山本太郎が国債による生活救済を主張、「消費税で保育無償化は狂ってる」
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れいわ新選組の山本太郎代表は4日、広島市内で市民との対話集会を開き、まん延する生活困窮を救うための経済政策を新規国債発行で賄うことを主張。2019年10月から始まった幼児教育・保育の無償化について「消費税を上げたものを財源に保育を無償化すること自体、狂っている」などと批判した。
ホテル広島サンプラザで開かれた「おしゃべり会」には、約300人が集まった。前日の岡山市内での集会が参加者を収容しきれなかったことを受け、急きょ会場が広い部屋に変更された。同施設はれいわが単独で次期衆院選を戦うことになった場合の上位100選挙区に中国地方で唯一含まれる広島2区にある。
山本氏が会場に姿を見せるなり、「なぜ昨年、中国地方に来なかった」との詰問が飛んだ。山本氏は「意図的ではない。いつ選挙があるかわからない状況で回っていた」と釈明。衰退を象徴する地方で、遠くにある北海道から声を聞こうとしたことを告げると、男性は「会えてよかった」と矛を収めた。
職業記者からの質問として筆者は、「山本代表が国会議員なら、何を質問するか」と尋ねた。現在開かれている衆院予算委員会で野党最大会派は、「桜を見る会」に代わってコロナウイルスをめぐる政府対応への追及に明け暮れている。
山本氏は「桜を見る会は有権者買収だから大問題。コロナウイルスは予算委員会で詰められるまでもなく、さっさと政府が対応していればいい話」と理解を示したうえで、「もう1つ、緊急性の高いものは、人々の生活の地盤沈下の大きな原因の1つとして消費税が与えた人々への影響に関して問いただすこと」と答えた。
一般参加者からの質問で、男性が地方分権について意見を求めた。広島県は転出超過が全国一と言い添えた。
山本氏は、れいわが掲げる「8つの緊急政策」のうち、(1)消費税廃止(2)最低賃金全国一律1,500円政府が保証(3)奨学金を解決策に挙げた。「低所得者や中小零細・個人事業主の首を絞める消費税をやめれば、需要が喚起される。もし、全国どこにいても時給1,500円が国の保証でなされるなら、都会に出る必要はあるか」と向けた。
女性が「日経新聞を読むと、借金が増えるほど国が危ないと書いている」と疑問をぶつけた。山本氏は、「どうして政府の借金がみんなの借金になるのか」と述べ、日銀資金循環統計をグラフで示した。政府と民間の収支バランスは対象になっている。さらに「銀行が国債を買うお金は、皆さんから集めたお金じゃない。日銀当座預金を通じて買っている」と述べ、国債発行による財政支出が同額の民間銀行の預金を増やすことを説明した。
男性が「国債を発行したら、どうやって返すのか」とただす。これに対し、「世界中で元本まで返済し続けている国はない。60年期限で償還しているのは日本くらい。どの国も借り換えしている」と返答。返済すれば世の中からお金が消えるだけで、返済する必要はないことを説明した。
2人の子どもを抱える男性が、「子どもたちのために何を残せるかと考える。3〜5歳児への保育無償化は的外れではないか」と見解を求めた。山本氏は、消費税を上げたものを財源に保育を無償化すること自体、狂っている」と一蹴した。
子どもを預けて働かなければいけない状況が少子化を加速するとの前提に立ちながら、「今、政府は『もう1人いかが』とやっているが、今のサービスではもう1人とはならない。少子化を50年前から放置してきた。0〜2歳児はどうなる。中途半端で手薄だ。安心できるようにするには、認可保育園を増やさなければ」と訴えた。
保育士として登録した人数と実際働いている保育士の数の推移をグラフで示し、潜在保育士86万人のうち、保育従事者数は約54万人にとどまることを指摘。「全産業平均と100万円違う。そんなふざけた話があるか」と公務員化も視野に保育士の処遇改善を提案した。我が国の人口1万人あたり公務員数は261人。フランスの838人、英国の828人などと比べ、圧倒的に少ない。
山本氏は生活苦を感じる人が全世帯で57.7%、母子家庭で82.7%に上る調査結果や貯蓄ゼロ世帯が20代で61.0%、30代で40.4%におよぶデータを示し、「1人生きるのに精一杯。このままでは少子化は加速するしかない。国が面倒見ないなか、どれだけ荒れた世の中になるか」と問題提起した。
過去22年間の政府総支出の伸び率と名目GDPの伸び率ともに日本が最下位であることを挙げ、「国が投資してこなかった結果」と断じた。33カ国の財政支出の伸び率とGDP成長率を並べると見事な相関関係があることを示し、「政治を選ぶ最高権力者は皆さま。愛と金を取り戻せ」と呼び掛けた。
終了後、廊下で小躍りする男性がいた。「やったあ」と山本氏に会えたことを喜んでいる。冒頭で山本氏が中国地方に来なかったことをとがめた男性の弟だ。2人は双子の22歳。仕事を休み、山口市内からきたという。「忖度(そんたく)しないでデットボール当てにいくって、男らしくてかっこいい。動画を通してだと、全部はわからなかったが、生で聞け、納得できた」とほれ直していた。
兄の方は「倒錯的な愛情がああいう聞き方をさせました」と照れた。国の財政赤字が問題でないことについて「大西恒樹さんの話を聞いて何となくわかっていたが、実際、話を聞いてなるほどと思った」と意を新たにしていた。
<プロフィール>
高橋 清隆(たかはし・きよたか)
1964年新潟県生まれ。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。『週刊金曜日』『ZAITEN』『月刊THEMIS(テーミス)』などに記事を掲載。著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)、『亀井静香が吠える』(K&Kプレス)、『亀井静香—最後の戦いだ。』(同)、『新聞に載らなかったトンデモ投稿』(パブラボ)、『山本太郎がほえる〜野良犬の闘いが始まった』(Amazonオンデマンド)。ブログ『高橋清隆の文書館』関連キーワード
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