中国経済新聞に学ぶ~コロナ感染拡大 中国経済に打撃
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中国の湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎で、中国本土の死者数は19日午前1時時点で2,004人となり、前日から136人増えた。感染者は1,749人増え、累計の感染者数は7万4,185人となった。そのうち重症者は1万1,977人いる。
中国メディアでは「感染者の増加ペースが鈍化している」など状況が好転していると報じたが、湖北省の死者数の増加幅は依然として100人を超え、収束の兆しは見えない。3月5日に開幕する予定だった全国人民代表大会(全人代、国会に相当)も延期した。新型肺炎の影響は拡大している。
新型コロナウイルスが発生した湖北省をはじめ、遼寧省や北京、上海など各地でさまざまな移動制限が行われている。移動制限は、自発的な隔離から出入りできる地区の限定などさまざまだ。
最も厳しい制限は湖北省の4都市で出されている。湖北省の武漢、黄岡、十堰、孝感の各市ではすべての住居用の建物が隔離されている。必要不可欠ではない車両も地元の車道を走行できない。日々の生活必需品は周辺の地区から受け取っており、自宅を離れることも許可されていない。
湖北省は16日、新たな措置を導入した。省内全体で緊急でない車両をすべて制限したほか、必要不可欠でない公共施設はすべて閉鎖された。
健康検査も強化されており、新たな感染者がいないか当局者が1軒1軒回っている。政府は、症状の兆候があればすぐに報告するよう呼び掛けている。各地では、地元の検疫当局からの許可がない限り、企業の営業再開は認められないとしている。
中国全土で各省・自治区・直轄市が一級対応措置を取ったのは建国以来初であり、経済に対する打撃は全国的な範囲におよぶ。
経済面でいえば、春節休暇で地方に帰省した2億人を超える出稼ぎ労働者「農民工」が都市部へ戻らない状況が続いている。農民工は製造や建設、飲食業などの現場で不可欠な存在だが、流入による感染拡大を恐れ、受け入れに高いハードルを設ける都市もあり、態勢を整えられない企業もある。
中国の国有企業を管理する国有資産監督管理委員会は18日、肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染拡大で「2月の経営への影響が大きい」と危機感を示した。航空や観光を中心に、消費者と直接関わる企業へのダメージが深刻とした。記者会見した委員会幹部は、1月20日から今月13日の間に7万8千の航空便が欠航となり、搭乗率は半分近くに減少したことを明らかにした。国有企業で観光大手の中国旅遊集団は、すでに30の観光スポットと19のホテルを一時閉鎖。旅行会社の営業中止も相次いでいるという。
中泰証券チーフエコノミストの李迅雷氏は、「SARSが流行した2003年を振り返ると、中国の第1四半期から第4四半期のGDP成長率はそれぞれ11.1%、9.1%、10%、10%だった。第2四半期はGDPへの影響が最も顕著で、成長率が低かったが、それに続く第3、第4四半期には回復がみられた。以上から、この年の『SARS』の経済に対する影響は限定的だったことがわかる」と指摘した。
李氏はさらに、「新型コロナウイルス感染による肺炎の感染拡大が中国経済に与える影響は、悲観的に見れば1年、楽観的に見れば約半年にとどまるとみられ、影響が比較的大きい期間は今年の第1四半期で、半年後にはほぼ正常に戻るだろう。従って、新型肺炎で中国経済の長期的な趨勢が変わることはなく、中国経済が世界経済において地位を高めている状況が変わることもないだろう」との見方を示した。
野村証券中国エリア・チーフエコノミストの陸挺氏は、「需要と供給の両面から見て、新型コロナウイルスが中国経済に与える打撃はおそらく一時的なものになるとみられ、長期的な影響を与えるとは限らない。新型コロナウイルスによって抑制された需要と生産能力は、感染拡大の収束後に強い回復をみせるだろう。しかし、現在の中国経済成長鈍化の規模と回復の時期については新型肺炎感染拡大の進展状況次第であり、依然として不確定だ」と指摘している。
また李迅雷氏は、「長期的に見れば、新型肺炎が中国経済の成長に変曲点をもたらすことはないだろう。しかし、短期的に見ると、その影響を過小評価することはできない」と強調している。
さらに李氏は、「産業別では、第三次産業がまずその打撃を受ける。次が第二次産業で、最後が農林畜水産業になるだろう」と述べ、「論理的にいえば、新型肺炎が観光や飲食・ホテルなどサービス業に与える悪影響は最も直接的かつ顕著になる」との見方を示した。また、中山証券チーフエコノミストの李湛氏も、「新型肺炎の経済、とくに選択可能な消費業界に対する悪影響は避けられない。しかし医療業界とゲーム業界にとっては短期的に見てプラスになる」と指摘した。
李氏は、「新型肺炎によって貿易摩擦の緩和による経済回復が中断されることを踏まえ、2月以降、政府は反循環調整を強め、新型肺炎の経済に対する不利な影響を相殺するだろう」との見方を示した。
19日までに日本の感染者も705名に達した。日本貿易会の中村邦晴会長(住友商事会長)は19日、都内で開いた定例記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大について「アジア全体のサプライチェーンに影響が出始めている。国内製造品でも中国の部品を使っているケースもあり、非常に心配している」との見解を示した。
「中国全体での商社の活動は正常時に比べると今は相当落ちている」と指摘。代替品の調達が難しく、在庫調整で対応しきれないことへの懸念が高まっているという。日本国内経済への影響では「昨年の落ち込みがある程度回復すると予測していたが、感染の広がりはそこに輪を掛けて経済を落ち込ませている」と指摘した。
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