2024年12月23日( 月 )

安倍氏の地元で400人超が熱狂~山本太郎との対話集会

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 れいわ新選組の山本太郎代表が6日夜、山口県下関市内で市民との対話集会を開き、次期衆院選の山口県内での戦い方や、地方の活性化策、憲法改正、倒産増加などについて意見を交換した。

 下関市民会館中ホールで開かれた「おしゃべり会」には、400席の定員を上回る市民が駆け付けた。急きょ別室にモニター画面も用意され、約2時間50分、参加者からの質問に答えた。

 開口一番、「やっと総理のお膝元にやって来ることができた」とあいさつすると、万雷の拍手と「太郎」「下関にようこそ」などの歓声が飛ぶ。山本氏は「さくらサクラですか、皆さん。まさかこんなにたくさんの人が集まるとは思わないですよ、サクラをうちが仕込むほどの財政力はありませんので」とおどけた。

発言者を当てる山本氏(2020.2.6筆者撮影)
発言者を当てる山本氏(2020.2.6筆者撮影)

 冒頭、記者からの質問を受けた。地元紙の記者が次期衆院選の山口県内での戦い方を尋ねると、山本氏は山口4区(下関市・長門市)について「総理のお膝元に候補者を立てない選択肢はない」と述べ、会場を沸かせた。「誰が立つかまだ発表できない」と続けると、「山本太郎が立て」とやじが飛ぶ。「山本太郎が死ねに聞こえました。討ち死にしろということですよね」と笑いを取った。

 候補者の資質については、「下関に生活されていることが、最低限の候補者に求められる」と述べ、落下傘候補の擁立に消極的な姿勢を見せた。

 筆者が、国民民主党の玉木代表が5日の記者会見で消費税減税に向けた野党協力に関して「山本代表と腹を割って話したいと」と発言したことに触れ、連絡があったか尋ねた。山本氏は「連絡先を交換していない」と否定しながらも、「消費税5%については話をできる方ではないか」と協議に応じる構えを見せた。

 全国紙の記者から同選挙区での戦いの位置付けを問われると、「過去の4区の戦いは超対決モードという状況があった。私はもう少し建設的な戦い方があると思う」と述べ、安倍氏の再選が揺るがないなか、比例復活でもう1人市民の代表を国会に送り込む重要性を説き、「そのほうが浸透しやすいのでは」と提案した。

 一般参加者からの質問では、女性がコロナウイルス騒ぎで外国人観光客が減っていることへの対応と、地方再生策について尋ねた。

 山本氏は、「そもそも観光客頼みなのが一番まずい。日本での買い物が安いから外国から来る。これは喜ぶべきことか」と疑問を呈す。「この流れを変えるには内需拡大が必要。さっさと金出せということ」と述べ、政府投資による国民生活の底上げを訴えた。

 地方再生については、「忖度(そんたく)してもらってないですか、皆さん。おかしな話」と切り出した。2018年の西日本豪雨では山陰地方の高速道路が未完成のため物資が届けられず大渋滞が発生したことを挙げ、「名だたる政治家がいながら、インフラも整っていない」と皮肉る。

 土木・建築を含む公的資本形成が1996年からの橋本・小泉の両政権の10年間で約半減し、修繕が必要な橋やトンネル約8万カ所のうち約8割が修繕に取りかかれていない状況を説明。最も即効性のある地方活性化策として、消費税廃止と最低賃金1,500円「政府が保証」を提案した。

 北九州市からきたという男性が、在沖縄米軍のカリフォルニアへの移転と独自防衛を実現するには改憲の必要があるのではとただした。山本氏は、「辺野古新基地は必要ない。『普天間飛行場が危険だから』『中国の脅威から守るため』とは本当か」と向けた。

 ブッシュ政権で首席補佐官を務めたローレンス・ウィルカーソン元陸軍大佐の証言を紹介。彼も関わった米海兵隊基地の検証では、沖縄の海兵隊は戦力規模が小さすぎて「太平洋地域に遠方展開させる戦闘的価値はない」と結論づける一方、コスト面では日本側の経費負担があるので、米本土に移転するより沖縄に駐留を持続させる方が50〜60%安くなることがわかった。

 山本氏は「沖縄の海兵隊駐留は、何ら日米の安全保障と関係ない。自分たちの部隊を縮小させないために沖縄に居続ける海兵隊と日本側の建設利権で造らなければならなくなっている。同じ費用をもつから帰っていただくのが一番いい」としたうえで、無理な憲法解釈による2015年成立の安保法に言及。「この後も詐欺的政権ができたら解釈がねじ曲げられる可能性がある。将来、改正して施政下しか(活動)できないようにすることが必要だ」と改憲の必要性を認める一方、憲法の重要性が理解されない現状での改正はすべきでないとの見解を示した。

 個人事業主の男性が、中小零細企業の倒産にともなう自殺者数が増えていることに関して見解を求めた。山本氏は「内需喚起が一番重要。為替変動など外的要因からも守れる」と主張。倒産件数は2010年から減少していると見られるが2019年は8,354件と3.6%増だった。原因として「人手不足」「後継者難」を見出しに掲げる新聞記事群を紹介する。

 「皆さん、だまされないで。帝国データバンクの調べによれば、人手不足は全体の2%、後継者難は5.5%にすぎない。景気が悪いのは、世の中にお金を回していないから。本当は見出しを『不況型倒産 全体の79.2%』とすべき」と指摘。「処方箋は不況下で産業と労働者を守ることなのは明らか」と財政出動を訴えた。

 終了後、山本氏との写真撮影会には長蛇の列ができた。同市在住60代の女性は、ネットで演説動画を見ていたが、初めて肉声を聞いたという。「迫力があり、1人ひとりの質問に対しても丁寧に答えていた。質問との関係で政策を語るので、説得力がある」と感心した様子だった。山口4区から候補者を立てることについて「本気でみんなが動ける第一歩になれば」と期待を寄せていた。

<プロフィール>
高橋 清隆(たかはし・きよたか)  

 1964年新潟県生まれ。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。『週刊金曜日』『ZAITEN』『月刊THEMIS(テーミス)』などに記事を掲載。著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)、『亀井静香が吠える』(K&Kプレス)、『亀井静香—最後の戦いだ。』(同)、『新聞に載らなかったトンデモ投稿』(パブラボ)、『山本太郎がほえる〜野良犬の闘いが始まった』(Amazonオンデマンド)。ブログ『高橋清隆の文書館』

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