集客増加策は、マーケターの出番!~吉野家は伊東氏、丸亀製麺は森岡氏に任せた(中)
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マーケターと呼ばれるマーケティングのプロといえば、資生堂を再生させた魚谷雅彦氏、日本マクドナルドで辣腕を振るった原田泳幸氏、スシローを回転ずし業界トップに押し上げた水留浩一氏が有名。今回は外食産業で、集客を回復させた2人のマーケターを取り上げる。吉野家の伊東正明氏と、丸亀製麺の森岡毅氏である。
丸亀製麺の16カ月連続で落ちていた既存店客数が増加
トリドールホールディングス(HD)が運営する、うどんチェーン丸亀製麺は客足が戻った。18年1月以来、既存店の前年同月比の客数は16カ月連続で落ちていたが、19年5月に客数増に転じた。それにともない、既存店売上高は19年5月から前年同月を上回ってきた。
丸亀製麺は新規顧客の取り込みができず、客足が落ちていた。19年3月期の既存店客数はすべての月で前年実績を下回った。その結果、19年3月期の連結営業利益が23億円と、前期比70%減少した。
「来店数が伸びない」。危機感を抱いたトリドールHDの粟田貴也社長は、日本を代表するマーケターとして有名な森岡毅氏が率いるマーケティング支援会社の刀(東京・品川)と手を組み、主力業態である丸亀製麺のブランド力や集客策のテコ入れに乗り出した。
USJのV字回復の立て役者
森岡毅氏はユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市)のV字回復の立役者である。吉野家の伊東氏と同様、米日用品大手のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の出身。ヘルスケア商品を担当してシェアを飛躍的に高めた実績がある。
その手腕を買われ、10年6月、USJの企画担当の責任者に招かれた。森岡氏の手腕はいかんなく発揮された。「脱映画」の施設を推進。後ろ向きに走るジェットコースターなど集客策はことごとく当たった。14年、映画「ハリー・ポッター」のエリアは大ヒット。来場者数は700万人から1,400万人と倍増した。
USJを去った森岡氏は17年、マーケティング支援会社の(株)刀を設立して最高経営責任者(CEO)に就いた。刀という風変わりな社名には、日本企業の国際戦略上の「1つの武器」になりたいということ。古くは日本の侍にとっての武器は刀。現代の日本企業の武器は、マーケティング。マーケティングを武器として使うという意味だ。
デジタル広告と逆をいくテレビCMの投入で、新規客を呼び込む
刀とトリドールHDは18年9月に提携した。森岡氏は、お客の目の前で、小麦粉と水だけでつくった、できたてのうどんを提供するという「最大の強み」をテレビCMで訴求することで、既存店に新規客を呼び込むことに成功した。
今はデジタルの時代だ。最近はテレビなどのマス広告から、SNSなどデジタルツールを使った販促に力を入れる企業が増えている。若者はほとんどがSNSを使っており、マーケティングはSNS活用が主流だ。
森岡氏は、テレビ広告はいまでも有効な広告手段だと考えた。多くの老若男女の顧客に来客を促す場合、テレビ以上の有効な手段はない。若者向けのSNSの潮流とは、逆をいく。テレビ広告に集中投入した。
消費者がブランド(商品やサービス)を選ぶかどうかは「確率で決まる」というのが森岡氏の持論。「選ばれる確率は、消費者が無意識に抱くブランドへのイメージと因果関係があり、広告を含めて顧客とのコミュニケーションを有効に行うことで選ばれる確率は高まる」というが、森岡流マーケティングの核心。
丸亀製麺の「強み」は全店に製麺所があり、小麦粉と塩と水だけでつくった、できたてのうどんを提供することある。そういったこだわりは丸亀製麺側にとっては自明なことだったが、調査もしてみると、消費者にはあまり知られていなかった。
そこで、テレビCMでは、その「こだわり」だけを伝えることだけに集中した。「うどんを食べたい。丸亀製麺で食べたい」と思ってもらうことを狙ったCM効果で、新規客が増えた。
トリドールHDの20年3月期の売上高は前期比10%増の1,590億円、営業利益は2.9倍の66億円の見込み。テレビCMの投入で、既存店客数が増え、既存店売上の回復をもたらした。これまた、マーケティングの成果である。
(つづく)
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