2024年11月22日( 金 )

【BIS論壇No.311】「中国の現状と将来」

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 NetIB‐Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会会長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。今回は2020年1月30日付の記事を紹介。


 米中貿易戦争が一段落した中国では新年早々、武漢で発生したコロナウイルスによる新型肺炎は中国を中心に世界で感染者が6000人を超え、2003年のSARSを超す勢いだとのことである。

 中国では武漢をはじめ、首都北京、上海などでも海外渡航を禁止し始め、その影響は健康のみならず経済にも影響を与えつつある。WHOをはじめ世界の関係各国のグローバルな協力体制構築が望まれる。感染の進展しだいによっては4月の習近平国家主席の日本への国賓としての訪問、さらには7月からの東京オリンピックにも影響を与えるのではと憂慮する声も上がり始めている。日中韓を中心に世界的な対策が強く望まれる。

 さて去る1月21日、国際文化会館で言論NPO主催で「アジア平和会議」創設記念公開フォーラム~北東アジアに持続的な平和をどう実現するか~と題した極めて有益な会議が開催された。この会合には日中韓の関係者のみならず米国からも識者が参加した。

 米国からはマーク・リパート元中韓国大使、ダグラス・パールカーネギー国際平和基金デイステイングイッシュウド・フェローやデビッド・シェア元国防次官補などが参加した。

 この中でダグラス・パール氏は北東アジアで持続的な平和を実現するためには急速に発展しつつある中国との協力が不可欠である。一帯一路やAIIB(アジア・インフラ投資銀行)に関しても日米は積極的に協力し、北東アジアに平和を齎すことが肝要である。かつてADB(アジア開発銀行)設立については日米が協力したではないか。AIIBに関しても同じことがなぜできないのかとの意見には感銘を受けた。

 講演終了後、同氏に面談。筆者は長らく一帯一路や中央アジア、AIIBなどについて研究しているが、貴職の卓見に全く同感である。今後種々情報交流をしようと名刺を交換しあった。

 安部内閣では「インド太平洋構想」で米国を中心に豪州、日本、インドで一帯一路に対抗する動きをしている。これはかつて麻生外務大臣時代、中国、ロシアを中心とする中央アジアの上海協力機構に対抗し、日本が“自由の弧~Arc of Liberty戦略”を推進した構図と全く同じである。日本外務省を中心に日本政府では米国に忖度し、中国の一帯一路には批判的な空気が横溢していると聞く。日本政府はいつまでも米国追従の外交をやめてアジアの時代にふさわしい独自の外交を行うべき時ではないか。

 東京外語大で中国語を勉強し、70年にわたり中国を研究している久保孝雄氏によれば、2010年にGDPで日本を抜いた中国は世界2位、アジアで1位になった。数年以内に米国を追い越す。購買力平価のGDP比較では2014年に中国はすでに米国を上回っている。

 18年には1位中国(25.27兆ドル)、2位米国(20.494兆ドル)、3位インド(20.505兆ドル)、4位日本(5.594兆ドル)。一方先進7カ国のGDP,40.68兆ドルに対し、新興7カ国(中国、インド、ロシア、ブラジル、インドネシア、メキシコ、トルコ)は51.71兆ドルとG7を10兆ドル以上も上回っていると指摘しておられる。かかる事情を勘案し、日本としては世界80カ国以上が参加している一帯一路やAIIBに参加し、21世紀に発展する中国やインドと共にユーラシアやアフリカでの協力を真剣に考究することこそ肝要である。

<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

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