2024年12月23日( 月 )

『山本太郎がほえる〜野良犬の闘いが始まった』を山本氏に贈呈

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 私、高橋清隆はれいわ新選組代表の山本太郎・前参院議員の活躍を追った『山本太郎がほえる〜野良犬の闘いが始まった』を自費出版した(1月20日発売)。1月24日、同書を山本氏に直接贈呈した。

 同書は記憶に残る山本氏の発言30本を集め、私の独断と偏見による解説を付したもの。酔っ払いや右翼とのはらはらする対話場面を描く一方、国債発行のメカニズムを解説して「財政赤字」のうそを看破したり、ジャーナリズムの歴史をひもとき、れいわが選挙期間中、報じられなかったわけを分析している。

 『NetIBNews』や『I・B Tokyo』の取材を通じて得た山本氏に関する情報が基になっている。文章は平易で、中学生でも理解できる。販売はアマゾンのみで、定価は同社が決めるが、1,760円(税込み)を上限としている。

 山本氏は「#れいわが始まる2020」と銘打つ全国遊説中。24日夜、鳥取市内での「おしゃべり会」終了後、署名を入れた本を手渡すと、山本氏は「全国津々浦々、一番シツコク取材した筆者の本がこちらになります」と自ら提供した推薦文を読み上げた。

 「ここまでしつこく付いてきて、その内容を書いている人いませんよ」と持ち上げた後、「反ジャーナリストって、初めて聞いた名前ですけども」といじってくれた。

 同書の一部を以下に紹介する。

(第2章より)

◆一君万民

 「私、陛下にお手紙をお渡しした失礼な人間として、皆さんのご記憶にも刻まれている部分があると思うんですけども、すごくびっくりしたのは、あの件があった後、陛下ご自身で栃木県に足を運ばれて、田中正造さんの直訴状をじかに見たということが小さく報道されたんですね。これは本当に、胸にぐっとくるものがありました」

(令和元年7月18日栃木・JR宇都宮駅西口前)

 演説の最後、応援に駆け付けた山田正彦元農水相から、地元ゆかりの田中正造が明治天皇に手渡した直訴状のコピーを贈呈されたのを受けての発言。うやうやしく差し出されたコピーは、山田氏が後援会の人からもらったという。

 「あの件」とは皆さまご存じ、2013年10月31日に東京・赤坂御苑で開かれた秋の園遊会で、山本氏が平成天皇に手紙を渡したことを指す。山本氏は同日夕に開いた記者会見で、手紙の中身について「原発事故での子どもたちの被ばくや事故収束作業員の劣悪な労働環境の現状を知ってほしかった」と説明している。

(中略)

 保守層が山本氏にアレルギーを示すのは、ひとえに先の手紙「事件」があるからにほかならない。マスコミ報道だけ見ていたら、無理もないことに映る。「事件」の翌月、「近日中に刺殺団を派遣します」と書かれた脅迫状と刃物が入った封筒が「日本民族独立解放戦線」と名乗る団体から届いたし、「近日中に射殺します」と書いた脅迫文と銃弾を入れた封筒が東京都内の郵便局で見つかり、元会社社長の男が逮捕されている。

 しかし、山本氏は「天皇(当時)陛下は命の恩人です」と側近に話している。上皇陛下自身のお気持ちについては、宮内庁の風岡典之長官が2013年11月14日の記者会見で、山本氏宛に届いた封筒から刃物が見つかった脅迫事件について新聞記事を読んだ天皇陛下が心配されていることを明かしている(同年11月14日付読売新聞)。

 実際、天皇皇后両陛下は翌年、田中正造の直訴状を見学するなど、自身の行動で山本氏に悪感情がないことを示しておられた。左記は、2014年5月21日の産経新聞電子版の記事である。

両陛下、栃木で田中正造の直訴状ご覧に

 天皇、皇后両陛下は21日、1泊2日の「私的ご旅行」で栃木県に入り、足尾銅山の鉱毒対策で作られた渡良瀬遊水地などを訪問された。(中略)佐野市郷土博物館では鉱毒問題に取り組んだ田中正造が明治天皇へ手渡そうとした直訴状をご覧になった

 漫画家の小林よしのり氏は2013年11月9日のブログで「山本太郎が気の毒になってきた」と題し、「山本太郎の一件を『政治利用』などと言っている連中は、『天皇論』を読んだことがあるのか?」と批判者に反論。「山本太郎が天皇陛下を『民の父母』としての感覚で、素朴に福島の情報をお知らせしようと手紙を渡してしまったのは間違いない。山本は反天皇でもなければ、不敬な賊でもない」と山本氏を擁護し、次のように問題提起した。

 「もしあの手紙を渡した議員が『原発推進派』で、手紙の内容が『放射能は危険ではない』という意見だったら、自民党やマスコミや自称保守派やネトウヨらは、今回のように『政治利用』と総攻撃したのか?」

 山本氏の唱える経済政策は、積極的な財政出動で国民経済全体の有効需要をつくり出すとともに、母子家庭や被介護者、非正規雇用者、学生など、社会的弱者の生活底上げに重点が置かれている。これは公害で放置されたり、ダム建設による北海道への強制移住、すなわち棄民政策に対し、村人たちと一緒になって闘った田中正造の姿と重なる。

 「れいわ」の経済政策は綿貫民輔氏や亀井静香氏が立ち上げた旧国民新党のそれと非常に似ている。同党が発表しながらすべての新聞・テレビが無視した政策の目玉は、「200兆円の景気対策」だった。中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)や郵貯資金の地方債・過疎債への運用拡大など、弱者目線の色彩が濃かった。亀井氏は「一君万民」が信条である。1人の君主の下、すべての臣民の間に一切の差別や身分差を認めないとする考え方である。

 山本氏が、政府から棄民されようとしている被ばく住民を守りたい一心から陛下に訴えようとしたのは、天皇の権威の大きさを認め、特別な尊崇の念を抱いているからにほかならない。ジャーナリストの田中龍作氏が山本氏を「平成の田中正造」と形容したことに対し、インターネットを中心に批判が集中したが、この批判は当たらないと考える。皆さんはいかがだろうか。

<プロフィール>
高橋 清隆(たかはし・きよたか)  

 1964年新潟県生まれ。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。『週刊金曜日』『ZAITEN』『月刊THEMIS(テーミス)』などに記事を掲載。著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)、『亀井静香が吠える』(K&Kプレス)、『亀井静香—最後の戦いだ。』(同)、『新聞に載らなかったトンデモ投稿』(パブラボ)、『山本太郎がほえる〜野良犬の闘いが始まった』(Amazonオンデマンド)。ブログ『高橋清隆の文書館』


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