製造小売から情報製造小売へ~SPA世界ナンバーワンを目指す(1)
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(株)ファーストリテイリング
カジュアル衣料専門店「ユニクロ」を展開する(株)ファーストリテイリング。SPA(製造小売)のビジネスモデルで急成長してきた。ユニクロは国内外に2,000店舗超。その他のブランドを合わせると約3,500店舗を展開する。売上高は2兆円超え、世界の大手SPAと肩を並べる。現在、製造小売から抜け出て情報製造小売に変貌を遂げようと、新たな挑戦に向かっている。それは、情報を中心とした新しいサプライチェーンへの変革だ。
1984年に1号店、10年後に株式上場
ファーストリテイリングの売上高は2兆2,905億円(2019年8月期)。1ドル106円換算で215億1,000万ドル。SPA世界最大手、「ZARA」を展開するスペインのインディテックス288億9,000万ドル(2019年1月期)についで2位につける。ちなみに3位は「H&M」を展開するスウェーデンのヘネス&マウリッツで、売上高は215億ドル(2018年11月期)だ。国内ユニクロ事業の売上高は8,729億円で、国内の衣料品小売業界では、2位の(株)しまむらの5,459億円(2019年2月期)を引き離す。
今や世界で指折りのSPA企業となったファーストリテイリングだが、ルーツは柳井正会長兼社長の父親が1949年3月、山口県宇部市で創業したメンズショップ小郡商事。
1984年に「ユニクロ」1号店を広島市にオープンしたときから類まれな発展の歴史がスタートした。
店名の正式名称は「ユニーク・クロージング・ウエアハウス(UNIQUE CLOTHING WAREHOUSE)」。当時としては珍しいユニセックスのカジュアル衣料専門店。
ロフト風の建物にクラシックな映画ポスターや有名スターの写真を貼り出すアメリカンカジュアルショップで、地元出身の著名なDJ小林克也氏を起用したローカルのテレビCMを放映するなどして若者の支持を得た。
翌年、その後の店舗の原型となるロードサイド立地の「山の田店」を山口県下関市に出店し、多店舗化に乗り出した。
モータリゼーションの普及にともない、「洋服の青山」などの紳士服専門店も郊外のロードサイドに出店していた時代で、ユニクロもそれに倣い順調に店舗網を広げていった。
1991年にファーストリテイリングに社名変更し、1号店出店から10年後の94年7月に広島証券取引所に株式上場をはたした。
ヒット商品を連発、飛躍的に事業を拡大
ここまでは衣料品専門店がチェーン展開することで上場をはたす、よくあるサクセスストリーだが、商品を仕入れて販売する事業モデルからSPAへの事業転換を図ることで、飛躍的に事業が拡大していく新たな道が開けることになる。
1996年11月、PB(プライベートブランド)開発のため、東京に拠点を設けて体制を整備。取り組みを強化したことで爆発的なヒット商品を世に送り出した。
2年後の1998年10月に発売した1,900円という圧倒的な低価格のフリース。当時若者に流行していたが、価格を安くしたことで老若男女が着るアイテムに変え、年間200万枚を販売した。
ヒットを後押ししたのがブランディング戦略。ファッションのトレンド発信基地である東京・原宿に店舗を設けたことで、ユニクロを着ていることが他人に知られると格好悪いという、いわゆる「ユニバレ」から抜け出て、フリースもファッションアイテムとして認知された。
その後も、フリースの売れ行きは止まることなく、翌年は4倍以上の850万枚、2000年には2,600万枚という驚異的な販売数を記録した。これによりユニクロの存在が一気に広く世間に知られることになり、顧客層も若者から幅広い層に広がった。
さらに、百貨店では数万円で売られていた100%カシミヤのセーターを、2003年に4,900円と7,900円の価格で発売、さらに2,900円のジーンズも開発するなど、クオリティを追求しながらインパクトのある低価格アイテムを投入しヒットさせていった。
こうした取り組みはSPAから生み出されたもので、生産拠点である中国では、1999年4月に生産管理業務の充実を図るため、上海事務所を開設し、態勢を強化した。
翌年には、マーチャンダイジングおよびマーケティング機能の強化を図るため、東京本部を設けた。
広告代理店と提携し、クリエイティブディレクターにタナカノリユキ氏を招聘、ブランディングにも取り組み、イメージを上げていった。ユニクロの巧みなブランディング戦略はこのときから始まり、ロゴを始めとする佐藤可士和氏との仕事は大きな成果を生み出した。
ユニクロのモノづくりは機能の領域に踏み込んでいくことでさらに進化を遂げていき、成長のエンジンとして大きな役割をはたしていく。
2003年には東レと共同開発した保温機能の高い素材「ヒートテック」を使ったインナーウエアを発売、毎年改良を重ね機能性を向上したことで年々売上を伸ばし、2007年には大々的にキャンペーンを実施した効果もあり、2,000万枚が売れる大ヒットとなった。
ヒートテックにより機能性インナー市場が活性化し、イオン(株)、しまむらなども同じような商品を投入し競争も厳しくなったが、際立つ高機能と価格のリーズナブルさが消費者の支持を得て、2009年には累計販売数が1億枚に達し他社を大きく引き離した。
この間、2006年6月には、素材メーカーである東レ(株)と「戦略的パートナーシップ」の構築を目的に業務提携を結び関係を強化、新しい素材開発にも着手し商品開発を進めていく。
米ギャップから始まったSPAは、小売という川下から製造という川上に遡り、商品を企画しメーカーに発注し販売するビジネスモデル。ユニクロはメーカーとより緊密な関係を構築し、モノづくりの段階まで深く入り込み商品を開発する。
商品設計をメーカーに丸投げするのではなく、消費者のニーズや要望といった情報をもっている小売が、その情報をモノづくりに反映させ、メーカーの技術を最大限に生かし、商品の価値を最大化し提供することで、より強みのあるモデルにつくり替えた。
SPAは、(株)ニトリ、(株)無印良品など有力専門店も採用し、90年代後半から2000年代にかけて、これらの企業の快進撃の原動力となり、そしていまなおその勢いは衰えてない。
メーカーがつくる商品を販売する仕入れ型小売と比較して収益性は格段に高く、ファーストリテイリングの営業利益率は11%に達する。SPAなくして今日のユニクロはなかっただろう。
(つづく)
【西川 立一】<COMPANY INFORMATION>
代表者:柳井 正
所在地:山口県山口市佐山717-1
設 立:1963年5月
資本金:102億7,395万円
売上高:(19/8連結)2兆2,905億円流通メルマガのご案内
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