【京都市長選】京都市長選は「野党共闘・勝利の方程式」へのヒント~与野党相乗り候補に「共産+れいわ」が善戦
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2日に投開票された京都市長選で現職の門川大作市長(公明、自民・立民・国民・社民府連推薦)が、弁護士の福山和人氏(共産・れいわ推薦)と元市議の村山祥栄氏(地域政党・京都党前代表)の新人2人を破り、4選を決めた。投票率は40.71%だった(前回は35.68%)。
■1人区で自公系候補を倒せることを証明
政党基礎票では門川氏が圧倒的優位だったが、蓋を開けてみると、門川氏の約21万票に対し福山氏が約16万票の5万票差。自公と三野党が支援に回る「巨大戦艦」のような現職に対して、福山氏が大健闘をしたといえる。ちなみに昨年の参院選は全1人区で野党統一候補を擁立したが、それでも10勝22敗。その与野党激突の構図から三野党が抜けた圧倒的に不利な状況下で、二野党推薦の福山氏がほぼ互角に近い戦いをしたことになる。なお、3日の京都新聞の出口調査を見ると、門川氏支援の政党支持率は合計50.3%(自民34%、公明4.2%、立民7.5%、国民4.2%、社民0.4%)に対し、福山氏支援の二政党は14%(共産11.7%、れいわ2.3%)と3倍以上だった。
この圧倒的な差を乗り越えて「ゼロ打ち」(※)させなかった要因に、三度も京都入りして福山氏を応援した、れいわ新選組・山本太郎代表の存在があるのは間違いない。とくに若者世代に人気のある山本氏の支援で福山陣営は「若者票を取り込める」と見ていたが、これは出口調査の数字にもはっきりと現れた。18歳と19歳の出口調査は、福山氏が門川氏を上回る結果となったのだ。全国的に、中高年に比べて若者世代の自民党支持率が高い傾向があるなか、今回の京都市長選では逆転現象が起きていた。山本氏の熱弁が保守化した若者票を切り崩したようにもみえる。
※=出口調査などをもとに、開票率0%で当確が出ること。
しかも支持政党なし(自民34%に次いで二番目の28%)の出口調査でも、福山氏は38.7%と門川氏の26.7%と村山氏の30.6%を上回った。現職批判票が新人2人に分散したため門川氏は逃げ切ったものの、安倍政権打倒(政権交代)に向けた貴重な教訓を残したともいえる。「参院選1人区のような与野党激突の構図で“れいわ旋風”を取り込めば、自公系候補を打ち破ることが十分に可能」という勝利の方程式を指し示したといえるからだ。
■立憲支持者の思いは「れいわと共闘して安倍政権打倒」
今回の選挙は、野党陣営の最重要課題を可視化させる役割をしたようにも見えた。山本氏が福山氏と6カ所で街宣をした2月1日、奇妙な光景を目の当たりにした。最後の街宣場所の河原町に集まった聴衆のなかに、「立憲」と「れいわ」のプラカードを並べて持つ人がいたのだ。街宣終了後、他社の記者と2人で「立憲」「れいわ」のプラカードを掲げられていた意味を聞くと、立憲民主党のかなりコアな支持者である吉村直子さんは、写真撮影もOKしてくれた。
「じつは22年前に(立憲民主党幹事長の)福山哲郎さんの初当選の時に応援したくらい、長年の支持者です。れいわと共産党と立民を支持しているのですが、『京都の立憲はどこかに行って欲しい』『国政だけやっていてほしい』という気持ちです。門川候補に相乗りするのなら来るなということです」(吉村さん)
「立憲とれいわが野党共闘とならずに国政で競合した場合、共産党とれいわの方を選ぶと思います。そうならないように、山本代表が野党共闘の条件としてあげる『消費税5%減税』を立憲が受け入れて欲しい。立憲に対する熱が冷めた理由は、京都府知事選と市長選での相乗りです。福山和人さんは政策がすばらしいのに、立憲は相乗りで現職を推した。そのことが一番腹が立ちます」(同)
今回の京都市長選でも野党第一党の立民が福山氏支援で共産とれいわと足並みをそろえれば、自公推薦の現職に勝利した可能性は高かった。同じように次期衆院選でも、「消費税5%減税」を立民が受け入れて野党共闘(選挙協力)が実現すれば、野党統一候補が自公系候補に競り勝つ小選挙区が急増するのは確実だ。「立民」と「れいわ」のプラカードを並べて掲げたのは、両政党が同士討ちを回避して共闘・安倍政権打倒をしてほしいとの思いが込められていたようだ。
■「赤狩り広告」への批判は、「もう終わったこと」(門川陣営)
門川氏に当確が出たのは2日の午後9時45分。ホテルで開票を見守っていた支持者から歓声と拍手が沸き起こり、近くで待機した門川氏がすぐに会場に現れ、万歳三唱をした。選挙母体「未来の京都をつくる会」会長の立石義雄・京都商工会会頭とや西脇知事らと握手を交わしていった。そして本人挨拶や代表取材、個別取材と続いたが、「共産党の市長は『NO』」と銘打った新聞広告への釈明や謝罪はなかった。そこで再び門川氏を直撃、ヘイトスピーチ紛いなどと批判された広告について聞いたが、無言のまま立ち去った。
内容について了承しないまま顔写真を掲載された西脇知事にも聞いたが、一言も返って来なかった。共産推薦の福山氏を念頭に「市庁舎に赤旗が立ってはいけない」と繰り返し訴えた立石氏も直撃、「赤旗が立ったところは1つもない。虚偽発言ではないか。根拠はあるのか」と聞いたところ、「もう終わったことだ」と答えるだけ。「勝つためには法律違反(虚偽事実流布を禁じる公職選挙法違反)をしてもいいのか」と再質問をすると、それ以上は何も答えずに会場を後にした。
「巨大戦艦」のような自公推薦候補は三野党の支援も受けつつ、公選法違反の疑いのある嘘八百の反共デマ攻撃も使って、ようやく勝利したといえる。今回の京都市長選は、古典的手法しか繰り出せない与党系候補の頭打ち傾向が明らかになると同時に、それを抜き去る「勝利の方程式」(れいわ旋風を取り込んだ野党共闘)を浮き彫りにする意味深い戦いであったようにみえる。
【ジャーナリスト/横田 一】
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