福岡市東区の傾斜マンション、構造計算にも問題あり!(後)
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構造設計にも重大な誤りあり!
――設計に関する問題はなかったのですか?
A氏 区分所有者のため、自分にも振りかかるブーメラン現象を恐れず、敢えて申し上げますが、構造計算上の大きな誤りがあります。
――施工だけでなく、設計にも問題があるのですか?
A氏 ここの8棟のマンションは鉄筋コンクリート造(RC造)です。RC造では、柱や梁・床などの主要構造体と同じく、「柱・梁接合部の検討」が必要です。しかし、このマンションの構造計算においては、この検討が省略されています。これは、傾斜が問題となっている棟だけではなく、8棟全てに当てはまることです。
――もう少し詳しく教えてください。
A氏 鉄筋コンクリート造の柱と梁が交差する接合部には地震時に大きな力が加わります。いくら柱や梁が剛強であっても接合部が弱ければ破壊され、最悪の場合、建物の倒壊という事態も起こり得ます。
――なぜ、柱梁接合部の検討が省略されていたのですか?
A氏 このマンションが設計された当時、構造設計者も建築確認の審査を行う行政庁も接合部の重要性の認識が薄かったので、検討を省略することが多かったと思います。建築確認審査において指摘されることが少なかったことも原因だと思います。
しかし、日本建築学会の構造計算規準に検討方法が明記され、建築基準法第20条においても構造耐力が基準に適合したものでなければならないと規定しているので、当然、柱・梁接合部の検討は法的にも不可欠です。
私は熊本地震の被害状況を調査しましたが、実際に柱・梁接合部の損傷が数多く見受けられました。
――なぜ、自身の事務所が関わったマンションの接合部の瑕疵について話されたのですか?
A氏 柱梁接合部の問題は、全てに共通する問題です。傾斜の問題がテレビで報道されただけで、他の棟の資産価格にも影響するなど風評被害も出ています。
マンションの区分所有者が資産価値を取り戻すためには、施工の不具合だけでなく、設計の不備も当然追及すべきです。建築確認の時点で設計に誤りがあったのですから、建築確認を認めた福岡市も無関係ではありません。
施工の面でもう一つ言えば、構造スリットが施工されていないことが判明しています。「玄関ドアの開閉がしづらい」ということですが、福岡西方沖地震の際にも、構造スリットが施工されていないマンションの玄関ドアが開閉できなくなった事例がありました。どちらも構造スリットが施工されていない場合に共通する現象です。
――他の鉄筋コンクリート造のマンションでも接合部の検討が省略されている事例はありますか?
A氏 中低層の鉄筋コンクリート造のマンションを調べたところ、半分以上のマンションにおいて、法的にNGとなっています。こういう現実を踏まえて、柱・梁接合部のことを持ち出しました。
――仮に区分所有者が損害賠償訴訟を提訴した場合、Aさんも巻き込まれることになりませんか?
A氏 区分所有者が、JR九州や若築建設と共に私も含めて共同不法行為で訴えるのであれば、私は「是は是・非は非」として、法的に公平に対応したいと思っています。区分所有者の心情を考えれば自己弁護をしている場合ではありません。
――そこまで覚悟を決めて告白されたということですね。
A氏 マンション販売会社もゼネコンも私たち設計事務所も、区分所有者がマンションを購入されることにより 会社が成り立っています。販売したマンションが法令規準に違反したり、施工ミスがあったのであれば、誠実に対応すべきです。今回、JR九州が不誠実な対応に終始している背景には大企業の驕りがあると思いますが、消費者はしっかり見ています。必ずしっぺ返しを受けることになると思います。
A氏は、上記のように語った。このマンションの区分所有者の多くは、住宅ローンを組んでマンションを購入している。35年ローンとすればあと10年もローンの支払いが残っている。NetIBNewsでは、苦難に直面している区分所有者たちを支える報道を続けていきたい。
(了)
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