集客増加策は、マーケターの出番!~吉野家は伊東氏、丸亀製麺は森岡氏に任せた(前)
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マーケターと呼ばれるマーケティングのプロといえば、資生堂を再生させた魚谷雅彦氏、日本マクドナルドで辣腕を振るった原田泳幸氏、スシローを回転ずし業界トップに押し上げた水留浩一氏が有名。今回は外食産業で、集客を回復させた2人のマーケターを取り上げる。吉野家の伊東正明氏と、丸亀製麺の森岡毅氏である。
吉野家の既存店の月次売上高が劇的に回復
マーケティングとは売れる仕組みを構築すること。製品や販売などの戦略づくりから組織運営まで幅広い。その業務に携わる人材はマーケターと呼ばれる。外食産業で、異業種で活躍したマーケターの起用が相次ぎ、そのマーケターが売上を劇的に回復させた。
吉野家ホールディングス(HD)が運営する牛丼店「吉野家」の既存店売上高は、2019年3月から直近の2020年1月まで11カ月連続で前年同月を上回る。
吉野家HDの2019年2月期の連結最終損益は60億円の赤字(前の期は14億円の黒字)に転落した。原因は牛丼店・吉野家の伸び悩みだ。売上高の5割超を占める牛丼事業の収益力を高められるかどうかが、グループの全体の成長を左右する。
吉野家のテコ入れのためにマーケターを外部から招聘した。伊東正明氏である。
1996年米日用品大手のプロクター&ギャンブル(P&G)に入社。「ジョイ」「アリエール」「ファブリーズ」のマーケティング責任者として活躍した経歴の持ち主。2018年10月、伊東氏は吉野家のマーケティング担当の常務に就任した。
常連客の来客頻度を高め、女性客など新しい客層を取り込む
「コア&モア」。伊東常務は19年度の戦略を打ち出した。常連客(コア)の来店頻度を高めながら、女性客や子ども連れなど新しい客層(モア)を獲得するというもの。
吉野家の長年の課題は客層が偏っていることだ。男性比率が高い。吉野家のように日常食を提供する飲食店が成長するには、客層を広げて、いかに来店回数を増やすかに尽きる。女性が入りづらい店舗を改善する必要がある。それが「コア&モア」戦略だ。
19年3月からメニュー施策はコア深堀りの一環だ。「超特盛」(特盛よりも大きい最大サイズの牛丼)と「小盛り」(並盛りの4分の3サイズの牛丼)を同時に発売した。吉野家の客層を調べると年配の顧客が多い。年を取ったらたくさん食べないだろうと考え「小盛り」にしたところ、「小盛り」がよく売れた。
5月には、モア層を呼び込むためライザップとのコラボ商品「ライザップ牛サラダ」を発売した。コメを使わず、ブロッコリーや鶏もも肉で満腹感を得られるように商品を開発。「高たんぱく質、低糖質」がウリ。ライザップ牛サラダの販売数は今年2月までに200万食を突破した。女性などの新たな客層の開拓につながった。
牛丼の売り方を変えたことで、吉野家の既存店売上は19年3月以降、前年同月を上回った。19年3月から20年1月の累計で、既存店の客数は3.8%増え、売上は7.5%増えた。
吉野家HDの20年2月期の売上は2,150億円(前期比6.2%増)、営業利益36億円(前期は1億円)と増収増益を見込んでいる。最終損益は前の期の60億円の赤字から、1億円の黒字に転換する。マーケティングの成果である。
(つづく)
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