)が目をつけて働きかけていたのは留寿都村で、すでに脱落していた。そのため『桜を見る会から世間の目をそらすためではないか』と疑う声はよく聞きます。横浜や東京への参入を表明した『ラスベガスサンズ』(アデルソン会長)など米国カジノ大手業者ならともかく、はるかに規模が小さい無名の中国企業案件で、しかも道内の本命候補地にすら選ばれなかった留寿都村が舞台でもあるので、“東京地検忖度(そんたく)捜査説”が地元では有力視されているのです」
22日のTBS系「サンデーモーニング」でも、「桜を見る会」と関連づける類似発言が元共同通信の青木理氏から飛び出していた。
「コメンテーターでジャーナリストの青木理氏は『東京地検特捜部が久しぶりに政界の一端に切り込んだ』とし『評価した方がいいと思うんですね』とコメントした。そのうえで特捜部へ『本当にやるべきことって他にもあるんじゃないですか? って恐らく多くの方が思っていると思うんですね』と指摘した。続いて『(大臣室での現金授受や財務省の森友公文書改ざんを事件化しないのかと疑問を示したうえで)今回の桜を見る会だって、たとえばホテルに特捜部の強制捜査が入れば明細書なりなんなりは出てくるわけです。本当にやるべきところをやってないで政界捜査をやってますっていわれると、僕らはそうでしょうか? もっと、ちゃんとやるべきことがあるんじゃないでしょうかって思う』とコメントしていた」(22日配信の『スポーツ報知』)
ちなみに大臣室での現金授受など建設会社との関係が週刊文春に報じられて2016年1月に辞任したのは甘利明・経済再生担当大臣。さらに「桜を見る会」を主催した総理大臣の明らかな犯罪的行為(公職選挙法や政治資金規制法違反が濃厚)を捜査しない東京地検が、「巨悪を逃がす代わりに、小物政治家でお茶を濁す“忖度捜査機関”」と言われても仕方がないだろう。
■安倍首相は「すでに詰んでいる」
歴代総理最長記録を更新した安倍首相だが、日本の憲政史上初めて、白昼堂々と地元選挙民に公金で供応接待(買収を禁じる公選法違反)をした最高権力者でもあることは明白だ。「総理大臣は法律違反をしても見逃される」という法治国家の瓦解と独裁国家状態の始まりを招いた“A級戦犯”ともいえるのだ。
安倍首相の地元下関で取材をしていくと、「疑惑」が限りなく事実に近いことを肌で感じる。たとえば、首相元秘書で安倍派市議でもあった前田晋太郎・下関市長が12月3日に下関で開いた立食パーティーの会費は、総理主催「桜を見る会」前夜祭と同じ5,000円。しかし前夜祭が開かれた「ホテルニューオータニ」(東京都千代田区)の立食パーティーの最低価格は11,000円以上であり、前田市長のパーティー参加者が東京の一流ホテルに同価格で参加できれば、安倍首相に感謝感激するのは確実なのだ。この“お得感”こそ、地元選挙民への供応接待(買収)に当たるといえるものだ。
前夜祭の実際の相場価格(1万円以上)と会費5,000円の差額を安倍事務所が補てんすることは、選挙民に値引き分の現金を渡したのと等しく、公選法が禁じる買収に該当する。たとえホテルニューオータニ側が差額分を負担していても、例外的価格設定によって安倍首相に実質的な企業団体献金(闇献金)をしていたことになり、政治団体の収支を記載することを定めた「政治資金規正法」違反となる。
元検察の郷原信郎氏が、将棋でいう「詰んでいる」状態と指摘するのはこのためだ(11月17日の「『桜を見る会』前夜祭、安倍首相説明の『詰み』を盤面解説」など参照)。東京での安倍首相主催「桜を見る会」および前夜祭と、下関での前田市長(首相元秘書)の立食パーティーと並べ合わせると、公職選挙法違反や政治資金規正法違反や公金流用(目的外利用)などの疑いはますます強まってくるのだ。
■「桜を見る会」は市長選で汗をかいた支援者へのご褒美?
安倍首相が全面支援をした前田市長が当選した2017年3月の下関市長選に注目することでも、地元選挙民への買収の実態が鮮明になる。安倍首相の選挙区(山口4区)は下関市(人口約26万人)と長門市(約3万人)からなり、9割弱の有権者を抱える下関市のトップが安倍直系となることが自らの選挙でプラスに働くことはいうまでもない。
しかも下関では、安倍首相と林芳正・元農水大臣(参院議員)が父親の代からライバル関係にあり、下関市長選は長年にわたって両者の代理戦争のような様相を呈し、市長ポスト争奪戦を繰り返してきた。
江島 潔 市長(1995~2009年)= 安倍派
中尾昭友 市長(2009~2017年)= 林派
前田晋太郎 市長(2017年~現在)= 安倍派市長ポストを林派から8年ぶりに奪還したのが2017年の下関市長選であり、その前後で「桜を見る会」の参加者と支出が以下のように増加していた。市長選で汗をかいた支援者へのご褒美が公的行事招待とみるのははたして勘繰りすぎ、だろうか。
支出額(万円) 参加者数
〇2014年 3005.3 約13700
〇2015年 3841.7 約14700
〇2016年 4639.1 約16000
◎2017年 4725.0 約16500
●2018年 5229.0 約17500
●2019年 5518.7 約18200「〇」印の3年間の参加者増加は、2017年3月の下関市長選で汗をかいてもらうための事前買収の意味合いで、2017年(市長選の翌4月)から今年2019年までは前田市長誕生への論考褒賞的供応(事後買収)であったように見えるのだ。
予算委員会開催を拒否し続けたまま臨時国会は閉幕したが、野党は12月1日と2日に下関を視察、地方議員(県議や市議)や市民からの聞き取りをして下関市長選についても注目、公選法違反の疑いが濃厚であると結論づけた。視察最後の囲み取材では「安倍首相の逃切りは許さない」(黒岩宇洋衆院議員=追及チーム事務局長)と断言し、年明け通常国会予算委員会での徹底追及を予告したのはこのためだ。
国民の多くも安倍首相の説明に納得せず、内閣支持率が下落して不支持が支持を上回るなかで、秋元議員のカジノ関連捜査を読売新聞が報じた。あまりにもタイミングが良すぎはしないか。
「危機的状況に陥りつつある安倍政権に助け舟を出すために、官邸と読売、さらに東京地検が連携しながら世論誘導を始めたのではないか」
こうした見立てが永田町で囁かれているのは、北海道での傍流すぎるカジノ案件であることと、「桜を見る会」追及で“詰み状態”にある安倍首相の危機的状況の表れといえる。
【横田 一/ジャーナリスト】
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