2024年12月24日( 火 )

医療分野でもAIの導入が加速(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 北米では IBM、Google、 NVIDIA、 AWS、 Intel、 GEおよびXilinxなど、このビジネスを主導できる企業の本社が所在している。とくに、IBMは世界的な医療機器メーカーであるメドトロニック(Medtronic)と戦略的な業務提携を結ぶなど、一番積極的に動いている。また、AI技術を医療分野に早期導入したヨーロッパの動きも、注目に値する。

 ヨーロッパではイギリス、フランス、ドイツが中心になって、ヘルスケアにAI技術が次々と導入されている。最近、日本でもAI大腸内視鏡が市販され、注目が集まっている。大腸を撮影した画像を人工知能がリアルタイムに分析して、できたポリープが陰性であるか陽性であるかを判別してくれるのだ。大腸の次に、胃、食道などにも、この技術は活用されることになるという。

 このように人工知能を活用して画像データを診断する分野は、すでにかなり高い水準に達している。2018年に商用化された人工知能の乳がん診断と医療専門家101名の診断結果を比較したところ、医者より人工知能の診断精度が高いことが明らかになり、専門家を驚かせた。また、眼科の糖尿性網膜症の場合、画像診断の精度は99%で、これ以上の精度は望めなくなっている。このように、医療現場で、AI技術は診断の精度を上げることに貢献することはもちろん、膨大な医療データを処理したり、判断するのにも寄与し、医療陣の激務を軽減させている。

 現在、医療AIの最高峰はIBMの「ワトソン」である。このまま人工知能の技術が発達すれば、未来の医療は人間の代わりに人工知能が主導するかもしれない。しかし、現在の状況から判断すると、医療AIの道のりは険しいようだ。人工知能はディープラーニングによる診断はよく対応できるが、人間のように総合的に分析したり判断したりすることは、まだまだ苦手のようだ。

 最後に、韓国の医療AI技術の現状を見よう。2016年3月、人工知能(AI)であるアルファゴとプロ棋士・イ・セドルの囲碁の対決で、韓国国民は、その時初めて人工知能の威力と実力を目の当たりにして、大きなショックを受けた。その後、韓国政府も企業も人工知能のポテンシャルに目覚めた。しかし、目覚めたのは良いものの、すでにAI技術で先進国に追いつくのは難しい状況となっていた。

 人工知能事業における成功は、優れたエンジンの開発と、精製されたデータを大量に確保し、いかにディープランニングさせるかにかかっている。いくら技術が発達していても、データの前処理とディープラーニングにある程度の時間が必要で、異変が起こらない限り、今の韓国の技術水準では、先進国に追いつくのは、ほぼ厳しいと専門家は言っている。先進国とは2年くらいの技術格差があるようだ。

 韓国の場合、医療AIにおいても、ある特定の分野に絞ることを専門家は推奨している。韓国の医療サービス自体は、世界的水準になっているが、いろいろな規制に縛られ、データを収集することも、データを活用することも難しい状況が続いており、医療AIの技術開発が遅れているが、今後は医療分野へのAI技術導入がますます加速化していきそうである。

(了)

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