世界を混乱させる新型コロナウイルスCOVID-19の感染力(2)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
「再選間違いなし」と思われてきたトランプ大統領の前途に暗雲が立ち込み始めた。新型コロナウイルスについて、トランプ大統領は「アメリカには世界最高の医療チームが健在だ。多少の感染者は出るかもしれないが、まったく問題ない」と豪語していた。ところが、カリフォルニア州、ワシントン州、テキサス州などで次々と感染者が発生。死者も相次いでいる。そして「トランプ・タワー」がそびえるニューヨークでも感染者が確認。とくに感染者の拡大が止まらないカリフォルニア州のロサンゼルスでは3月4日、ついに「非常事態宣言」が発令された。
欧州最悪の感染国・伊
一方、新型コロナウイルスの感染拡大のあおりで、スーパースターのトム・クルーズも横浜停泊中の「クルーズ船」と同じ運命に翻弄されることになった。2月20日から3週間の予定でイタリアのベニスで撮影が開始される予定だった人気シリーズ『ミッション・インポッシブル』第7作の延期が決まったからだ。
何しろ、イタリアにおけるCOVID-19の感染者は約2,000人と、中国、韓国につぐ多さで、ヨーロッパでは最悪となっている。死者も100人に達する勢いで、日本以上に深刻化しており、バチカンではローマ法王が感染したのではないかと疑われ、礼拝を中止しているほどである。ミラノ・ファッション・ウィークやベネチアのカーニバルも計画変更を余儀なくされた。
そんななか、準備万端整えた撮影クルーは先にベネチア入りし、主役のトム・クルーズの到着を待っていたが、事態の悪化を受け、制作・配給会社のパラマウントでは急遽、撮影の中止を決めた。ベニスの後はローマでの撮影が決まっていたが、すべて無期延期となり、クルーも全員イタリアから退去することになった。
近年ヒット作に恵まれないパラマウントにとって、『ミッション・インポッシブル』は最も集客が期待できる虎の子の作品である。これは大きな経済的な損失になるだろう。映画のなかでは無敵のヒーローを演じるトム・クルーズだが、目の前の病原菌という強敵の前にはなすすべがないようだ。
ところで、イタリアはなぜヨーロッパ最速、最悪の感染国になったのだろうか。そこにはイタリアと中国との切っても切れない腐れ縁が隠されている。イタリアといえばファッションや観光で世界を引きつけてきた。ところが、国内の経済が思うに任せず、グッチやプラダなど有名ブランドを支えてきた職人を抱える工房はほぼ中国資本の傘下に入っている。
要は、「メード・イン・イタリー」とは名ばかりで、高級なハンドバッグ、靴、洋服などを製造しているのは中国人の職人なのである。感染症が最も深刻化しているイタリア北部のトスカーナ地方などはフランスのパリについで中国人労働者が多く、いたるところに中華街が誕生し、中国からの観光客が殺到していた。イタリア人の中華料理好きは有名で、ローマでもミラノでも中華街は大繁盛。中国人と結婚するイタリア人は男女を問わず急増中だ。この実態を知れば、新型コロナウイルスが猛スピードで拡散している訳が理解できるだろう。
(つづく)
<プロフィール>
浜田 和幸 (はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。関連キーワード
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