福岡市の都市政策が再開発から都心部緑化へ~「天神センタービル建替」がグリーンボーナス第一号認定

「(仮称)福岡天神センタービル建替計画」外観完成予想パース
「(仮称)福岡天神センタービル建替計画」
外観完成予想パース

    解体工事が進んでいた天神2丁目の「福岡天神センタービル」の建替え計画が発表された。

 野村不動産(株)(東京都新宿区)と(株)竹中工務店(大阪市中央区)が共同で発表した「(仮称)福岡天神センタービル建替計画」によると、昭和通りと明治通りに挟まれた4,863.19m2の敷地に、S、SRC、RC造の地上21階・地下3階建、延床面積約6万9,000m2のオフィス・商業ビルを建設する計画。地下2階~地上2階は商業フロアおよびオフィスラウンジなどが入るほか、3~20階は賃貸オフィスフロアとなる予定で、21階には屋上テラスなども設けられる。

 現在は、「福岡天神センタービル」のほか、隣接する「安藤ビル」「野村不動産天神ビルⅠ」「野村不動産天神ビルⅡ」「伊藤ビル」の計5棟のビルの解体工事が一体的に行われており、新ビルの着工は2025年12月を予定している。

福岡天神センタービル一帯では解体工事が進行中
福岡天神センタービル一帯では解体工事が進行中

 同ビルの外観上の最大の特徴は、敷地内の広場空間や、低層部の壁面・テラスの緑化などによって、都心部に緑あふれる空間を創出する点だ。また、明治通り側ではセットバックによる歩行者道路を整備するほか、昭和通り側・明治通り側それぞれに地域に開かれた地上・地下広場を設け、福岡市が推進する「Fukuoka Art Next」に貢献するパブリックアートなども設置される。

 天神エリアに、また1つのランドマークとなり得るビルが誕生するわけだが、意外にも同ビルは、福岡市の再開発プロジェクト「天神ビッグバン」のエリア内にありながらも、その認定を受けていない。というのも、容積率緩和などのインセンティブを受けられる天神ビッグバンボーナス(天神BBB)では、ビルの竣工期限を26年末と設定しており、その期限に間に合わないからだ。

 とはいえ、複数街区にまたがる段階的および連鎖的な建替え計画として、特例的に天神BBBの認定を受けられる道は残されていたし、実際に同ビル敷地を含む14番街区が、福銀本店や天神ビルなどが位置する12・13番街区とまたがるかたちの「天神明治通り地区天神二丁目北ブロック」(約2.9ha)として、天神ビッグバンに関連した地区計画の変更も受けていた。だが、最終的にはその道を選択せずに天神BBBの認定はあきらめ、今回、同ビル単独での再開発へと踏み切ったようだ。

 しかしその一方で、同ビルは福岡市から「グリーンボーナス」第一号認定を受けている。

 グリーンボーナスとは、今年4月からスタートした「グリーンビル促進事業」におけるインセンティブ制度。新たな再開発ビル計画などを対象として、屋外緑化などの一定の緑化要件を満たすことで、容積率最大50%緩和などのインセンティブを受けられるもので、その対象エリアは、天神ビッグバンおよび市のもう1つの再開発プロジェクト「博多コネクティッド」のそれぞれの対象エリアだ。

 つまり、容積率緩和というインセンティブだけを見れば、グリーンボーナスは天神ビッグバンと比べて、何ら遜色ないもののように見受けられる。同ビルが期限の迫る天神BBBの認定をあきらめても、再開発計画を策定するうえで支障をきたさぬよう、福岡市によって代替案は用意されていたわけだ。

 なお、これまで天神ビッグバンと博多コネクティッドという2つの再開発プロジェクトを進めてきた福岡市だが、グリーンビル促進事業のスタートが今年4月ということを考えると、市としては間もなく終焉を迎えようとする天神ビッグバンを無理に延長するのではなく、次なる都市政策の方針として、都心部の緑化へと舵を切った模様だ。

 思えば、天神および博多という両都心部において、アクロス福岡と天神中央公園のような例外を除けば、現状として緑あふれる空間というのは貴重だ。再開発プロジェクトで誕生した新たなビルを見ても、ある程度の緑化や街路樹、芝生広場などが整備されているものもあるが、エリア全体からするとまだまだ足りない。今後、グリーンビル促進事業の推進とともに都心部の緑化が徐々に進んでいくことで、福岡市はさらに魅力ある都市へと成長していくであろう。

【坂田憲治】

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