2024年11月24日( 日 )

【京都市長選】「共産党+れいわ」の脅威に浮足立つ門川陣営~共産ネガキャンはどう影響するか

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■「反共産党」作戦を徹底する門川陣営

現職の門川大作氏

 三野党(立民・国民・社民)が自公推薦の門川大作候補に相乗りする「京都市長選」(2月2日投開票)が予想外の大激戦となり、楽勝のはずの門川陣営が浮足立っている。30日の総決起大会では、何人もの弁士が951票差の薄氷の勝利となった2008年市長選の再来になりかねないと訴え、「期日前投票の出口調査では三候補横一線」という最新の情勢報告までなされた。門川氏が「12年前も世論調査で『先行』と書かれたが、実際は951票差。今回も厳しい戦い」と危機感を露わにしたのはこのためだ。

 今回の京都市長選は、4選を目指す門川市長と新人の福山氏(共産とれいわ推薦)と地域政党「京都党」前代表の村上祥栄・前市議の三つ巴の戦い。基礎票では自公だけでなく三野党も府連推薦を出した門川氏が圧倒的に優位のはずだが、共産党が歴史的に強い土地柄に加えて山本太郎代表の”参戦“という相乗効果で福山氏が猛追、逆転可能な差にまで迫っているようなのだ。 

 門川陣営の焦りは半端ではない。ラストサタデーの1月25日、自民党の西田昌司参院議員(京都選挙区)は門川氏の演説会でこう訴えた。

 「共産党の票にれいわの票を足すと、(08年の市長選で)951票差で勝った門川さんは完全に逆転される」「北陸新幹線も文化庁移転も地下鉄延伸も、国がお金を出さないとできない。全部反対の共産党の市長を(誕生)させてしまったら、京都が国と一緒にやっていこうということ(三大プロジェクト)が全部飛んでしまいます。そんなことだけは絶対にさせるわけにはいかない」

 翌26日に門川氏支持の政治団体「未来の京都をつくる会」は、西田氏の演説内容を紹介する広告を出した。「大切な京都に共産党の市長『NO』」と大文字で切り出し、「いまこそONE TEAMで京都を創ろう!」と銘打って、「『地下鉄延伸』『北陸新幹線延伸』『文化庁本格移転』 夢と希望に満ちたさまざまなプロジェクトも国や府との協力なしには実現できません」と続けていたのだ。福山市長誕生すると、大型プロジェクトが次々と潰れることになるという恐怖心を煽ったのだ。

■立ったのは赤旗ではなく保育園と高齢者施設

日本共産党とれいわ新選組が推薦する福山和人氏

 「共産党=悪(大型事業中止)」というマイナスイメージを植え付けていく手法は、1月19日の告示日からスタートしていた。門川氏の出陣式で元文科大臣の下村博文選対委員長は「共産党推薦の福山和人候補が当選するようなことがもしあれば、リニアや北陸新幹線京都駅ができるかどうかもわからなくなる」と訴え、新聞広告を出した「未来の京都をつくる会」会長の立石義雄・京都商工会議所会頭も「市庁舎に赤旗がたっては絶対にいけない」と危機感を煽っていたのだ。

 この“市庁舎赤旗発言”は立石氏のお気に入りのようで、30日の総決起大会でも、立石氏は「われわれ門川陣営は、国際都市京都の市庁舎に赤旗を立ててはならないと思っております」と約千人(主催者発表)を前に訴えたのだ。

 しかし25日に福山氏と山本太郎代表と並んで応援演説をした共産党の志位和夫委員長は、囲み取材で“赤旗発言”にこう反論をした。

 「ずいぶん古い話を、古い攻撃を持ち出しているなと。半世紀前とちっとも変わりはない。共産党が与党の自治体が全国でたくさんありますが、どこにも赤旗が立っているところはないでしょう。建ったのは保育園であり、高齢者の施設です」。

  08年の市長選再来におびえる門川陣営は、「中央から金を引っ張って大型事業を進める」という“人参”をぶら下げて建設業界などからの大量集票を狙う土建選挙と、嘘八百の反共デマ攻撃で福山氏の猛追をかわそうとしているようだが、マイナスに働く可能性もある。

 「ヘイトスピーチのような新聞広告で門川陣営は墓穴を掘ることになるのではないか」と指摘するのは野党国会議員。実際、「ヘイトスピーチ」「赤狩り」などと批判がネット上でも相次いだ上、顔写真付で登場したほとんどの推薦人に内容が知らされていなかったことも明らかになった。その1人である日本画家の千住博氏がネット上で、こう抗議をした。「特定の党を排他するようなネガティブキャンペーンには反対。このような活動に同意しているような意見広告に、許可なく無断で掲載されたことを大変遺憾に思います」。

 排他的なネカキャンに呆れた人たちが、門川氏への投票を考え直すことは十分にあり得るのではないか。また批判噴出の広告について陣営が詳細な釈明も丁寧な謝罪もしていないことも、門川離れにつながる要因になりかねない。

 30日の総決起大会後、門川氏を直撃、「広告OKしていない人が出ている件についてはどうですか。千住さんが抗議しています」「了解を得ていない人を載せていることについて、一言お願いします」と何度も聞いたが、無言のまま車に乗り込んだ。

■「東京的発想を京都に押し付けるのは愚か」(志位委員長)

 門川陣営がアピールする北陸新幹線京都延伸問題も、「アベ土建政治 対 くらし応援市政」という対決の構図が鮮明となり、逆効果となる恐れもある。福山氏は新幹線よりも返済不要の奨学金や全員制の中学校給食などを優先すべきと訴え、キャッチフレーズは「くらし応援を」であるからだ。

 共産党の志位氏も「『北陸新幹線だ』『リニアだ』と言って莫大なお金を使う余裕があるなら、なぜ、目の前の困っている人たちのために使わないのか。リニアも北陸新幹線も東京のゼネコンがお金を吸い上げるだけで、京都にお金が回ってくるわけではない。東京的な発想を京都にきて押し付けるのはまったく愚かなことだ」とアベ土建政治と足並みをそろえる門川市政との対決姿勢を露わにした。

 25日にそろい踏み演説をした山本氏も、都知事選については「京都市長選で集中していて、それどころではない。まずは目の前の一勝です」とコメントを避ける一方、北陸新幹線についてはこう話した。「北陸新幹線も『まったく造るな』とは言いませんが、『順序が違うな』という話です。『予算がどれぐらいかかるのか』ということが市長選でも言えないこと自体がおかしい。水枯れ問題も起こす恐れがあります」。

 自民党の伝統的手法である「土建選挙」と「反共攻撃」を駆使する門川陣営と、京都の街とくらしを守ると訴える福山陣営との実質的な一騎打ち状態となったようにみえる京都市長選。結果はもうすぐ出る。

【ジャーナリスト/横田 一】

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